「荒屋敷」の近くには、楯跡と思われる「山楯」があります。「荒屋敷」の名称は、これに関係するのではないかと言われており、畑沢に限らず様々な地域で見られる地名です。そこに集落ができるには、飲料水を確保しなければなりません。湧き水を使うか井戸を掘ることになりますが、湧き水を利用する方法が最も楽で確実です。畑沢は湧き水が豊富で、昔から人が住みやすい環境です。荒屋敷には、かつて6軒ほどがあったように思いますが、全戸に供給していた湧き水がありました。
私も湧き水があることを知ったのは、ごく最近です。このようにブログを始めてからは、畑沢で会話する回数が飛躍的に増えて、多くの人から多くのことを教えていただいています。この湧き水については、7月7日に畑沢地区生涯学習推進センターで、「畑沢同窓会」の相談をしたときに教えてもらったばかりの最新ニュースなのです。私がいかに畑沢について知らなかったかの証みたいなものです。
さて、荒屋敷の居住スペースから少し離れた杉林を登ると、ひっそりとした谷間に、巾2.5m、長さ3.5mほどの長方形の貯水池がありました。その奥の砂岩と思われる地層の斜面から、水がこんこんと湧き出しています。6軒で使用しても十分に余裕があるでしょう。昭和40年代だったでしょうか、畑沢全体に簡易水道ができてからは、飲料水としての役割を終えています。池の底に木の枝が沈んでいるところを見ると、昔よりは掃除の回数が減っているようにみえます。それではと池の中を覗いてみました。もしや、サンショウウオなどの生きものが生息している可能性があります。しかし、一切、私の好きな動物の姿はなく、あくまでも飲料水源のままのきれいな水です。
今は庭などで使う雑用水としているようですが、何とも贅沢な雑用水です。
ところで、4月15日に「スズラ貝(マツスサガイ)」の話をしてくださったのは、この近くに住んでいる方です。なるほど、これほどの豊かな清水が流れているとすれば、岡田沢以外にも荒屋敷に生息していた可能性があります。