10月から歴史学習に入り、2005年2月9日植民地支配への抵抗・民族独立運動の学習として『ガンジー』のビデオ、2月10日原爆記録フィルム『予言』、2月23日にはファシズムの学習の一環としてビデオ『わが闘争』(ヒトラーとアウシュビッツ)、3月4日~8日には第二次大戦の学習の終わりに、日本軍はアジアで何をしたかを振り返るため、ビデオ『侵略』を見て感想意見を書き、合計3回紙上討論を行った。口頭での普通の討論でもよさそうに思えるが、増田教諭は「口頭では口が達者な生徒のペースになってしまう」という。たしかに大人の討論でもそういうことは言える。
2008年10月の都庁第二庁舎前ビラ撒き
近現代史の授業で中国・韓国との関係を重点的に取り上げたのは、1982年8月の「『歴史教科書』に関する宮沢喜一内閣官房長官談話」に基づき、同年11月教科用図書検定基準に「近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていること」といういわゆる近隣諸国条項が追加されたこと、中学校学習指導要領・歴史の「カ
昭和初期から第二次世界大戦の終結」に「中国などアジア諸国との関係」が特記されていることによる(なお、2004年3月「つくる会」側が河村文科相に55万筆の署名とともに「近隣諸国条項」削除を申し入れ、朝鮮人強制連行の記述削除などを求める右翼の国民的運動を活発に展開していたことは前述のとおりである)。
2月10日~16日に行った、原爆記録フィルム『予言』など戦争について考える紙上討論や3月4日~8日に見せた『侵略』の感想では、下記の意見が見られた。
A●改めて、戦争は、この世の中にあってはいけないものだと、確信させられました。この世界には様々な人種の人もいれば、同じ人種の人間にも、それぞれ個性があります。人の意見や考えが、それぞれに異なるのは当然のことです。それを戦争で解決しようとすることが間違っていると思います。戦争をして何もかもが解決するでしょうか?
私は決してそうは思いません。
C●「過去のことは忘れた方が良い」というのは、違う、と思います。過去は忘れずに、ちゃんと後の世代の人々に教えていくことが大切だと思います。
A●当時の幹部の人たちは何考えてたんだか(怒りマーク)・・・今はもう亡くなっている人には、とやかく言ってもしかたありませんが、生きている人たちには、ぜひ、罪を認め、中国やアジアの人たちに対して心から謝り、罪を償ってほしいと思います。
ちょうどこのころ、韓国のノ・ムヒョン大統領が、このような意見に合致する3.1演説を行ったことが報じられた。
「両国関係の発展には日本政府と国民の真摯な努力が必要です。過去の真実を糾明し、真心を持って謝罪して、賠償することがあれば賠償し、そして和解しなければなりません。これが、全世界がおこなっている過去史清算の普遍的な方式であります。(略)同じように、日本も立場を代えて考えて見るべきです。強制徴用から日本軍慰安婦問題に至るまで、日帝36年の間に数千、数万倍の苦痛を受けたわが国民の怒りを理解すべきであります。(略)」(ノ・ムヒョン大統領の3.1演説より)
そこで3月15日(火)~24日の2年生最後の紙上討論で「ノ・ムヒョン大統領への手紙」というテーマも加えて意見感想を書くことにした。都教委が『不適切』な文言と評価し増田教諭を免職にした最大の理由は、この九段中学での授業「ノ・ムヒョン大統領への手紙」にあるので、以下、紙上討論の議論の推移を詳述する。
このときの意見感想は6月末に行った「3年生、紙上討論1」に掲載されている。他の紙上討論と同様に、このテーマに対しても賛否両論の意見が活発に出された。
賛成
旧2A●ノ・ムヒョン大統領へ。私は、今まで、日本の、本当の歴史を知りませんでした。しかし、この一年間、増田先生の授業を受け、本当に、日本がアジアでしたことを知り、初めはショックでした。しかし、これらの事実は、これからの日本の未来を作ってゆく中学生の責任として、きちんと見つめ合っていかなければいけない問題なのだと思います。
