背中炙り峠から畑沢へ下って最初の橋は、「西の入り沢橋」です。欄干の色は黒っぽく着色されて、中々、しゃれた味わいです。
その橋から上流側を眺めると、川底が白くなっています。底の石に白いものが付着しています。この白い物体は、硫黄化合物で、硫黄を含んだ温泉のものと同じだと思います。温度は低いのですが、含有成分を調べれば「温泉」に該当するのではないかと思います。少なくとも、硫黄成分はたっぷりと含まれています。この白い湧き水はここだけでなく、外にも千鳥川沿いに湧いています。
温度が低いだけで温泉そのものと言ったところですので、背中炙り峠の古道を多くの旅人が通っていたころは、この白い湧き水が大活躍をしていました。荒町から畑沢へ入って楯岡へ向かう旅路において、いよいよ峠へ登ろうとする場所に茶店があったそうです。その茶店はただの茶店ではありませんでした。なんと、温泉気分を満喫できる風呂のサービスがありました。西の入沢橋の上から湧出する白い湧き水を、茶店まで運んで温めてお風呂にしました。きっと旅の疲れが吹き飛ぶようなゆったりとした気分になれたことでしょう。畑沢の人達はこのことを知っていますので、畑沢に温度の高い温泉が出ないかと昔から期待していたものです。ところが、期待だけでなく、実際に温泉にしようという先輩がいます。昨年、そのお話を投稿しましたが、まだ実現しておりません。
川沿いに湧き出す色付きの湧水は、白い物だけではありません。赤い湧き水もあります。この赤の素(もと)は、鉄分だと思います。白いものと違い、赤いものは畑沢でもありがたがられません。どちらかというと、嫌われています。でも、毒の成分はありませんので、悪さはいたしません。