5月10日(木)夜、練馬区役所19階で開催された「危ないぞ教育3法」緊急学習会(主催 生かそう1947教育基本法!練馬連絡会議)に参加した。国民投票法は、最低投票率の定めがないこと、500万人に及ぶ公務員・教員の国民運動参加への制限など論点がはっきりしていたが、教育三法の問題点は自分がもうひとつ理解できていなかったからだ。
チューターは大日方真史さん(早大大学院)、使ったテキストは、学校教育法改正案・学校教育法改正案・教育職員免許法改正案の概要(文部科学省)、教育基本法改正情報センターの声明(2007年4月19日)
安倍極右総理の号令により2月6日に文部科学大臣が中教審へ審議を要請してから、わずか1ヵ月後の3月10日に答申が出、3月30日に速攻手抜きで提出されたこの3法案、4月13日に衆議院の特別委員会を設置、驚くべきことに来週衆院通過がもくろまれている。
以下、当日参加された方から出た話や、特別委員会議事録で知ったことも含めて論点を紹介する。
学校教育法改正案
第一(学校の種類ごとの目的)
・21条〔義務教育の目標〕従来、教科ごとの目標であったが、改正案では最初の2項目に「規範意識」「生命・自然を尊重する態度」といった道徳に該当する目標を入れている。しかも「学校内外における」とわざわざ「学校外」すなわち家庭や地域社会を連想させる語を入れている。
社会科に該当する第3項に、改正教育基本法の文言、「伝統と文化を尊重し」「我が国と郷土を愛する態度を養う」をそのまま移入している。
(次の段階の学習指導要領でどのような具体化がされるのかにも注視すべき)
・従来は小学校と中学校に分けていたが、改正案は9年ひと括りである。これは教育改革特区の品川などで先行している4・3・2制を念頭に置いているのではないか。
品川では中1が小5と同じクラスに入り、しかも習熟度別編成なのでたまたま劣位のクラスに入った生徒にはすこぶる評判が悪いそうだ(それはそうだろう)。
・33条「教育課程に関する事項は、文部科学大臣が定める」と従来の「教科に関する事項」を「教育課程に関する事項」に拡大している。学校や教員など現場に任されていた教育課程(教育内容や教育方法)にまで文科大臣が踏み込み、指導要領の法的拘束力の正当化を意図したものだ。
・42条「文部科学大臣の定めるところにより当該学校の教育活動その他の学校運営の状況について評価を行ない」「学校運営の改善を図るため必要な措置を講ずる」と地方自治の教育制度の根幹である教育委員会制度を否定し、教育への国家統制の強化を露骨に示している。
・50条「高校」で「心身の発達および進路に応じ」と「進路」が追加された。これは15歳で将来の進路を決定させる「複線化」(大学準備教育と職業準備教育の分化)をねらうものであり、機会均等理念を否定するものだ。
第二(副校長その他の職の創設)
・27条、37条「副校長は校長を助け、命を受けて校務をつかさどる」「主幹教諭は、校長、副校長及び教頭を助け、命を受けて校務の一部を整理し」とピラミッド型の学校運営を制度化している。
先行している東京都では、主幹のなり手が不足し、本来は1校3―4人いるべきところ0人の学校も多いという現実がある。
地方教育行政法改正案
・26条 原則として教育委員会の権限を教育長に委譲できるようにし(合議制を弱め)教育長の権限を強化している。
・27条の2 都道府県知事は、私立学校に関する事務を管理し、執行するに当たり、必要と認めるときは、都道府県教委に対し「助言又は援助を求める」と私学への介入を強化している(従来は助成金の配分程度だったが、当該都道府県教育知事部局に私立学校担当の指導主事を置く)
・49条「生徒等の教育を受ける権利が明白に侵害されている場合」という口実はつけているが「文部科学大臣は、教育委員会が構ずべき措置の内容を示して、地方自治法の是正の要求を行なう」と文部科学大臣の権限強化を明言している。これには国旗国歌問題も含まれる。
・50条「緊急に生徒等の生命・身体を保護する必要が生じ」という口実はつけているが「「文部科学大臣は、教育委員会に対し指示できる」と「是正要求」以上に強い、文部科学大臣の権限強化を明言している。
教育職員免許法改正案
・9条2 講習を修了しないと更新できない(効力を失う)
教師の身分が不安定化する。医師国家資格、弁護士資格など他の資格制度にはない更新制度を、いくら教育再生が安倍内閣の最重要事項だからといって教員資格にだけつくるのはおかしい。
なお「優秀教員」は研修不要(今年2月15日の表彰者は全国で756人)
