(1) 土管
夢のなかの原っぱのあちこちには
土管が思い思いにごろんごろん
泥んこの猫さんたちが
その土管を行ったり来たり
土管の中に住みたいと
思っていた子供時代
土管へは
いつも懐かしい風が吹いてて
どこへ通じているのか
どこから続いてるのか
わからない一本の道
道のすぐ側には
空を写す池がひとつあって
水面に写っているのはいつも
丘を越えてゆく雲ばかり
(2) ナイフ
雨上がりの
虹が昇ってきた朝に
ポケットの中の
ナイフだけを握りしめて
廃線の果てのあの町から
この世界にやってきたんだ
きみから贈られた
赤い小さなナイフ
スイス国旗が刻まれた
しんやりとしたナイフだけを
握りしめてやってきたんだ
このナイフで
なんどビールの栓を抜き
なんど
山小屋のストーブの前で
きみを想いながら
缶詰を開けたことだろう
きみを見舞った
夕暮れの病室の片隅で
真っ赤な林檎を片手に
「最後まで切らずに皮をむけるんだよ」と・・
きみの死から
もう十年も経つというのに
まるでいよいよ赤く
色褪せることのないナイフ
きらり きらきら
水の中のナイフみたいな
きみの思いで一杯のナイフ
そのナイフだけを片手に
帰ろうかふるさとへ
ふるさとにはもう
誰も待つ人もいないのに
(3) いつまでもお元気で
雨の日も 風の日も
美しくて醜いのは
人間ばかりじゃない
誰もが
目をそむけて見ようとしないものにだって
あらゆるものが満ち溢れている
そう思い知らされたのは
年末年始での老人ホームでのアルバイト
盲目で車椅子で
まともに話すことのできない老女にだって
会うたびに
「こんな年寄りはもう死んだ方がいいんです」と呟いてた老人にもだって・・
「こんにちは」
「ありがとう」
「お元気で」
いままでのあなたちで
ずっとあって欲しい
いつまでもお元気で
(4) 還ろう
還ろうと
ふっと呟いていた
この世界へとやって来た時のように
大声で叫びながら
それが
ありとあらゆる死者のこころや
ほろびゆく文明が
声高らかに叫んでいたこと
(5)パンのミミ
子供時代からずっと
パンの中身より
パンのミミの方が大好きだった
歯ごたえのある
パンのミミが一番のご馳走だと思ってた
いつもはらぺこだった学生時代
大きな袋に詰められた
一袋数十円のパンのミミで
何度飢え死の危機を救われたことだろ
パンのミミこそを
ぼくは生涯愛しつづけよう
(6)カプカプ
一日の終りになると
夜空を見上げたくなる
今日の
ぼくやきみや
あれやこれやを思い出しながら
結局はいつもみたいにため息
目には見えてはいないけれど
確かに
存在しているはずの星々なのだと
ぼくやきみや
あれやこれやを
茜色の空に感じながら
たぶん ぼくらは
農薬や 毒まみれや
アメリカからの
狂牛病の肉を食べ過ぎたり
それで大儲けした奴らの
言うがまますぎたんだろう
みんなとっくに
脳味噌が腐ってしまったんだろう
いつだって
人体実験の場だった学校給食や
コンビニ弁当たちよ
偽装だらけだった日本低国よ
もはやすべての
ぼくらの醜悪さに
おさらばする季節がやって来た
少女は
自分の腕に
リストカットを繰り返し
子猫はあい変わらず
自分の尻尾に噛みつき
人間たちは
自分の影に怯えては
弱い者いじめに精を出す奴らの言うがまま
カプカプとまた
今日という疲れだけの一日
揺れるブランコに
ふっと思い出した
ふるさとの少女の想い出
人生など
好きなように
塗ったくればいいだけの話しというのに
(7) 「てんさぐの花」(鳳仙花)
雨をずっと歩いてきた夜勤帰り
沖縄の女性歌手の歌を聴きながら
在沖縄米軍の犯罪は
性犯罪であり交通事故であれ
ほとんどが
沖縄人の泣き寝入りだという
沖縄には
世界一美しい珊瑚の海や浜があって
それらのほとんどは
内地の観光資本のために破壊され放題
爪を染める花を歌ったという
「てんさぐの花」(鳳仙花)は
爪を染める花のように
親の教えも
心に染め付けなさいという内容とか
沖縄で新聞記者になったばかりのぼくの知人が
じきに定年退職という刑事に
警察署裏へと呼びだされて
その老刑事が警察署の裏庭で
山となった証拠写真等を燃やしていたという
沖縄の性犯罪被害者たちの
目にするのも悲惨な被害写真や証拠書類
「どうして燃やしてしまうんですか?」と聴くぼくの知人に
大粒の涙をこぼしながらの
その老刑事の言葉は
「この無念さを、君にも覚えておいて欲しかったから」
韓国人が
アメリカ人を憎むのは
たぶんそのせいなんだろうと思う
日本人は
その役割をずっと
沖縄人に任せっぱなし
(8) 涙ポロポロ
先日面会に行った時
銀行強盗をやった君が
「すまなかった」と
涙をポロポロ
ぼくもまた
「つい言いすぎてしまった」とポロポロ
自分の不甲斐なさに
涙が止まらなかった父の葬式
怒りの涙のために
なにひと言言えなかった母の葬式
会社の上司の見舞いがあってすぐ
意識不明になって
その1週後にあの世に逝ってしまった母
その時の話をを聞こうとしたその上司は
どうしてだか その直後
遠い支社へと配置転換
怒りのためには
死ぬことだって可能なんだなと思っている
ついこの頃
どう自分の人生に
決着をつけたらいいものやら
