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集会報告、読書記録、観劇記録などの「ときどき日記」

「国際化」を目の当たりにしたワールドカップラグビー

2019年10月10日 | 日記
ワールドカップラグビー2019での日本の快進撃が注目を浴びている。とくに9月27日に強豪アイルランドを破ったことが、前回(2015年9月)南アフリカに勝ったことと並び称賛されている。
自分の目でワールドカップを見られるのは一生で一度だけだろうと、調布の味の素スタジアムにウェールズ対オーストラリア戦を見に行った。このカードにとくに思い入れがあったわけではない。日本が出ない値段の安いチケットの予選リーグで、かつ東京でやるのは4ゲームしかなかったからだ。

新宿で京王線の電車に乗るときから赤のポロシャツのレッドドラゴンファンと黄色のポロシャツやジャケットのワラビーズファンの外国人が多かった。臨時停車した飛田給で、改札を出るまで長蛇の列、黄色のほうが多くみえたが、もう応援歌を歌い始めるグループがいた。
駅から出てもやはりごった返し、路上で両軍のバナーなどみやげを売っている人がいたが、それもやはり外国人。ひとつ千円だが、ときどき買う人がいた。印象としては、群衆整理のスタッフだけが日本人のような感じだった。
ゲートを入ってもやはりごった返している。荷物検査やボディチェックも全員受ける。ひょっとすると飲み物のボトルが入っていると何かいわれるかと思ったが、それは大丈夫だった。ちょっとおかしいのは、チケットをチェックしなかったことだ。これなら立見ならだれでも入れそうだ。プログラムもどこで売っているのかよくわからなかった。 人がたくさん並んでいる列があったので聞くと、公式グッズの列やビール・食べ物の列、トイレの列だった。数百メートル歩きやっとみつけたが、机の上には1冊もない。「売り切れですか」と聞くと「いえいえたくさんあります」という。それなら並べておいてほしい
プログラムは1500円で110pもあるカラーで紙質も厚い立派なものだが、1p広告のページが、ワールドワイドパートナーのエミレーツ航空、ハイネケン、マスターカードはじめオフィシャルスポンサーのキヤノン、東陶、セコム、リポビタンDなど、少なくとも20p以上ある。英文ページは広告だか、記事だかわかりにくい。日本語表記のページは40p程度だった。

ワールドカップ(左)とスーパーラグビーのプログラム
東京スタジアムは上下2層49,970席、コートは107m×71mの天然芝で回りに400mの陸上競技用トラックが付く。サッカー、ラグビー、陸上競技の大会に使われ、2020東京オリンピックでは、サッカー・近代五種・ラグビーの会場になる予定だ。今回の12のスタジアムのなかで、7万2000席の横浜、静岡・袋井の5万800席に次ぎ3番目に大きい。
2001年にオープンしたが、日本で初めて東京都がネーミングライツ(命名権)を導入し2003年「味の素スタジアム」となった。
わたくしの席は南側ゴールの斜め裏あたりの2階席だった。緑の人工芝がきれいなのはもちろんだが、ケーブルを伝って縦横無尽に動き回るカメラが目立った。テレビで真上からセットスクラムが映し出されるのはこのカメラのおかげだろう。この席からは北側の大型画面をみることになる
ゲームそのものは、前半23:8、最終29:25と接戦で緊迫し、みごたえがあった。データでみると、オーストラリアのボール保持率および地域支配率が63%とオーストラリア優勢である。ラックが多かったがたいていオーストラリアボールになっていた。そのうえターンオーバーもオーストラリアは17対9で倍近く多い。したがって見た目はオーストラリアが優勢だ。しかしボールを回し始めると、オーストラリアの行き先に必ずウェールズが待っている。それも1人でなく2人、3人だ。どうすればこんなに素早くディフェンス体制をつくれるのか、みていてもわからなかった。したがってタックル数はウェールズ183対オーストラリア95と2倍近い。そのせいかウェールズはペナルティが多かった。危険タックルは何度も何度も繰り返し大ディスプレイでリプレイされる。
ウェールズは、開始1分以内のドロップゴールにみられるように油断もすきもない。効果的にキックを使う、ボールを持てば1mでも前に出ようとする。後半疲れてくると、頻繁に選手交代させそのロスタイムを全員の体力を回復する休憩時間に使う。つまり実力のうえでウェールズが総合的に一枚上手の試合巧者ということなのだろう。
ノーサイド直前もオーストラリアが攻め続けており、時間が短く感じた。