・9条3「指導改善研修を命ぜられている者は、免許状更新講習を受けることができないこととする」現在「日の君不起立」で指導改善研修を命じられている東京都の教員は、それだけで職を失ってしまう。
一方「ダメ教師を学校から排除するならいいじゃない」という若いお母さんもいる。どのように説明するか。
・講習内容、補充教員はどうするのか、物理的な講習スペースはあるのか、講師のマンパワーはあるのか、費用負担はどうなるのか、各開設者(大学など)で行なう修了認定の基準といった現実的なシミュレーションをやっていないのではないか。また現在実施されている10年研修との関係もはっきりしない。
その他、参加者から出た声
・こんな法律が成立すれば教員希望者が激減する。
一方で、上を向く教員ばかりになるのではないか。そういう教員にうとましく思われる子どもはどうなるのだろう。
・週3回、国会に傍聴にいっている方から
「自民党委員の出席率がひどく、そのうえ出席している議員も、私語、携帯電話、ヤジが激しく、出入りしている議員、寝ている議員も多く
まるで「学級崩壊のクラスを参観しているような状態」とのこと。
まるで緊張感のない状態になる原因は教育基本法のときと違い、傍聴者が激減しているから。
・悲観主義に陥らず、おかしいものは元に戻せと運動すべきだ
・銀座、原宿、新宿などでもっと幅広く、若い人にも語りかけよう。
☆国民投票法は風前の灯の状態だが、教育3法も5月16日(水)中央公聴会、17日委員会通過、18日(金)衆議院通過を目指しているという。多勢に無勢の国会状況。われわれにできることは1-2日審議を延ばさせることくらいしかないかもしれないが、ここで2日延ばせば参議院も含めれば3日延ばせる。ぜひ期限切れ廃案へと追いこみたい。
☆この日はじめて4月24日(火)に43億円もの予算を使っ実施された全国学力・学習状況調査の用紙を自分の目でみた。うわさどおり学習状況調査には「朝食を毎日食べている」「毎日、同じくらいの時刻に起きている」「学校の規則を守っている」などの質問が101問並んでいた(回答は4-6択からひとつ選択する。
制限時間は50分だったが、20分くらいで終了したそうだ。
懸念された個人情報保護については初めから印刷されている答案番号と組、出席番号、性別しかないので、少なくとも練馬区では大丈夫なようだった。
(もちろん学校の出席番号表を入手すれば照合して個人を割り出すことは可能である)
チューターは大日方真史さん(早大大学院)、使ったテキストは、学校教育法改正案・学校教育法改正案・教育職員免許法改正案の概要(文部科学省)、教育基本法改正情報センターの声明(2007年4月19日)
安倍極右総理の号令により2月6日に文部科学大臣が中教審へ審議を要請してから、わずか1ヵ月後の3月10日に答申が出、3月30日に速攻手抜きで提出されたこの3法案、4月13日に衆議院の特別委員会を設置、驚くべきことに来週衆院通過がもくろまれている。
以下、当日参加された方から出た話や、特別委員会議事録で知ったことも含めて論点を紹介する。
学校教育法改正案
第一(学校の種類ごとの目的)
・21条〔義務教育の目標〕従来、教科ごとの目標であったが、改正案では最初の2項目に「規範意識」「生命・自然を尊重する態度」といった道徳に該当する目標を入れている。しかも「学校内外における」とわざわざ「学校外」すなわち家庭や地域社会を連想させる語を入れている。
社会科に該当する第3項に、改正教育基本法の文言、「伝統と文化を尊重し」「我が国と郷土を愛する態度を養う」をそのまま移入している。
(次の段階の学習指導要領でどのような具体化がされるのかにも注視すべき)
・従来は小学校と中学校に分けていたが、改正案は9年ひと括りである。これは教育改革特区の品川などで先行している4・3・2制を念頭に置いているのではないか。
品川では中1が小5と同じクラスに入り、しかも習熟度別編成なのでたまたま劣位のクラスに入った生徒にはすこぶる評判が悪いそうだ(それはそうだろう)。
・33条「教育課程に関する事項は、文部科学大臣が定める」と従来の「教科に関する事項」を「教育課程に関する事項」に拡大している。学校や教員など現場に任されていた教育課程(教育内容や教育方法)にまで文科大臣が踏み込み、指導要領の法的拘束力の正当化を意図したものだ。
・42条「文部科学大臣の定めるところにより当該学校の教育活動その他の学校運営の状況について評価を行ない」「学校運営の改善を図るため必要な措置を講ずる」と地方自治の教育制度の根幹である教育委員会制度を否定し、教育への国家統制の強化を露骨に示している。