夢のなかの原っぱのあちこちには
土管が思い思いにごろんごろん
泥んこの猫さんたちが
その土管を行ったり来たり
土管の中に住みたいと
思っていた子供時代
土管へは
いつも懐かしい風が吹いてて
どこへ通じているのか
どこから続いてるのか
わからない一本の道
道のすぐ側には
空を写す池がひとつあって
水面に写っているのはいつも
丘を越えてゆく雲ばかり
(2) ナイフ
雨上がりの
虹が昇ってきた朝に
ポケットの中の
ナイフだけを握りしめて
廃線の果てのあの町から
この世界にやってきたんだ
きみから贈られた
赤い小さなナイフ
スイス国旗が刻まれた
しんやりとしたナイフだけを
握りしめてやってきたんだ
このナイフで
なんどビールの栓を抜き
なんど
山小屋のストーブの前で
きみを想いながら
缶詰を開けたことだろう
きみを見舞った
夕暮れの病室の片隅で
真っ赤な林檎を片手に
「最後まで切らずに皮をむけるんだよ」と・・
きみの死から
もう十年も経つというのに
まるでいよいよ赤く
色褪せることのないナイフ
きらり きらきら
水の中のナイフみたいな
きみの思いで一杯のナイフ
そのナイフだけを片手に
帰ろうかふるさとへ
ふるさとにはもう
誰も待つ人もいないのに
(3) いつまでもお元気で
雨の日も 風の日も
美しくて醜いのは
人間ばかりじゃない
誰もが
目をそむけて見ようとしないものにだって
あらゆるものが満ち溢れている
そう思い知らされたのは
年末年始での老人ホームでのアルバイト
盲目で車椅子で
まともに話すことのできない老女にだって
会うたびに
「こんな年寄りはもう死んだ方がいいんです」と呟いてた老人にもだって・・
「こんにちは」
「ありがとう」
「お元気で」
いままでのあなたちで
ずっとあって欲しい
いつまでもお元気で
(4) 還ろう
還ろうと
ふっと呟いていた
この世界へとやって来た時のように
大声で叫びながら
それが
ありとあらゆる死者のこころや
ほろびゆく文明が
声高らかに叫んでいたこと
(5)パンのミミ
子供時代からずっと
パンの中身より
パンのミミの方が大好きだった
歯ごたえのある
パンのミミが一番のご馳走だと思ってた
いつもはらぺこだった学生時代
大きな袋に詰められた
一袋数十円のパンのミミで
何度飢え死の危機を救われたことだろ
パンのミミこそを
ぼくは生涯愛しつづけよう
(6)カプカプ
一日の終りになると
夜空を見上げたくなる
今日の
ぼくやきみや
あれやこれやを思い出しながら
結局はいつもみたいにため息
目には見えてはいないけれど
確かに
存在しているはずの星々なのだと
ぼくやきみや
あれやこれやを
茜色の空に感じながら
たぶん ぼくらは
農薬や 毒まみれや
アメリカからの
狂牛病の肉を食べ過ぎたり
それで大儲けした奴らの
言うがまますぎたんだろう
みんなとっくに
脳味噌が腐ってしまったんだろう
いつだって
人体実験の場だった学校給食や
コンビニ弁当たちよ
偽装だらけだった日本低国よ
もはやすべての
ぼくらの醜悪さに
おさらばする季節がやって来た
少女は
自分の腕に
リストカットを繰り返し
子猫はあい変わらず
自分の尻尾に噛みつき
人間たちは
自分の影に怯えては
弱い者いじめに精を出す奴らの言うがまま
カプカプとまた
今日という疲れだけの一日
揺れるブランコに
ふっと思い出した
ふるさとの少女の想い出
人生など
好きなように
塗ったくればいいだけの話しというのに
(7) 「てんさぐの花」(鳳仙花)
雨をずっと歩いてきた夜勤帰り
沖縄の女性歌手の歌を聴きながら
在沖縄米軍の犯罪は
性犯罪であり交通事故であれ
ほとんどが
沖縄人の泣き寝入りだという
沖縄には
世界一美しい珊瑚の海や浜があって
それらのほとんどは
内地の観光資本のために破壊され放題
爪を染める花を歌ったという
「てんさぐの花」(鳳仙花)は
爪を染める花のように
親の教えも
心に染め付けなさいという内容とか
沖縄で新聞記者になったばかりのぼくの知人が
じきに定年退職という刑事に
警察署裏へと呼びだされて
その老刑事が警察署の裏庭で
山となった証拠写真等を燃やしていたという
沖縄の性犯罪被害者たちの
目にするのも悲惨な被害写真や証拠書類
「どうして燃やしてしまうんですか?」と聴くぼくの知人に
大粒の涙をこぼしながらの
その老刑事の言葉は
「この無念さを、君にも覚えておいて欲しかったから」
韓国人が
アメリカ人を憎むのは
たぶんそのせいなんだろうと思う
日本人は
その役割をずっと
沖縄人に任せっぱなし
(8) 涙ポロポロ
先日面会に行った時
銀行強盗をやった君が
「すまなかった」と
涙をポロポロ
ぼくもまた
「つい言いすぎてしまった」とポロポロ
自分の不甲斐なさに
涙が止まらなかった父の葬式
怒りの涙のために
なにひと言言えなかった母の葬式
会社の上司の見舞いがあってすぐ
意識不明になって
その1週後にあの世に逝ってしまった母
その時の話をを聞こうとしたその上司は
どうしてだか その直後
遠い支社へと配置転換
怒りのためには
死ぬことだって可能なんだなと思っている
ついこの頃
どう自分の人生に
決着をつけたらいいものやら