時々雑録

ペース落ちてます。ぼちぼちと更新するので、気が向いたらどうぞ。
いちおう、音声学のことが中心のはず。

日本代表の年齢構成は特殊か2

2006年05月20日 | サッカー
続いて、昨日と同じ国、同じ表示方法で、恣意的に選んだ8か国について、23人の選手登録締め切りの日(2006年5月15日)の時点での年齢を入力しました。

一目瞭然、日本には大きな特徴があります。最も分布が狭い。一つの年代に明らかに固まっています。宇都宮さんの指摘どおりで、アテネに出た世代はほぼ入らなかった。つまり「ナイジェリアワールドユース準優勝世代をはっきり中心としたチーム」と特徴付けられます。そのとき優勝したスペイン(やられましたねえ・・・)は19歳のセスクはじめ若い世代が台頭して、年齢のバラエティがあるチームになっています。アルゼンチンもそう。

ということで年齢からみた日本チームの特徴は「平均年齢はベテラン重視型の標準だが、ある世代だけで構成されているという点でちょっと特殊」ということになります。

ジーコが監督になってから、若い人をなかなかチームに加えないことが(も)批判の対象になっていたように見受けられたのですが、そのたびに思っていたのは「ジーコ、ブラジル人だもん、そうなるよ」です。

ブラジル自体、代表のセレクションは非常に保守的だ、という印象があります。まだカフー、ロベカルなの? みたいな。元鹿島のトニーニョ・セレーゾとか、ロマーリオとか、ブラジルには40近くなっても現役バリバリという選手も多いブラジル。28、29なんかまだ若い、ということでしょうか。

若い人が容易に割り込めなかった、という意味で、日本はフランス、ブラジルのタイプ。ジーコは自国で行われているセオリーどおり、オーソドックスな選抜をしただけとみなせます。おいおい、日本はまだそんなサッカー大国じゃないぞ、というツッコミはできますが、「だってブラジル人監督にしたんだから」につきると思います。まして、早くから2006年までと明言しており、この大会での成功だけがミッションの監督に「2010年を考えてくれ」と要請するのは、違う気もする。

これが宇都宮さん指摘するところの「先行投資」欠如の問題を実際に引き起こすのでしょうか。かもしれません。世代の交代問題は、ドイツすら経験していることで、ある充実した世代がある限り、どの国でも経験しうるのかも。でも、今の大会でそれなりの成果も挙げずに4年後もへったくれもないし、セスク、メッシ、ウォルコットを選んだ監督は、先行投資のためにやったのではないでしょう。

ということで、「身長」と「年齢」について、恣意的に選んだ7カ国と比較してみました。身長は「ちょっと低めで、チーム内のばらつきが小さい」、年齢は「ベテラン重視型の典型的レンジだが、一つの世代への集中が顕著」という結果です。概略、宇都宮さんのおっしゃるとおりでした。他と比べて多少偏った選択になっていると結論付けてよさそうです。ただ後者については、それが監督なり協会なりの世代間の継承の失敗の結果、ということになるのか、他のチームの分布が、世代間の継承がうまく行っている結果、といえるのかどうか、それを年齢分布データに読み込むのはそんなに簡単なことではないように思えます。

日本代表の年齢構成は特殊か1

2006年05月20日 | サッカー
先日に続き、W杯日本代表チームのデータを他国と比較してみます。昨日も取り上げた宇都宮徹壱さんのコラムのもう一つの指摘は「アテネ五輪のチームからぜんぜん入ってない」です(駒野とオーバーエイジの小野だけ)。4年後、28、29歳になって初めてW杯というのでは、遅すぎる。2010年に向けての先行投資も考えてほしいとのことです。

ともあれ、じゃあ比較してみようということで、データです。選手全体のリストがFIFAのWebで公開され、Excelファイルとして入手できたので、32か国すべてについて平均を出してみました。平均をもっとも若いガーナの25.09歳から最高齢のフランスの29.00歳まで、0.5歳刻みのヒストグラムにしました。

ただしこのヒストグラムは正規分布にはなりません。ランダムに選んだ結果ではなく、国ごとに監督が戦略を考えて選んだ結果だから。で、日本はというと平均27.92歳で32か国中8番目、ヒストグラムでは右から3つめの「28」と表示したレンジにいます(27.5~28歳)。ちょうど上から1/4のところにいるわけで、確かにやや年上のチームです。ただ、他の国とかけ離れているわけではなく、高い山(頻度が多い)が二つある、その右のほうにいる。選手選考の主流の方針として「ベテラン重視型」「若手積極的登用型」の二つがあるとして、日本は「ベテラン重視型」の典型的な分布域にいる、ということだと読み取れます。なお、全体の平均は27.23歳。

とりあえず平均からは、27、8歳を中心とした経験のある選手を選出するのは国際的に見てわりと普通のことで、日本もそこから大きく外れてはいない、という結論になります。ジダン、テュラムといったフランス大会優勝メンバーが復帰したフランスはこの傾向の極。年齢分布高い。