アメリカの殆どの宇宙探索機に搭載されている原子力電池とは何ぞや? 半世紀前に打ち上げられたハッブル宇宙天文台が未だガンガンデータを地球に送っているのは原子力電池のお陰である。一般的な人工衛星や宇宙探査機などの宇宙機のイメージの一つに、大きく広げた翼のような太陽電池があるが、太陽光弱くなる所では発電できず、この原子力電池が大活躍する事となる。
(Credit:NASA)
太陽系で火星より遠くの惑星ともなればそのエネルギーは著しく低下します。3次元空間において光のエネルギーは光源からの距離の2乗に反比例する為、木星における太陽光の強度は地球の約3.7%、土星に至っては約1.1%にまで低下します。そのような環境では太陽電池を利用するのは難しく、これまでの惑星探査においては原子力電池、RTG(ラジオアイソトープ・サーモエレクトロニック・ジェネレーター:放射性同位体熱電気転換器)と呼ばれる放射性同位体の崩壊熱による熱電発電装置が主電源として利用されています。
(Credit:NASA)
右に示した図はアメリカが1980年代に開発した電気出力300キロワット級の宇宙用原子力電池です。これは木星探査機「ガリレオ」、太陽探査機「ユリシーズ」、土星探査機「カッシーニ」、冥王星探査機「ニュー・ホライズンズ」とNASAが誇る主要な宇宙探査機に搭載されてきました。
原子力電池では、「温度差発電」と呼ばれるものを利用しています。これは高温になる放射性物質と、低温になる宇宙空間との温度差を利用した発電です。金属や半導体は、温度差が生じるとその差に応じて電流が流れるという現象、「ゼーベック効果」が強く現れるものがあるため、これを利用して宇宙探査機に電力を供給しているのです。宇宙空間はずっと低温であるため、放射性物質が発熱し続ける限りは電力を供給できるというものです。
図の赤い部分が放射性物質であるプルトニウムを内蔵した「GPHS(汎用熱源)」と呼ばれる炭素繊維でつくられた発熱体です。その周りを取り囲むようにシリコンとゲルマニウムを用いた「熱電変換素子」が配置されており、これが内部と外部の温度差を利用して電力を発生させるのです。