田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

美智子の危機(3)/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-05-05 06:32:13 | Weblog
3

なぜ再三、美智子が狙われるのか。
わからない。
「ここでかんがえていても、気が滅入るだけだ。街にでよう」

どこにいるのか?
わからない。
隼人は手がかりを探して鬼沢組の事務所を見張ることにした。
キリコはビザ屋のワンボックスカーではない。
黒塗りの乗用車を路地にとめた。
そこからだと事務所のあるビルの出入りがよく見える。
東北道で美智子を拉致しようとしたのは鬼沢組だ。
橋本がからんでいると推察していた。
天野がまた動いている。
そう思っての張り込みだった。
だが、鬼沢組のビルの出入りには変わった様子はない。

「あれ、記者さんだ。三品とかいった、東都芸能の人だよ」
「ぼくがつける。キリコはこのまま、いますこし見張りをつづけてくれ」
「いいよ。気をつけてね」

外は風が吹いていた。
車の中にいた。
隼人は体が暖かさにならされていた。
外はかなり冷え込んでいる。

三品はコートの襟を立てた。

「鬼沢組になにか、変わった動きはありませんでしたか」

美智子の所在を知りたい。
美智子は痛めつけられている。
乱暴されている。
かもしれない。
恥も外聞もない。
隼人はすがるような気持ちできいた。

ふいに声をかけられた。
三品はとまどっている。
ケヤキのわずかに残っていた枯れ葉が風に舞っていた。
その一枚が三品の立てたコートの襟に舞いおりた。
三品は声をかけられて、さっとかまえた。
緊張した。
――だが、隼人だと視認した。
二カッと笑った。

「べつに静かなものですよ」
ようやく応えがあった。
「なんの取材ですか」
さらに、隼人はくいさがった。
美智子を助けたい。
必死だ。
「プレスの人間を逆取材ですか」
「どうです。寿司でもつまみませんか」
懐柔することにした。
飯でもくいながら……話せば……。
「フロリダでも寿司屋はあるそうですね」
「どうして、ぼくが……」
「若いな。カマかけられるとすぐこれだ」
隼人は沈黙した。
「いまどきのヤクザは大学出が、わんさかいます。
コンピューターのプロもいます」
だから隼人のことはなんでも調べがついている。
そう暗に仄めかしていのだ。
「三品さんはどうして、鬼沢組にいたのですか」
「それこそ、取材ですよ」
とぼけている。


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