きみがいた季節は
白いヒメジョンが揺れる
廃線に沿った夕暮れの道を
なかなか別れ言葉を言い出せなくって
歩いていた季節
あの頃はまだ
沈む夕日の湾岸から
磯臭い風が吹いってきていたっけ
互いに
なにも言わなくても ぼくらは
羽根をもがれたサモトラのニケ
泳ぎを忘れてしまった人魚と
飛ぶことを忘れてしまった鴎
ぼくらの目の前には
どんな日にも
荒々しい波に囲まれて
切り立った断崖
いつだったかきみが
「父があそこから自殺を図って助けられた場所だよ」
という断崖だった
そしてきみの父という人は
ぼくが考古学の道を目指していた頃
憧れていたただ一人の人
白いヒメジョンが揺れる
廃線に沿った夕暮れの道を
なかなか別れ言葉を言い出せなくって
歩いていた季節
あの頃はまだ
沈む夕日の湾岸から
磯臭い風が吹いってきていたっけ
互いに
なにも言わなくても ぼくらは
羽根をもがれたサモトラのニケ
泳ぎを忘れてしまった人魚と
飛ぶことを忘れてしまった鴎
ぼくらの目の前には
どんな日にも
荒々しい波に囲まれて
切り立った断崖
いつだったかきみが
「父があそこから自殺を図って助けられた場所だよ」
という断崖だった
そしてきみの父という人は
ぼくが考古学の道を目指していた頃
憧れていたただ一人の人