そして、もっと教科書には載っていない本当のことを、きちんと調べ、日本は何をしたのか知った上で反省をし、日韓両国が、一日でも早く本当の和解ができるよう、一人の力だけではどうにもなりませんが、こうした、日本がアジアでしたことの真実を他の人にも伝えていけば、真の和解ができるのではないと思います。だから、私たち中学生はこれからも、もっと日本の過去の歴史の真実を学んでいきたいと思っています。
旧2B●私は「手紙」というと書きにくいので、素直な感想を書きます。とにかく、この演説を読んで分かったことは、韓国の人は、ただ反日感情を持っているだけではない、ということです。演説の中に「私は拉致問題による国民の怒りを十分に理解しています」という文がありました。これを読んだ瞬間、なんだか、韓国国民の抑えた怒りを無視しているような感じの日本が恥ずかしく思えてきました。日本はなぜ、素直に過去の悪いことを認めて反省することができないのか分かりません。
旧2C●韓国の方々は、昔、日本の支配下に置かれ辛い思いをしたというのに、決して誇りを捨てず、今でも日本との関係をしっかり修繕しようとしています。これは、とてもすばらしいことだと思います。これに比べ、日本には、いまだに政府に右翼的で軍国主義に近いものを掲げ、「日本は良い戦争をした」と事実を隠し、間違ったことを僕たち子どもに教えようとしている人がいる、と先生に教わりました。これは、韓国の方々が、大統領をはじめ、必死に日本との関係を直そうとしているのに、とても失礼なことだと思いました。
今、日本では「韓流ブーム」と言って、韓国のドラマが人気を集め、莫大な経済効果を与えていると聞きます。こういうことから広げていって、韓国と日本が仲良くなり、いつまでも親友でいられるようになればいいな、と思います。
反対
旧2A●「拉致問題による日本国民の怒りを十分に理解しています」とあったけど、やっぱり、まだ拉致されて帰ってこれない日本人がいるのだから、その人たちが帰ってこないと、『真の和解』はできないような気がする。日本も昔に、朝鮮の人々にひどいことをしていたみたいだけど、今、苦しんでいる日本人だっているわけだから、その人たちが帰ってこそ、「お互いさま」だと言えるのではないか。(日本にいるから、そう思うのかも)
旧2B●ノ・ムヒョン大統領へ。私は増田先生から、戦争のビデオを見せていただくまでは、日本が中国や韓国にどんなことをしてきたのか、全く知りませんでした。だから、『南京大虐殺』や『第二次世界大戦』などのビデオを見て、正直、とてもショックでした。まさか、日本が、こんなことをしてきたなんて、思いもしなかったからです。
ノ・ムヒョン大統領のおっしゃることも分かります。当然、日本の侵略による植民地支配の傷を負った側は、現在の日本の拉致問題で言われている数に比べると、何十倍も苦しんで生きてきたと思います。しかし、その人たちの気持ちも分かりますが、その過去は、1965年の国交正常化の時に、「経済支援をするかわりに、もう、過去のことは言わない」という条件で支援をした、と新聞に書いてありました。なので、私は、過去は全部水に流して、韓国や中国と日本とが、助け合い、今より、もっと仲良くなってほしいです。
旧2C●ノ・ムヒョン韓国大統領殿。私は、100年前から60年前に日本が朝鮮に対して行ってきたことは、許される内容ではないと考えます。しかし、1950年の朝鮮戦争で我が日本国経済は復活し高度経済成長と呼ばれる時代を迎え、今日に至り、1965年の日韓基本条約後、日本の企業、日本の工場が貴国に与えた経済効果は、とても大きいものとなっているのではないでしょうか。私は、それにより貴国の経済的成長はあったのではないかと考えます。それを考えると、我が日本の過去の犯罪についてあげつらうことを、貴国はもう少し自重していくべきではないでしょうか?
もし、こうした両国の経済的つながりを切ることになれば、貴国の損失は、我が国をはるかにしのぐものとなるのは間違いないでしょう。そのように考えていった場合、ここらへんで、すべてを清算することが、両国にとって経済的に一番いいのではないでしょうか?
