実は同時に似て非なる本を併読中。
それは「アップル、アマゾン、グーグル、フェイスブック――ITビッグ4の戦略を読み解く」
こちらは「ITビッグ4がなぜ強いのか」を解説し、各社の「最近の動向」と「未来に向けた戦略」をひも解く。
4社が発表する情報をつなげて見てこれからの世の中を俯瞰しようとする。
視点は90%ポジティブ:ネガ10%程度の比率。
一方、今回の本の比率は....
10%ポジティブ:ネガ90%!(笑)
のインターネット社会批判。
著者のアンドリュー・キーンはロンドンっ子で、今はサンフランシスコ在住。
ITベンチャーの経験もありつつ、一握りの企業が主導する流れデジタル革命に対し「批判的論客」
この90%ネガに、他にない迫力が(汗)
それは経歴にみならず、最近の仕事でテレビ番組のホストがあること。
4年間でインターネットを創世記を含む重鎮たちへの200以上のインタビュー。
この経験値が散りばめてある!
その識者たちの発言をいくつか引用してみあり、圧巻なのが第1章「ネットワーク」
ここはインターネット誕生のパート。
「分散型ネットワーク」「パケット通信」「TCP/IP」「ARPANET」「WWW」「HTML」「URL」...
これらのコトバが誰の発想から、どう誕生したか、を詳細に記述しており、迫力があった。
続く第2章のタイトルは、「マネー」
インターネットが大ビジネスに化け出す様を描く。
ネスケの失敗、そしてウェブ2.0 とティム・オライリーが名付けた Googleを代表とする「違う稼ぎ方」を実現した企業が登場。
著者は徐々に、この「富の蓄積」が当初言われていた「世の中の平準化」に寄与するどころか、インターネットで「富の不均衡」を増大させていることを露わにしていく。
個人データが搾取されているという主張である。
ニコラス・カー
「社会は新しいコンピューティングインフラの輪郭に合わせて形を変えていく。
このインフラは、自動運転車両軍団や殺人ロボット部隊を可能にする、即時のデータ交換を統制するものである。
このインフラは、個人および集団の決定を助ける予測アルゴリズムのための素材を供給する。
またこのインフラは、教室、図書館、病院、商店、教会、住宅の自動化を支援する」
事例として紹介されるかつての名門企業コダック本社、の朽ちゆく姿。
かたやスマホの写真機能・加工機能(虚像創造)の進化及び自撮り文化で躍進するインスタ…
イギリス人でかつITベンチャーの経験もありつつ、今はサンフランシスコ在住、という 著者の個性がおおいに発揮されている。
どんな個性か。
・イギリス人っぽい皮肉アイロニー(笑)
これが利きまくってる!
・ベイエリアのジモティならではの観察・理解
本の終盤、Google、Facebook、Apple の新社屋施設などが紹介され、エリアから隔離がベイエリアで進んでいることを知る。
ここで最近観た映画を思い出した。
・ザ・サークル The Circle 超巨大SNS会社の暴走
ベイエリアにある、世界ナンバーワンのシェアを誇る超巨大SNS企業「サークル」に入社した主人公(エマ・ワトスン)
Google、Facebook、Apple の新社屋を思わせるような豪華な本社エリア(実際Googleがモデルらしい)
通常世界から切り離された近未来的施設はFood & Drink はもちろんタダ、夜な夜な社員専用のコンサートも…
だが主人公は自ら志願した「プライベート・ゼロ」状態の問題に気付きだす…
映画なのでそんなに深掘りできるわけではないが、本の主張の簡略版のようなところがあり、どちらもオススメしたい。
結論:ネットは「世の中の平準化」に寄与するどころか、「富の不均衡」を増大させる、を警告する オススメ本。
(写真は原著のもの。日本版の「黄色」をメインに置いたデザインに非常に違和感を覚えるので...)