Hei!(「ヘイ」って読んで「やあ」って意味)~義務教育世界一の秘密

義務教育世界一の国の教師養成の実態を探る旅。フィンランドの魅力もリポート!その他,教育のこと気にとめた風景など徒然に。

教科内容の総合的な取り扱い(技術工作/Aki Rasinen先生②/2)

2005年10月13日 | Weblog
(前回に続いてインタビューの内容,2/2)

○学生に自分で考えさせるような学習スタイル(自己創造型・問題解決型学習)やプロセス重視の学習スタイルについて

 ・1970年代から言われていることであるが実際にはそうはなっておらず,ユヴァスキュラ大学の方針で10年前くらいから力を入れてそのようにしている

 ・学部で明確にこうした学習スタイルを取り入れようと決めたわけではないが,そうしたやり方が広まっているのであれば,それはうれしいことである。

 ・教育学部での教育学の博士論文などの内容などをみても,以前のやり方を批判し,こうしたやり方に従うものが多い

 ・大学でこうした学習スタイルを学んだことは,自分が実際に子どもたちに教えるときにも,そうした学習スタイルが取れるように支援することにつながると思う。このへんのことは,教育学では理論的な視点から解明していると思う。

 ・今日,学生たちが取り組んでいた課題にしても,それが完成してもそれ自体が実際に役に立つというものではない。しかし,その学びのプロセスが重要である。結果も大切であるが,それ以上にプロセスを大切にしている。

 ・自分で考えさせる学習を支援していくことはたいへんなことである。失敗もあり,学習者の方がどのようにしたらいいかわからなくなることもあり,落胆するが,そこで動機を維持したり高めることが重要である。教員として,不確実な状況下にあっても物事に辛抱強く取り組める人を育成したい。そのことが,生徒が同じような状況下にあるとき,生徒に寄り添った対応(単に情報を注ぐのではなく,一緒になって考える)ができることにつながるであろう。

○技術教育の意味
 ・技術(手の技,道具や機械の扱い方)を教えているのだが,決してそれだけではない(それだけでもそれ相応の意味はあるのだが)。技術教育を通して,思考方法や考え方も身に付けさせようとしている(フィンランド語で「理解する」の語源をたどると「手」と関係する点は興味深い)。

 ・「つくる」ということを3つのレベルで考えてもよい。①示されたそのままをつくる,②応用してつくる,③自分で創造する。
 
[インタビュアーとしての感想]
従来の授業では教員が作ったものと同じものを作って技術を習得していたが,現在は「必ず2つの動きが起こる装置を作る」という指導のポイントを押さえつつ,自分で創るものを考え工夫できるようにしている。プロジェクトのテーマをふまえて,制作は他の科目で学んだこととどう関係するのか,何歳くらいの子どもに適用できるか,安全面の配慮事項や評価をどうするかなどを考えさせる方法を導入しているために,科目の学習を教育現場の視点で行うことが可能になっている。このようにして学習が有意なものとして意識される意味は大きい。また,どのように自分自身が判断するかが尊重される過程重視の授業では,信頼と安心に満ちた表情がすべての受講者に観察できた。支持的・受容的な風土の中で行われる学習を通して醸成される教師の持つ雰囲気は,得難い財産となるだろうと思われた。
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教科内容の総合的な取り扱い(技術工作/Aki Rasinen先生①/2)

2005年10月13日 | Weblog
フィンランドの教員養成教育の特徴の一つとして,「教科内容の総合的な取り扱い」が挙げられる。

前回アップしたクランク工作の授業の時のことだが,授業者であるAki先生だけでなく,技術教育講座に所属するその他の先生も交えてインタビューすることができた。フィンランドの教員養成,とりわけ技術教育分野の教員養成に関する基本的な考え方を知ることができるだろう。

●面談者:技術教育 アキ・ラシネン(Aki Rasinen)上級講師, ヨウコ・カントラ(Jouko Kantola)上級講師,ティーモ・リッサネン(Timo Rissanen)講師

●内 容:技術教育について
○大学での技術教育の進め方
 ・学生グループの中で,ある学生はドリル技術を特に習得し,他の学生は別の技術を習得するようにしておいて,勉強した者が他の人に伝えるようにしている。お互いに学びあい,教えあうようにしている。

 ・まずは技術学習を行い,次にプロジェクト学習に入る。2人もしくは3人のグループを作って装置をつくる。今やっているプロジェクトは,水力を使って,必ず2つの動きが起こる装置を作るというものである。この課題の中では他の科目で学んだことも関係してくる(例えば物理学であるとか)。使う材料はスチールで,大きさは靴箱までのものとしている。

 ・従来の学習方法は,先生が作ったものと同じものを作りなさいというものであったが,現在の学習方法は,自分で創り出させるようにしている。その時には,プロジェクトのテーマ,他の科目で学んだこととどう関係するのか,何歳くらいの子どもに適用できるか,使用する材料,必要な技術,安全面の配慮事項,評価をどうするかなども考えさせている。テーマを決め,問題解決(課題達成)に到るが,問題解決の方法は必ずしも1つとは限らない。なぜそのような問題解決に到ったのかそのプロセスを考えさせることが重要であると考えている。

 ・この授業の受講学生は,小学校教員志望者であるが,1つの「水」というテーマが例えば,美術から,理科から,あるいは工作からどのように扱えるか考えさせることは重要なことである(総合的に学習を進めることにつながる)。

(本日は取りあえずここまで。続く)
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クランク工作

2005年10月13日 | Weblog
指導をしているのはDr.Aki Rasinen(アキ・ラシネン)先生。技術教育の先生だ。ちょっと見たところ,ショーン・コネリー(ジェームズ・ボンド)のようないい男。指導されている学生は小学校課程の学生で,内容的には日本で言えば小学校の工作である。

水の流れとクランクを利用した機械工作にチャレンジしている。日本の工作教育のように,学生はクランク部分を確実に作成しつつ,それで終わらせない。クランクに自分の好きな形をくっつけて,個性をアピール。金属を打ち出してつくった魚が先についているのが見えるかな。これが上下運動するのである。

何より驚いたのは,教室の中の施設や道具の充実ぶり。アキ先生の後ろにも見えるだろうが,とにかく圧倒される。日常的にこのような施設や道具で製作をすることができるというのは,とても幸せなことだ。
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