しかし、私は、ここまで書いてきましたが、決して日本国のやっていることが全て正しい、と考えているわけではありません。教科書に「侵略・植民地支配」のことを正しく書くべきだという貴国の望むやり方での解決も必要だとは思います。ただ、すぐに解決する問題ではないので、具体的に言えば「竹島(独島)」問題など、貴国も少し自重すべきではないかと思っているのです。
賛成・反対に分類しにくい「中間」ともいえる意見も出た。また増田教諭は生徒を誘導したり「洗脳」したのかどうか、次回は紙上討論への増田教諭のコメントについても紹介する。
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2008年10月の都庁第二庁舎前ビラ撒き
近現代史の授業で中国・韓国との関係を重点的に取り上げたのは、1982年8月の「『歴史教科書』に関する宮沢喜一内閣官房長官談話」に基づき、同年11月教科用図書検定基準に「近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていること」といういわゆる近隣諸国条項が追加されたこと、中学校学習指導要領・歴史の「カ
昭和初期から第二次世界大戦の終結」に「中国などアジア諸国との関係」が特記されていることによる(なお、2004年3月「つくる会」側が河村文科相に55万筆の署名とともに「近隣諸国条項」削除を申し入れ、朝鮮人強制連行の記述削除などを求める右翼の国民的運動を活発に展開していたことは前述のとおりである)。
2月10日~16日に行った、原爆記録フィルム『予言』など戦争について考える紙上討論や3月4日~8日に見せた『侵略』の感想では、下記の意見が見られた。
A●改めて、戦争は、この世の中にあってはいけないものだと、確信させられました。この世界には様々な人種の人もいれば、同じ人種の人間にも、それぞれ個性があります。人の意見や考えが、それぞれに異なるのは当然のことです。それを戦争で解決しようとすることが間違っていると思います。戦争をして何もかもが解決するでしょうか?
私は決してそうは思いません。
C●「過去のことは忘れた方が良い」というのは、違う、と思います。過去は忘れずに、ちゃんと後の世代の人々に教えていくことが大切だと思います。
A●当時の幹部の人たちは何考えてたんだか(怒りマーク)・・・今はもう亡くなっている人には、とやかく言ってもしかたありませんが、生きている人たちには、ぜひ、罪を認め、中国やアジアの人たちに対して心から謝り、罪を償ってほしいと思います。
ちょうどこのころ、韓国のノ・ムヒョン大統領が、このような意見に合致する3.1演説を行ったことが報じられた。
「両国関係の発展には日本政府と国民の真摯な努力が必要です。過去の真実を糾明し、真心を持って謝罪して、賠償することがあれば賠償し、そして和解しなければなりません。これが、全世界がおこなっている過去史清算の普遍的な方式であります。(略)同じように、日本も立場を代えて考えて見るべきです。強制徴用から日本軍慰安婦問題に至るまで、日帝36年の間に数千、数万倍の苦痛を受けたわが国民の怒りを理解すべきであります。(略)」(ノ・ムヒョン大統領の3.1演説より)
そこで3月15日(火)~24日の2年生最後の紙上討論で「ノ・ムヒョン大統領への手紙」というテーマも加えて意見感想を書くことにした。都教委が『不適切』な文言と評価し増田教諭を免職にした最大の理由は、この九段中学での授業「ノ・ムヒョン大統領への手紙」にあるので、以下、紙上討論の議論の推移を詳述する。
このときの意見感想は6月末に行った「3年生、紙上討論1」に掲載されている。他の紙上討論と同様に、このテーマに対しても賛否両論の意見が活発に出された。
賛成
旧2A●ノ・ムヒョン大統領へ。私は、今まで、日本の、本当の歴史を知りませんでした。しかし、この一年間、増田先生の授業を受け、本当に、日本がアジアでしたことを知り、初めはショックでした。しかし、これらの事実は、これからの日本の未来を作ってゆく中学生の責任として、きちんと見つめ合っていかなければいけない問題なのだと思います。
そして、もっと教科書には載っていない本当のことを、きちんと調べ、日本は何をしたのか知った上で反省をし、日韓両国が、一日でも早く本当の和解ができるよう、一人の力だけではどうにもなりませんが、こうした、日本がアジアでしたことの真実を他の人にも伝えていけば、真の和解ができるのではないと思います。だから、私たち中学生はこれからも、もっと日本の過去の歴史の真実を学んでいきたいと思っています。
