日々 是 変化ナリ ~ DAYS OF STRUGGLE ~
このプラットフォーム上で思いついた企画を実行、仮説・検証を行う場。基本ロジック=整理・ソートすることで面白さが増大・拡大
 



著者は「オシムの言葉」の木村元彦氏。
ということは、ユーゴスラビア、ヨーロッパまわりの政治経緯にくわしい内容になるわけです。
本は3つのパートに別れますが、この特質が大きく生きるのが1から8章までの第一部。


まず第1章が実にタイムリーにのめり込める内容!
先日アジアカップで優勝したイラク代表チーム随行記。

イラク戦争の翌年、2004年2月から取材がはじまり、戦時下あるいは戦後の混乱の中でサッカーする困難さが選手たちから少しずつ露出してくる様は実にリアル。

アジアカップで優勝した時、サッカーの神様もイキなことをすると素直に喜びつつも、サポーターへのテロ行為が起るという最悪の事態が発生するなど、選手たちの喜びの一方の苦悩も深い。
最新のこのような内容があったらぜひ読んでみたいと思う。


2章以降は、先に紹介した作者のヨーロッパの政治に強い部分がぐっと生きてきます。
アルバニア恐怖政治から脱出したバタ選手(FC横浜でも活躍)、ルーマニア独裁政治下でヒーローとなったヨアン・アンドネ、ビロード革命にまきこまれた幼少時代のハシェック(サンフレッチェ時代がなつかしいですね)、オシムも気になって仕方ないモンテネグロ人サビチェビッチの現在。
そしてトリはなんと、紛争真っただ中のレバノンの監督、アドナン・シャルキ。
明らかに「政治」>「サッカー」な時代を様々な角度からドキュメントしていて興味が尽きません。

第二部のテーマは、日本サッカー。
ここは人物で魅せる。

東北から独自の哲学でサッカー育成に励む小幡忠義。
大分トリニータ育成に官僚の地位を投げ捨てて没頭した溝畑 宏。
なでしこ時代の前、日本人で活躍したリンダ・メダレン。
最後は北朝鮮との交流に勤める、金 明植。

どのエピソードにもそれぞれの重みがあって読ませます。
この中の某人物には実際何度かお会いしたことがあるのですが、その人物像が良く描けていると感心。

最後の第三部はキ-パー特集。
レッズでの正キーパー争いから始まり、2010年にワールドカップが開催されるはずの南アフリカのキーパー、ハンス・フォンクで締めくくり。

一部、二部、三部それぞれのテーマでも十二分に1冊の本になりそうな濃い~内容が凝縮されており、サッカー好きにはマストか。

将来、この本を読んで「こんな時代があったのか」と慄然とする未来でありたい。
これほど「政治」>「サッカー」な時代の苦しみを的確に表現している本は少ない。

早く「政治」≧「サッカー」そして先には「政治」<「サッカー」な21世紀になることを痛切に思う。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )



     


 
編集 編集