日産、トヨタなど大企業の派遣社員削減計画が次々に報道されるなか、11月1日阿佐ヶ谷駅南口パールセンターのAsagaya / Loft Aで「保坂のぶとスペシャル・トークライブ どうする!?格差・非正規雇用問題」が開催された。保坂のぶと衆議院議員のほか、池田一慶さん(ガテン系連帯)、関根秀一郎さん(派遣ユニオン書記長)、福島みずほさん(社民党党首)の3人がゲストとして登場した。会場は日頃は音楽ライブ、映画上映会、落語も行うイベントホールで、アルコール、ソフトドリンクを口にしながらのクダけた集いだった。若い世代も多く参加し、推定80人くらいの人々が集まるイベントになった。
保坂さんのコーディネイトにより、派遣労働の厳しい現実から話が始まった。
保坂●暴走する資本主義は破裂し、経済は10月に底が抜けた。いったい11月に何が起こるのか、いままで経験したことのない事態が起こりかけている。社会保障としての雇用のセーフティネットをどう張ればよいのか、考えたい。麻生首相は追加経済対策で雇用保険料を0.7%下げるという。この時期にやるべきこととは逆なのではないのか。
関根●一斉に「派遣切り」が始まったが、もともと派遣社員は、雇用の調整弁扱いされている。従来の景気悪化期には、企業がぐっと我慢したものだが、いまは企業が「痛み」を感じる前にスルーして労働者を切る時代になった。13年も倉庫内作業に従事した人が、突然9月に解雇され放り出されてしまった。法では派遣は最長3年まで(それ以上は直接雇用するかクーリングオフ期間を設ける)と決まっているのにである。
日雇い派遣はもっと悲惨だ。毎日違う現場に派遣され、翌日の仕事の有無は前日午後までわからない。
池田●ガテン系連帯は製造業への派遣労働者のユニオンでNPO法人である。トヨタ系メーカー5社は今年6~8月2300人の派遣を削減し、最近日産は780人削減、三洋電機や森精機も削減を発表した。そうしたなか6月8日秋葉原事件が起こり「派遣労働者は殺人者集団」という報道まで行われた。悪いのは派遣先メーカーだと院内集会で主張した。
ボッシュ東松山工場の派遣社員は、4月にコンビニの前で面接を受け、8月末に缶コーヒーを1本渡され解雇を言い渡された、そのときもやはりコンビニの前だった。
福島●派遣社員の解雇は3か月ごとの契約満了時に契約を打ち切られる場合と契約期間中に解約される場合の2種類がある。厚労省は3か月に一度ヒヤリング調査を行っているが、そこですら雇い止めの激増が報告されている。また厚労省の日雇派遣労働者の指針で、本人希望でない雇い止めでは「派遣元事業主及び派遣先は互いに連携して、当該派遣先の関連会社での就業のあっせん等」を行うことになっている。しかし実際にあっせんしたかどうかフォローをしていない。そこで、まずきちんとした実態調査を行い、守られていない場合は行政指導すべきだと考える。現在起こっていることは、2004年の労働者派遣法改正で製造業にまで派遣を解禁した結果である。
次に雇用促進住宅や雇用保険にテーマが移った。
保坂●雇用促進住宅は、1950年代後半にエネルギー転換のため都市への転職を余儀なくされた炭鉱労働者のために1961年に設置された旧雇用促進事業団が建設した住宅である。いまも35万人が居住し、建物は古いが家賃3万円台で借りられる。いまこそネットカフェ難民にこういう住宅を開放すべき時期だ。それなのに今春から新規入居させないことになった。また福祉施設は雇用保険の保険料で建設された加入者の共有財産であるのに、民間へ1050円でプールを売却するなど「たたき売り」を始めている。
池田●雇用促進住宅入居の相談のため雇用振興協会に行って聞くと「働き方をどうにかしてください」と言われた。正社員でないと入居できないようだ。離職票を持ってくるよう言われたが、派遣社員で離職票をもらう人はあまりいない。
関根●雇用保険は派遣社員に圧倒的な差別的取扱いをしている制度だ。まず正社員は入社直後から加入できるが、派遣社員は働いてから1年以上雇用が見込まれないと加入できない。次に受給の際も、正社員は2週間以内に離職票が出るのに、派遣社員は1か月出してもらえない。一番困っている「はじめの1か月」にもかかわらずだ。日雇派遣はもっとひどい。昨年9月から日雇労働求職者給付金が適用されるようになったが、1年たって適用された人は全国で4人だけ、しかも保険料納付の印紙を発行するのはフルキャスト渋谷支店など全国で6事業所だけという現状だ。
福島●政府は社会保障費を2200億シュリンクさせようとしている。雇用保険を「使える雇用保険」にするべきだ。そうしないと社会が疲弊してしまう。
その後、会場から何人かの方から発言があった。
社会保険事務所の非常勤職員の方は職場の勤務の実態を次のように語った。