旧2B●私は「手紙」というと書きにくいので、素直な感想を書きます。とにかく、この演説を読んで分かったことは、韓国の人は、ただ反日感情を持っているだけではない、ということです。演説の中に「私は拉致問題による国民の怒りを十分に理解しています」という文がありました。これを読んだ瞬間、なんだか、韓国国民の抑えた怒りを無視しているような感じの日本が恥ずかしく思えてきました。日本はなぜ、素直に過去の悪いことを認めて反省することができないのか分かりません。
旧2C●韓国の方々は、昔、日本の支配下に置かれ辛い思いをしたというのに、決して誇りを捨てず、今でも日本との関係をしっかり修繕しようとしています。これは、とてもすばらしいことだと思います。これに比べ、日本には、いまだに政府に右翼的で軍国主義に近いものを掲げ、「日本は良い戦争をした」と事実を隠し、間違ったことを僕たち子どもに教えようとしている人がいる、と先生に教わりました。これは、韓国の方々が、大統領をはじめ、必死に日本との関係を直そうとしているのに、とても失礼なことだと思いました。
今、日本では「韓流ブーム」と言って、韓国のドラマが人気を集め、莫大な経済効果を与えていると聞きます。こういうことから広げていって、韓国と日本が仲良くなり、いつまでも親友でいられるようになればいいな、と思います。
反対
旧2A●「拉致問題による日本国民の怒りを十分に理解しています」とあったけど、やっぱり、まだ拉致されて帰ってこれない日本人がいるのだから、その人たちが帰ってこないと、『真の和解』はできないような気がする。日本も昔に、朝鮮の人々にひどいことをしていたみたいだけど、今、苦しんでいる日本人だっているわけだから、その人たちが帰ってこそ、「お互いさま」だと言えるのではないか。(日本にいるから、そう思うのかも)
旧2B●ノ・ムヒョン大統領へ。私は増田先生から、戦争のビデオを見せていただくまでは、日本が中国や韓国にどんなことをしてきたのか、全く知りませんでした。だから、『南京大虐殺』や『第二次世界大戦』などのビデオを見て、正直、とてもショックでした。まさか、日本が、こんなことをしてきたなんて、思いもしなかったからです。
ノ・ムヒョン大統領のおっしゃることも分かります。当然、日本の侵略による植民地支配の傷を負った側は、現在の日本の拉致問題で言われている数に比べると、何十倍も苦しんで生きてきたと思います。しかし、その人たちの気持ちも分かりますが、その過去は、1965年の国交正常化の時に、「経済支援をするかわりに、もう、過去のことは言わない」という条件で支援をした、と新聞に書いてありました。なので、私は、過去は全部水に流して、韓国や中国と日本とが、助け合い、今より、もっと仲良くなってほしいです。
旧2C●ノ・ムヒョン韓国大統領殿。私は、100年前から60年前に日本が朝鮮に対して行ってきたことは、許される内容ではないと考えます。しかし、1950年の朝鮮戦争で我が日本国経済は復活し高度経済成長と呼ばれる時代を迎え、今日に至り、1965年の日韓基本条約後、日本の企業、日本の工場が貴国に与えた経済効果は、とても大きいものとなっているのではないでしょうか。私は、それにより貴国の経済的成長はあったのではないかと考えます。それを考えると、我が日本の過去の犯罪についてあげつらうことを、貴国はもう少し自重していくべきではないでしょうか?
もし、こうした両国の経済的つながりを切ることになれば、貴国の損失は、我が国をはるかにしのぐものとなるのは間違いないでしょう。そのように考えていった場合、ここらへんで、すべてを清算することが、両国にとって経済的に一番いいのではないでしょうか?
しかし、私は、ここまで書いてきましたが、決して日本国のやっていることが全て正しい、と考えているわけではありません。教科書に「侵略・植民地支配」のことを正しく書くべきだという貴国の望むやり方での解決も必要だとは思います。ただ、すぐに解決する問題ではないので、具体的に言えば「竹島(独島)」問題など、貴国も少し自重すべきではないかと思っているのです。
賛成・反対に分類しにくい「中間」ともいえる意見も出た。また増田教諭は生徒を誘導したり「洗脳」したのかどうか、次回は紙上討論への増田教諭のコメントについても紹介する。
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