この山は、昔、「なでつぎ山」と言われていました。意味は、「雪崩が起きる山」です。この写真を見ると、正面の斜面には十分に太い(径30cm以上)樹木が生い茂っています。しかし、昔は薪や炭の材料として頻繁に伐採されていましたので、大きく成長できずに、積雪時は全ての木々が雪にすっぽりと覆われていました。急斜面であるために大きな樹木の支えがないところは、雪崩を起こします。
この山で昭和33年の3月に雪崩が起きて、人が生き埋めになったことがあります。私はまだ小学校に入学しておらず、昼近くに囲炉裏にあたっていたところ、表の方から誰かが「雪崩で〇〇が埋まったぞ」と急き込んで入ってきました。私の父親、兄そして近所の人たちがスコップを持って救出に向いました。幸い、無事に助け出されました。
3月の朝は堅雪(かたゆき)になっていて、薪を橇で運搬には絶好の時期です。朝は雪崩も起きません。ところが、気温が上昇していることに気が付かないで、夢中で仕事をしているうちに雪が柔らかくなって、雪崩が起きたのです。
今は薪や炭を使いませんので、特にパルプ用に伐採されない限り、木々は山の斜面に踏ん張り、雪崩を防止しています。