さてスタジアムの中でも外国人応援団は元気で目立つ。ゲーム開始前からビールを飲みそこここでグループで応援歌を歌い盛り上がっている。ハーフタイムになると大変だ。オーストラリア応援団はマスコットの黄色のカンガルーを掲げカウントダウンを始める。「・・・スリー、ツー、ワン! ワーッ」と歓声をあげ手を上げるウェーブがスタンドに広がる。それを何度も何度も繰り返す。みんな陽気だ。冷静に考えると観客の7-8割が日本人のはずだが、見た目には白人が7-8割いるように見えた。前の人の座席の背に紙コップのビールをさし込むリングがついている。外人は男女ともたいてい飲んでいたように思える。一方、日本人はおとなしかった。

ハーフタイムのお祭り騒ぎ。真ん中の緑の女性はハイネケンのビールの売り子。
背中のつづらは結構重いのではないか。

試合終了後、駅に戻るとき純日本的な居酒屋チェーン(たとえば庄屋やえん屋など)にごく自然に外国人グループが入っていった。またわたくしの前を歩く赤と黄色のポロシャツの2人(普通に考えるとライバルチームのファン同士)が仲良く談笑するのをみかけた。「ノーサイド」の精神が観客にも浸透しているようで、少し驚いたが気持ちがよかった。

日本チームが出るゲームではどんなことになるのか、日本サモア戦を有楽町のパブリックビューイングに見に行った。開始45分前に行ってみたが、警備スタッフに「もう入れないかもしれない」と言われた。結構女性グループが多い。
幸い2階席の後ろの立ち席で人の頭の間から見ることができた。1時間前に行かないと座る席には入れそうにない。人の体の間からながめることになり、結構疲れたので前半の終わる少し前に会場を後にした。そんな時間でも大勢の人が並んでいた。1人出たら1人入れるわけではなく、50人くらいまとめて入れるようにしているそうだ。
結果的には38-19のダブルスコアになったが、前半は均衡していた。とくにフォワードが健闘していた。サモアもよくやっているが、ナイスプレーへの日本人応援団のリスペクトが足りないと率直に感じた。
なお、観戦席以外にイベントコーナーがあった。ラグビーへの関心を深める内容ならよいのだが、キヤノンの特製フォトフレーム付きの記念撮影、NECの顔認証システムなどオフィシャルスポンサーの企業広告のようなコーナーで、商業主義に徹しているように思えた。来年のオリパラもおそらくこんな雰囲気になるのだろうと興ざめだった。

なおわたくしは、日本チームの試合をワールドカップでみられないことが決まっていたので、2月下旬に、サンウルブズニューサウスウェールズ・ワラターズ(オーストラリアの3チームのなかの1つ)のゲームを秩父宮でみた。ゴールポスト裏の立ち見の一番安い席だったので1時間半ずっと立ちっぱなしかと覚悟して行ったが、コンクリート張りではあるが階段状のスタンドに座ることができたので助かった。ただしゲームの流れは体をひねり、半分くらいは後ろの大画面を見ないとわからなかった。
これはわたくしにとって40-50年ぶりのラグビー観戦だった。かつて、雪のなか国立で伊藤(忠幸)が活躍した日本選手権をみた記憶がある。
スーパーラグビーの結果は30対31で惜敗だったが、このとき驚いたのは先発メンバーではっきり日本人とわかる選手が3人しかいなかったことだ。ニュージーランド、オーストラリア、フィジー、ジョージアなどいろんな国出身のチームだった。もっともワラターズもオーストラリア出身者が多いものの、ニュージーランド、トンガ出身の選手も交じっている。したがって見た目は同じチームの紅白戦のような感じだった。だから体格も互角、スタミナも互角だったので接戦となった。あとで知ったが、主力は代表チームの合宿中という事情もあったそうだ。ただリーチマイケルはじめいわゆる「ガイジン」が多いということは理解できた。

スーパーラグビーとワールドカップでは事情が違うとは思うが、ワールドカップでは、1)本人が当該国生まれ、2)両親または祖父母のうち1人が当該国生まれ、3)本人が当該国に3年以上居住(2020年末から5年以上に厳格化)のいずれかを満たせば代表選手になれるルールだそうだ。なおワールドカップのプログラムには、そもそも選手の出身地は書かれていない。所属クラブのみで、ウェールズ、オーストラリア共に数人イングランドのクラブ所属の選手がいた。いわゆる「国際化」の進展の結果だろうし、音楽、美術などの芸術や学問の社会ではすでに当たり前のことになっている。日本のスポーツも陸上のサニブラウンやテニスの大坂なおみなどハーフの大活躍で、やっと「当たり前の国」になってきたのだろう。なにせ大相撲の大横綱・白鵬が日本に帰化する時代である。
今後もますます外国人との交流は深まるはずなので、隣国である韓国や共和国とも仲良くやっていけるようになればよいのだが・・・。
今後の日本社会の行方、「多文化共生」を目の当たりにする感じがしたイベントだった。
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