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たけしろうカンパニー 『自由訳『久摺日誌』』

2014年06月20日 06時39分14秒 | 書評
 たけしろうカンパニー 『自由訳『久摺日誌』』



松浦啓発書の現代語訳
 江戸時代、当時第一の蝦夷地通として知られた松浦武四の著作のなかから、『久摺日誌』が現代語訳されました.
その題名も『自由訳『久摺日誌』』.実は、「自由訳」とするところに、本書のたいせつなポイントがあると、解説されています.
 『久摺日誌』.久摺は「くすり」と読み、松浦の著作は大部を重ねるも、原典は啓発書の一類にして、文久元年(1861)に跋=後記を記載し、のち木版刷り本で公刊されました.

自由訳
 『久摺日誌』の現代語訳はこれまで、丸山道子(凍土社 1978年)が著名です.
 丸山著が出版されてから時代を経たとはいいながら、「自由訳」として刊行するとき、そこにはいくつかの明確な理由が示されています.
 第一は直訳しないで現代の地域案内に置換する観点.第二は原典記載事項のうち判明する点については積極的に現代表記に置き換えています.第三は原典挿入図の現在の景観を、積極的に紹介している点、です.

歩くことで見えてくるもの
 斬新な試みで、挿入図も現在の景観もカラー印刷.ここでは内容紹介とは別に、刊行の意義に思いめぐらしておきます.
キーワードは「歩くことで見えてくるもの」、その提示.そこに出版の思想を読み取ることができるようにおもいました.
 本年は阿寒国立公園指定90年.原典の出典となる『戊午東西蝦夷地理取調日誌』の調査から151年目にあたります.
 国立公園内を、車でとおるその脇に、武四踏査の古道がつらなっています.
 古道を踏みしめながら、シタカラ、フップシナイと宿を重ねた旅の道筋は、わずか90分ほどの運転でむすぶことができます.しかしそれでは、当時の人情はもとより、現在もある資源も、景観も、地域の潜在能力も、視野にはおさまりません.
 本書は「歩くことみえてくるもの」、そこには人類のもつ「可視化能力の奥行を示したい」.そうした強い思いを、体現しているようにおもえるのです、が.(たけしろうカンパニー 2014年).
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