日々 是 変化ナリ ~ DAYS OF STRUGGLE ~
このプラットフォーム上で思いついた企画を実行、仮説・検証を行う場。基本ロジック=整理・ソートすることで面白さが増大・拡大
 



著者のロバート・C.アレンは、オックスフォード大学 経済史の第一人者。
世界経済の「格差問題」を歴史的視点から彼の目で解き明かす、というもの。
この彼の目、が以下のような主張で、知的スリリングに富む。

他の国よりも「賃金が高い」ことが、インド、アジアを置いてイギリスで産業革命を起こせた。
産業革命というと紡績機という発明が「主」と通常は捉えるが、労働コストを節約するニーズがあったからこそ紡績機が誕生し、そして発展した、という。
この「賃金が高い」視点は実に新鮮!
当ブログ的解釈では、「賃金が高い」ことはその国の基本ファンダメンタルズが安定しており、成長がもともと見込める状況にあること、と解釈している。


彼の言う「経済発展の基本要素」は総括的にまとめられてはいないが、こんなところではないか。

「賃金が高い」状況に「技術」がありかつ改良・発展し続けること
それを推進するのに「教育の普及」が必須条件となる
その創り出された差異を、国際的に展開する「グローバル展開力」
さらにこれに組合わさる関税を調整する「経済政策」も重要。

様々な環境がお互いに補完しあい、やっとそれが成し遂げられることを改めて実感した。
後半に日本の経済成長についての記述があるが、ここだけでも読む価値はあると思う(p.183~)
先に展開されてない重要ワードをひとつだけ挙げると「鉄鋼」だと考えている。


個人的にうれしかったのは、ここ数百年の経済を世界的に俯瞰しているおかげで、これまで断片的にしか理解できていなかった「奴隷制度」の全体像がつかめたこと。
間もなく公開「リンカーン」のテーマなこの制度だが「どうやってこれほどシステマチックにアメリカで奴隷制度が存在したのだろう?」という基本的疑問があった。
カリブ海でのプランテーション経済がスペイン始動で始まり他国も追随、アメリカ南部に大きく展開されたよう。
(それをこの本が包括的に語っているわけではないが)
カリブ海の言葉が、英語・スペイン・フランス語などごちゃごちゃなのはこのせいだとあらためて認識した。


結論:読みやすい文体でないのが欠点とはいえ、世界経済を200pで新たな視点で切る知的スリリングさを味わえる1冊。

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