「いま年金問題で、全国の社会保険事務所は大変な状況になっている。被保険者と受け答えする窓口は、正規の公務員ではなくほぼ全員非常勤職員だ。わたしの賃金は日給7100円だが、人件費でなく物品費として計上されている。予算の制約とのことで、もちろん超過勤務費は出ない。休憩もままならず過労死寸前の状態だ。スキルのある人は次々にやめていく。「泥棒め」と怒鳴られ、殴られる人もいる。それでも窓口に来た方に「親切に教えてもらってよかった」と言われることもあり、仕事にやりがいと誇りを感じている」
日雇労働求職者給付金が適用された方が運用の実態を話した。
「窓口に被保険者手帳の申請に行ったが3回断られた。派遣ユニオンの関根さんに同行してもらったところすぐ受け取れた。ある日、横浜の関内に朝8時集合といわれ始発に乗っても間に合うかどうかだったので断ったら自己都合とのことであぶれ手当(給付金)は支給されなかった。またフルキャストは「仕事がないから紹介できないのだ。これはあぶれではない」ともいう。印紙(雇用保険料納付のための印紙)は100枚ほど貼り付けてあるが、何のために雇用保険を支払っているのかわからない」
NPO法人POSSEの方からアンケート調査の結果の特色が報告された。
「今年6月「若者の雇用状況アンケート調査」を500人を対象に行った。すると正社員の6割が、定期昇給なし、賞与なしの周辺的正社員であることがわかった。彼らは中心的正社員と比較し長時間労働、低賃金で、月収20万円以下が半数以上に上った。また、いまの住居に住めなくなるという不安を感じている人が5人に1人いた」
その他、私立学校事務職員の方から「少子化もあり私立学校では非常勤講師や非正規職員が激増し、事務職では以前は1課に1人非正規だったのがいまは1課に1人正職員という状況だ」との報告、グッドウィルユニオンの方からデータ装備費返還訴訟に関し、団交を再開できるようになった」ことが報告された。
また「セーフティネットなど法的な対策だけでなく、地方で新規雇用を創出することが根本的対策になる。そのためには雇用創出を阻む地方の既得権益層をなんとかしないといけない」という注目すべき意見が述べられた。
最後に保坂さんから「いわゆる霞が関の埋蔵金として雇用保険の分が5兆円、労災保険の分が8兆円あり政府はそれを取り崩そうとしている。しかし日本ではなかなか保険給付金をもらいにくく、セーフティネットはあっても役に立っていない現実がある。使いやすく改善すべきだ。またいままでの道路や空港づくりの公共事業から医療・介護の公共事業へ、鉄とコンクリートの公共事業を緑と命の公共事業に転換すべきだ」とのアピールがあった。
保坂さんのコーディネイトにより、派遣労働の厳しい現実から話が始まった。
保坂●暴走する資本主義は破裂し、経済は10月に底が抜けた。いったい11月に何が起こるのか、いままで経験したことのない事態が起こりかけている。社会保障としての雇用のセーフティネットをどう張ればよいのか、考えたい。麻生首相は追加経済対策で雇用保険料を0.7%下げるという。この時期にやるべきこととは逆なのではないのか。
関根●一斉に「派遣切り」が始まったが、もともと派遣社員は、雇用の調整弁扱いされている。従来の景気悪化期には、企業がぐっと我慢したものだが、いまは企業が「痛み」を感じる前にスルーして労働者を切る時代になった。13年も倉庫内作業に従事した人が、突然9月に解雇され放り出されてしまった。法では派遣は最長3年まで(それ以上は直接雇用するかクーリングオフ期間を設ける)と決まっているのにである。
日雇い派遣はもっと悲惨だ。毎日違う現場に派遣され、翌日の仕事の有無は前日午後までわからない。
池田●ガテン系連帯は製造業への派遣労働者のユニオンでNPO法人である。トヨタ系メーカー5社は今年6~8月2300人の派遣を削減し、最近日産は780人削減、三洋電機や森精機も削減を発表した。そうしたなか6月8日秋葉原事件が起こり「派遣労働者は殺人者集団」という報道まで行われた。悪いのは派遣先メーカーだと院内集会で主張した。
ボッシュ東松山工場の派遣社員は、4月にコンビニの前で面接を受け、8月末に缶コーヒーを1本渡され解雇を言い渡された、そのときもやはりコンビニの前だった。
福島●派遣社員の解雇は3か月ごとの契約満了時に契約を打ち切られる場合と契約期間中に解約される場合の2種類がある。厚労省は3か月に一度ヒヤリング調査を行っているが、そこですら雇い止めの激増が報告されている。また厚労省の日雇派遣労働者の指針で、本人希望でない雇い止めでは「派遣元事業主及び派遣先は互いに連携して、当該派遣先の関連会社での就業のあっせん等」を行うことになっている。しかし実際にあっせんしたかどうかフォローをしていない。そこで、まずきちんとした実態調査を行い、守られていない場合は行政指導すべきだと考える。現在起こっていることは、2004年の労働者派遣法改正で製造業にまで派遣を解禁した結果である。
