花扇の画像は、歌麿だけでも30点近く手元に集まっている。
中央は「花」しかないが、右のように「花紫」という花魁もいたのでどちらともきめがたい。
中央は新造と花扇が「これ歌麿師匠の新作でありんすよ」「いえ、わちきはそれほどの美人ではありんせん」などとやりとりをしているところで、画中の絵にはちゃんと歌麿の名が記されている、ように見える。実はこの絵にはもうすこし意味があるようでよく見ると花扇の口から絵に向かって息を吹きかけているような線が書かれている。それとタイトルの幽体離脱した「鉄枴仙人」の話と絡めて解釈すると花扇が自分の絵姿に魂を吹き込んでいるところということになって、単なる紙ではなく絵は花扇の分身という「活きた」ものとなる。
浮世絵や俳諧、川柳などこういった江戸人の知識の広さを知っていないと理解しがたいものが多くある。