BBCが、コペンハーゲン大学ニールス・ボーア研究所氷河気候センターの研究者が米国科学アカデミー紀要に投稿した『大型ハリケーン、100年前の3倍 要因は温暖化』なる研究成果を報じていた。ハリケーンの規模を評価する際に、経済的損害の代わりに、保険業界のデータベースをもとに、1900年から2019年の間に発生した240以上のハリケーンで壊滅状態になった範囲に着目したという。
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大型で深刻な被害をもたらす強力なハリケーンの数が、100年前に比べて3倍に増えているという。米国科学アカデミー紀要(PNAS)に11日に掲載された研究結果で明らかになった。
コペンハーゲン大学ニールス・ボーア研究所氷河気候センターの研究者、アスラク・グリンステッド氏らの研究チームによると、ハリケーンによる被害状況を新たな方法で算出したところ、頻度の増加には「疑いの余地がない」という。
これまでは、ハリケーンに対する気候変動の影響だけを計算しようとすると、矛盾する結果に至ることが多かった。
しかし最新の研究では、こうした大型サイクロンによる被害拡大の要因には、温暖化が関係していることが明らかになった。
ハリケーンやトロピカル・サイクロンは、最も破壊的な自然災害の1つで、2005年のハリケーン「カトリーナ」による被害総額は、1250億ドル(約13兆6400億円)と推定されている。これは、アメリカの国内総生産(GDP)の約1%にあたる。
科学者が取り組んでいる大きな疑問の1つは、異なる時代のハリケーン被害の比較方法だ。20世紀中に記録された経済的損害の増加は、単純にハリケーンの進路上により多くの人が住むようになったからだといえるだろうか? こうした地域で暮らす人々は一般的に裕福な人が多い。
Image copyrightGETTY IMAGESImage captionこれまでの研究では、被害の増加は経済的な富と関係しており、ハリケーン発生の頻度における統計学上の著しい変化とは関係ないと結論付けられていた。
しかし最新の研究は、こうした見方に疑問を呈している。
今回、研究チームは経済的損害の代わりに、保険業界のデータベースをもとに、1900年から2019年の間に発生した240以上のハリケーンで壊滅状態になった範囲に着目した。
たとえば、2017年に米フロリダ州を直撃したハリケーン「イルマ」では、上陸地点から1万平方キロメートル内に約110万人が住んでいた。
Image copyrightGETTY IMAGESImage caption1人あたりの財産は19万4000ドル(約2000万円)と推定されることから、科学者は、この1万平方キロメートルの範囲だけで、総額2150億ドル(約23兆4700億円)の財産があったと結論付けた。
「イルマ」による被害総額は500億ドル(約5兆4600億円)で、これは1万平方キロメートル内の財産の23%にあたる。つまり、2300平方キロメートルが被害を受けたことになる。
同様の方法で20世紀に起きたハリケーンを調査したところ、研究チームは数十年にわたる被害について、より現実的な比較を行うことができたという。
Image copyrightGETTY IMAGESImage caption研究チームは、最も破壊力のあるハリケーンの発生頻度が、100年ごとに330%の割合で増加していることを発見。気温の上昇が主な原因だとみているという。
「我々のデータから、ハリケーン被害の切迫した傾向が明らかになった。こうした被害は、地球温暖化による極端なストーム(嵐)における検知可能な変化に関係しているとみている」
今回用いた新しい算出方法は信用できるもので、強力なハリケーンで何が起きているのかをより正確に把握できるという。
グリンステッド氏は、「ハリケーンの発生頻度の調査におけるこの新しい方法は、本当に安定している」と述べた。
「ハリケーンの発生頻度の増加は、自分のデータセット上だけでなく、他のデータセットでも確認できる。つまり、この方法は極めて安定しているということだ。これがもっと認められることにつながればいいと思う」