Forbesにイスラエルのイノベーションの根本について元ソニーの出井社長が寄港していた。それによると3つの理由があるという。1つ目は、緊張状態にあるから意識が高く、2つ目は軍事技術を進化させるしかないからこれによる産業分野でのイノベーションが盛んなこと、3つ目は、フェールセーフ、失敗を恐れない危害があるという。敵対国であって緊張状態のイランでも意外に先端技術が霧ひかれているが、イスラエルほどでもない。以下、Forbesの記事による::
まず1つ目、技術が発達する背景。建国してから7回も戦争を行い、周辺諸国が敵ばかりというイスラエルは軍事のための技術に集中してきた。一方、日本は国連と日米安保条約で守られ、自ら戦争しない国の平和な産業技術で発展してきた。イスラエルに限らず他の国、たとえば米国は3年に一回は戦争を行なっているが、そのたびに技術が向上している。
イスラエルでは、軍事技術を民間にも活用し国の産業を発展させてきたが、対して日本は、戦後、コンシューマー向けの商品の開発を行い、技術を発達させ経済を発展させてきた。「Japan as No.1」を掲げ、日本から誕生したソニーなどのいくつかの企業はグローバルに大きく成長した。まさに民生用技術の向上から産業が発展した国だ。
イスラエルの国民はわずか800万人だが、その中に8000を超えるスタートアップが存在している。なぜここまで成功しているのだろうと思っていたが、行ってみて確信した。その秘密はやはり軍事にあった。常に戦争と背中合わせの中、自分たちで国を守ってきたという強烈な背景がある。
そして驚いたことに、18歳からの兵役期間(男性3年・女性2年)に、国が一人一人の能力を全て分析し、把握していることだ。プログラミング・ハッキング・物理理論に強いなど、得意分野を定めて伸ばす教育を行なっている。
イスラエルは、常に戦争がそばにあるから思考の元となる国の情勢や国民の状況も、日本とはまるで違う。しかし、そもそもどんな国でも若い人は自分自身の強みというのはよくわかっていないものだ。イスラエルでは兵役後、大学に進学するのは21歳以降となる。
長い人生、社会への船を漕ぎ出す最初は、多くのアドバイスをもらいながらゆっくりとスタートするのがよいのではないかと思うと、ここは今の日本が学ぶべき点だと思う。大人への階段を急いで登ろうとし、これからの人生をどう生きていくか迷ってる大学生や高校生が多くいるが、スロースタートは自分自身を見つめることのできる価値ある時間なのではないだろうか。
2つ目は、国が軍事技術を活用した起業を推奨していること。これはまず多くの国では違法だと思うがイスラエルでは違うようだ。
中東に平和をもたらした功績によりノーベル平和賞を受賞したイスラエル第9代大統領シモン・ペレスの有名なフレーズに、「To Dream is to Survive」がある。人間は年をとると過去を振り返り話すことが心地よいようだが、そればかりでは国が衰退していく。“未来を考え続ける国のみが生き残れる”。それがこのスタートアップネイションの合言葉なのだ。
一方日本では、失敗すると全ての終わりに思うし、周りもそう扱うので、行動も慎重になり、調査検証の繰り返しでなかなか実行に至らない。失敗を受け入れる国民性と国の体制はとてもいいことだと思う。これは起業だけでなく教育でも同じだ。日本はぜひ見習うべきだと思う。
そして、その国民性の違いには、時間軸の違いが大いに関係していると感じた。イスラエルはいつ戦争を起こしてもおかしくない国に囲まれていて、日本のように周りを海で囲まれ終戦後平和を保っている国とは、時の捉え方がまるで違うのだ。ゆっくり大企業をつくり長期改善している暇はないから、すぐに実行し、失敗を恐れず次に進む。そういった時間軸で進まないと生き残る道はない、そうイスラエルの人たちは日々感じているのだと思った。
イスラエルに学ぶ、パラダイムシフトに必要なもの
11月末、東京で行われた「日本・イスラエル・ビジネスフォーラム」と「サイバーテック東京2017」に、スピーカーとして登壇させていただいた。今年5月に世耕経済産業大臣がイスラエルを訪問して、日本とイスラエルの経済関係の道筋を示す取り組みの「日イスラエル・イノベーション・パートナーシップ」に署名してから、二国間の関係がさらに強固なものになってきている。
私はイスラエル訪問前、「0〜1」のイスラエルと「1〜100」の日本はうまく掛け合せればよいと考えていたが、実際行き、話を聞いてみると水と油ぐらい全く違うと思った。だからこそ補完し合えると思う。それに日本はこういった国と付き合えないと、今後イノベーションは起きにくい。もともと成り立ちが全く違うイスラエルとビジネスをすることで、思考や制度、そして規制などの多くを学ぶことができると思う。