先端技術とその周辺

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水深2000mまでの全海域、海水温が観測史上最高に、

2019年01月19日 03時11分20秒 | 日記

 

 
National Geographicに地球の海の海水温が推進2Kmから海面までの温度が上がっているという。そしてその理由は、第一次産業革命以来の排出ガスの温室効果に依る温度上昇をするはずの熱源を海が吸収しているからだという。CO2などに依る温室効果で予測されるほど大気の温度が上がっていない理由は、その熱源を海が吸収したためと言われるとわかったような気がする。
世界中の高山の氷河が溶けだしているのは、理解できるように思うが、南極の厚い氷河が崩れたり、暖流とか寒流の流れが変わったりで異常気象が生じているのは、温室効果では説明できないのかと思ったが、この記事を見るとわかった様な気がする。研究者が分かりやすく、具体的データを引用しながら解説してくれたら、多くの人が、CO2排出に注意するのではなかろうか?。
 
 
2015年6月、米アラスカ州バローの北極海。2014年から15年の冬は、アラスカの記録上、最も温かかった。(PHOTOGRAPH BY KATIE ORLINSKY, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
 

 地球の海は、人間が体系的に海水温を測るようになってから最も温かくなっているという研究結果が、1月16日付けの学術誌「Advances in Atmospheric Sciences」に掲載された。海は、人間が排出した温室効果ガスが蓄えた熱の90%以上を吸収し、気温の上昇を遅らせている。それでも、地球の気候にはさまざまな望ましくない変化は発生している 海水温は、わずかに上昇するだけでも、劇的な影響を及ぼす可能性がある。海水温が上がれば波が高くなることが、別の新しい研究から示されている。嵐も強くなり、ハリケーンや熱帯低気圧による被害が増える。サンゴの生息地は被害を受け、漁業が悪影響を受ける。さらに別の研究は、南極の氷が解ける速さが1980年代の6倍近くになっていると指摘している。その原因の1つは、南極大陸沿岸の海水温の上昇だ。

「海は地球の体温計なのです」と米カリフォルニア大学バークレー校でエネルギーと気候について研究しているジーク・ハウスファーザー氏は話す。今回発表された海水の熱データも含めて検討した、海水温上昇についての見解を同氏は1月11日付けの「Science」誌に寄稿していた。「海から得られたデータから、地球温暖化をはっきりと見てとることができます」

熱はどこに消えたのか?

 科学者たちは、早くも1800年代ごろから、大気中に二酸化炭素を排出すれば、地球の気温は上がるだろうと考えていた。1960年代までには、世界中で気温と二酸化炭素濃度が継続的に計測されるようになり、予測は正しかったことが裏付けられた。

 しかし、気温は予測モデルほどは上昇していなかった。では、熱はどこに消えたのか?

 海洋学者の中には、「消えた」熱は海に吸収されているのではないかと考える者もいた。しかし、海に吸収された熱を計測するのは、気温を測るよりもはるかに難しい。海を渡る調査船がときおり水温を計測したところで、広大な海のごく一部のデータを取得しているにすぎない。

そこで科学者たちは、商船や海軍などによる観測データから歴史的な過去の記録まで、あらゆるデータを集めた。すると、海は気候システムにとっての巨大な緩衝材として作用していたことがわかった。たとえるなら、気候変動の衝撃を和らげている巨大な枕のようなものだ。

 最近の10年間で、海に吸収された熱量の計測法が劇的に改善された。アルゴフロートと呼ばれる自律型センサーが登場したためだ。現在、約3000個が世界中の海に設置されている。深さ約2000メートルまでの水温を定期的に記録してくれるので、科学者が計算に使うデータの質が飛躍的に向上した。

 こうした方法のおかげで、温室効果ガスがいったん大気中に蓄えた熱の約90%を海が吸収していることが明らかになっている。11日の論文に発表された最新の推計では、その値を93%としている。1955年以降に海が吸収してきた熱を一気に大気に放つとすると、気温はおよそ35℃も上昇することになる。

 つまり、海は巨大な熱緩衝材だ。温室効果ガスが蓄えた余分な熱をじかに感じずにすむように、私たちを守ってくれている。しかし、その熱は消えてなくなったわけではない。

1年分のエネルギーの約1000倍が海に

 2018年、海面から深さ2000メートルまでの海全体の水温が、今までで一番高くなった。長期平均と比べて0.1℃あまり高い値だ。このようにわずかな変動でさえ、海面を3センチ近く上昇させることになった。水が温まれば、体積が増えるからだ。

 しかも2018年は、ここ30年ほど続いた緩やかなペースの温度上昇が終わり、これまで累積してきた結果がいよいよ明瞭に現れた年となった。「日々という視点で見れば、温暖化の規模は小さいように見えるかもしれません。しかし、それは蓄積してゆくのです」と、米コロラド州にある米国国立大気研究センターの気候学者で、今回の研究の著者でもあるケビン・トレンバース氏は話す。大気中に蓄えられた余分なエネルギーは、ゆっくりと海に染みこんでいく。「そのため、毎年温度が上昇し続けているのです」

さらに危険な事実も判明している。前出の「Science」誌に掲載された分析によると、ここ数十年間の水温上昇のペースは、20世紀半ばよりも40%近く速まっている。

 産業革命以降、温室効果ガス排出による影響で海に蓄えられた余分なエネルギーの量は、全世界の人間が1年間に使っているエネルギー量の約1000倍にもなるという。英オックスフォード大学の気候学者で、海が吸収している熱について細かく調査しているローア・ザナ氏はそう説明する。

海水温の上昇は今後何世紀も続く

 海は広く深いので、大気から吸収できる熱量には実質的に限界がない。しかし、海の「記憶能力」はすさまじく、吸収した熱は数百年、あるいは数千年にわたってとどまり続ける。1月4日に「Science」誌に掲載された論文によると、数百年前の北大西洋の小氷期の影響が、今でも世界中の深い海に見られるという。

 だから、現在のわれわれが取る選択は、はるか未来にまで影響を及ぼすことになる。そう話すのは、米マサチューセッツ州ケープコッドにあるウッズホール海洋研究所の海洋学者、スーザン・ウィジフェルズ氏だ。

「深い海は、とても長い時間にわたって熱を蓄えることができます。これはすばらしい能力ですが、熱はそこに閉じこめられてしまうのです」。つまり、たとえ明日、温室効果ガスの排出量がゼロになったとしても、海は今後何世紀も温かいままだ。海から余分な熱が消えるまでには、さらに長い時間が必要になる。

 海の物理現象や海洋生物に影響が及ぶ可能性も高い。水温が上がれば酸素が少なくなるため、プランクトンからクジラまで、海のあらゆる動植物が被害を受ける。2018年夏に中国北東部の海域を襲い、ナマコ漁に壊滅的な被害を与えたような海洋熱波も頻発することになるだろう。ザナ氏らは、熱や栄養分を運ぶ海流に変化が起きている証拠もつかんでいる。

 ウィジフェルズ氏は、すべての変化が出つくすまでに数百年はかかるという。

「二酸化炭素の排出量を1分子でも減らすことで、未来の温暖化を食い止めることができます。そう考えれば、今すぐ、できる限り排出量を削減する必要があることが理解できるはずです」