・50条「高校」で「心身の発達および進路に応じ」と「進路」が追加された。これは15歳で将来の進路を決定させる「複線化」(大学準備教育と職業準備教育の分化)をねらうものであり、機会均等理念を否定するものだ。
第二(副校長その他の職の創設)
・27条、37条「副校長は校長を助け、命を受けて校務をつかさどる」「主幹教諭は、校長、副校長及び教頭を助け、命を受けて校務の一部を整理し」とピラミッド型の学校運営を制度化している。
先行している東京都では、主幹のなり手が不足し、本来は1校3―4人いるべきところ0人の学校も多いという現実がある。
地方教育行政法改正案
・26条 原則として教育委員会の権限を教育長に委譲できるようにし(合議制を弱め)教育長の権限を強化している。
・27条の2 都道府県知事は、私立学校に関する事務を管理し、執行するに当たり、必要と認めるときは、都道府県教委に対し「助言又は援助を求める」と私学への介入を強化している(従来は助成金の配分程度だったが、当該都道府県教育知事部局に私立学校担当の指導主事を置く)
・49条「生徒等の教育を受ける権利が明白に侵害されている場合」という口実はつけているが「文部科学大臣は、教育委員会が構ずべき措置の内容を示して、地方自治法の是正の要求を行なう」と文部科学大臣の権限強化を明言している。これには国旗国歌問題も含まれる。
・50条「緊急に生徒等の生命・身体を保護する必要が生じ」という口実はつけているが「「文部科学大臣は、教育委員会に対し指示できる」と「是正要求」以上に強い、文部科学大臣の権限強化を明言している。
教育職員免許法改正案
・9条2 講習を修了しないと更新できない(効力を失う)
教師の身分が不安定化する。医師国家資格、弁護士資格など他の資格制度にはない更新制度を、いくら教育再生が安倍内閣の最重要事項だからといって教員資格にだけつくるのはおかしい。
なお「優秀教員」は研修不要(今年2月15日の表彰者は全国で756人)
・9条3「指導改善研修を命ぜられている者は、免許状更新講習を受けることができないこととする」現在「日の君不起立」で指導改善研修を命じられている東京都の教員は、それだけで職を失ってしまう。
一方「ダメ教師を学校から排除するならいいじゃない」という若いお母さんもいる。どのように説明するか。
・講習内容、補充教員はどうするのか、物理的な講習スペースはあるのか、講師のマンパワーはあるのか、費用負担はどうなるのか、各開設者(大学など)で行なう修了認定の基準といった現実的なシミュレーションをやっていないのではないか。また現在実施されている10年研修との関係もはっきりしない。
その他、参加者から出た声
・こんな法律が成立すれば教員希望者が激減する。
一方で、上を向く教員ばかりになるのではないか。そういう教員にうとましく思われる子どもはどうなるのだろう。
・週3回、国会に傍聴にいっている方から
「自民党委員の出席率がひどく、そのうえ出席している議員も、私語、携帯電話、ヤジが激しく、出入りしている議員、寝ている議員も多く
まるで「学級崩壊のクラスを参観しているような状態」とのこと。
まるで緊張感のない状態になる原因は教育基本法のときと違い、傍聴者が激減しているから。
・悲観主義に陥らず、おかしいものは元に戻せと運動すべきだ
・銀座、原宿、新宿などでもっと幅広く、若い人にも語りかけよう。
☆国民投票法は風前の灯の状態だが、教育3法も5月16日(水)中央公聴会、17日委員会通過、18日(金)衆議院通過を目指しているという。多勢に無勢の国会状況。われわれにできることは1-2日審議を延ばさせることくらいしかないかもしれないが、ここで2日延ばせば参議院も含めれば3日延ばせる。ぜひ期限切れ廃案へと追いこみたい。
☆この日はじめて4月24日(火)に43億円もの予算を使っ実施された全国学力・学習状況調査の用紙を自分の目でみた。うわさどおり学習状況調査には「朝食を毎日食べている」「毎日、同じくらいの時刻に起きている」「学校の規則を守っている」などの質問が101問並んでいた(回答は4-6択からひとつ選択する。
制限時間は50分だったが、20分くらいで終了したそうだ。
懸念された個人情報保護については初めから印刷されている答案番号と組、出席番号、性別しかないので、少なくとも練馬区では大丈夫なようだった。
(もちろん学校の出席番号表を入手すれば照合して個人を割り出すことは可能である)