次に雇用促進住宅や雇用保険にテーマが移った。
保坂●雇用促進住宅は、1950年代後半にエネルギー転換のため都市への転職を余儀なくされた炭鉱労働者のために1961年に設置された旧雇用促進事業団が建設した住宅である。いまも35万人が居住し、建物は古いが家賃3万円台で借りられる。いまこそネットカフェ難民にこういう住宅を開放すべき時期だ。それなのに今春から新規入居させないことになった。また福祉施設は雇用保険の保険料で建設された加入者の共有財産であるのに、民間へ1050円でプールを売却するなど「たたき売り」を始めている。
池田●雇用促進住宅入居の相談のため雇用振興協会に行って聞くと「働き方をどうにかしてください」と言われた。正社員でないと入居できないようだ。離職票を持ってくるよう言われたが、派遣社員で離職票をもらう人はあまりいない。
関根●雇用保険は派遣社員に圧倒的な差別的取扱いをしている制度だ。まず正社員は入社直後から加入できるが、派遣社員は働いてから1年以上雇用が見込まれないと加入できない。次に受給の際も、正社員は2週間以内に離職票が出るのに、派遣社員は1か月出してもらえない。一番困っている「はじめの1か月」にもかかわらずだ。日雇派遣はもっとひどい。昨年9月から日雇労働求職者給付金が適用されるようになったが、1年たって適用された人は全国で4人だけ、しかも保険料納付の印紙を発行するのはフルキャスト渋谷支店など全国で6事業所だけという現状だ。
福島●政府は社会保障費を2200億シュリンクさせようとしている。雇用保険を「使える雇用保険」にするべきだ。そうしないと社会が疲弊してしまう。
その後、会場から何人かの方から発言があった。
社会保険事務所の非常勤職員の方は職場の勤務の実態を次のように語った。
「いま年金問題で、全国の社会保険事務所は大変な状況になっている。被保険者と受け答えする窓口は、正規の公務員ではなくほぼ全員非常勤職員だ。わたしの賃金は日給7100円だが、人件費でなく物品費として計上されている。予算の制約とのことで、もちろん超過勤務費は出ない。休憩もままならず過労死寸前の状態だ。スキルのある人は次々にやめていく。「泥棒め」と怒鳴られ、殴られる人もいる。それでも窓口に来た方に「親切に教えてもらってよかった」と言われることもあり、仕事にやりがいと誇りを感じている」
日雇労働求職者給付金が適用された方が運用の実態を話した。
「窓口に被保険者手帳の申請に行ったが3回断られた。派遣ユニオンの関根さんに同行してもらったところすぐ受け取れた。ある日、横浜の関内に朝8時集合といわれ始発に乗っても間に合うかどうかだったので断ったら自己都合とのことであぶれ手当(給付金)は支給されなかった。またフルキャストは「仕事がないから紹介できないのだ。これはあぶれではない」ともいう。印紙(雇用保険料納付のための印紙)は100枚ほど貼り付けてあるが、何のために雇用保険を支払っているのかわからない」
NPO法人POSSEの方からアンケート調査の結果の特色が報告された。
「今年6月「若者の雇用状況アンケート調査」を500人を対象に行った。すると正社員の6割が、定期昇給なし、賞与なしの周辺的正社員であることがわかった。彼らは中心的正社員と比較し長時間労働、低賃金で、月収20万円以下が半数以上に上った。また、いまの住居に住めなくなるという不安を感じている人が5人に1人いた」
その他、私立学校事務職員の方から「少子化もあり私立学校では非常勤講師や非正規職員が激増し、事務職では以前は1課に1人非正規だったのがいまは1課に1人正職員という状況だ」との報告、グッドウィルユニオンの方からデータ装備費返還訴訟に関し、団交を再開できるようになった」ことが報告された。
また「セーフティネットなど法的な対策だけでなく、地方で新規雇用を創出することが根本的対策になる。そのためには雇用創出を阻む地方の既得権益層をなんとかしないといけない」という注目すべき意見が述べられた。
最後に保坂さんから「いわゆる霞が関の埋蔵金として雇用保険の分が5兆円、労災保険の分が8兆円あり政府はそれを取り崩そうとしている。しかし日本ではなかなか保険給付金をもらいにくく、セーフティネットはあっても役に立っていない現実がある。使いやすく改善すべきだ。またいままでの道路や空港づくりの公共事業から医療・介護の公共事業へ、鉄とコンクリートの公共事業を緑と命の公共事業に転換すべきだ」とのアピールがあった。
非正規雇用派遣労働者の生活困窮が逼迫しています。
派遣労働者 叉葉賢(またはけん)氏が切実な思いを歌にして youtube に発表しています。
http://jp.youtube.com/watch?v=v0siyuT_0as
ただただ泣けてきます。