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集会報告、読書記録、観劇記録などの「ときどき日記」

労働法制改悪のスタート

2018年07月08日 | 集会報告
6月29日(金)昼前、多くの国民の反対にもかかわらず参議院本会議で「働き方改革関連法案」が可決され、とうとう「働き方改革法」ならぬ「働かせ方改革法」が制定されてしまった。
法案の基礎となる厚労省のデータそのものが2割間違っていたことの発覚に始まり、始業も終業もなく就業時間という概念そのものを消滅させ、労働基準法を根本から破壊する「高プロ制度」(高度プロフェッショナル制度)にはとくに反対が強かった。しかし裁量労働制の適用業種拡大の法律のみ取り下げたが、「戦争法」のときと同様に、労基法、労働契約法など8本の法律が一括で改定・制定された。

「働き方改革」反対の横断幕(2018年5月23日昼の議員会館前集会)
残業上限規制の大企業への適用や高プロ制度は来年4月、遅いものでも同一労働同一賃金(派遣会社を除く中小企業)が2021年4月に施行される。
特に評判の悪い高プロ制度は労働基準法を根本から崩壊させる悪法なので、同時に成立した罰則付き残業規制の対象外となっている。
衆議院本会議で可決されたのは1か月前の5月31日、厚生労働委員会採決は5月25日だったが、それに先立つ5月22日(火)夜、日比谷野外音楽堂で高度プロフェッショナル制度の導入に反対する集会(主催:日本労働弁護団)と国会請願デモが行われた。
連合(内田厚・副事務局長)、全労協(金澤壽・議長)、全労連(小田川義和・議長)の労組の3つのナショナルセンターが珍しく勢ぞろいした集会だった。

高プロ制度の問題点は数々ある。
対象者は年収1075万円、普通のサラリーマンの給与の3倍以上ということになっている。だが国会審議なしで省令で変更できる。「小さく生んで大きく育てる」といまからウワサされている。労働者派遣法の規制を緩めたため非正規社員が4割以上に激増したように、年収要件を徐々に引き下げ、社員の4割が「高プロ」扱いを適用されることも起こりかねない。
そもそも厚労省のデータの2割が間違っていたことに関し、尾辻かな子衆議院議員(立憲民主)は「レストランで注文した料理が出てきてその2割が腐っていたとき、2割捨てればそれでよいというのではなく、全部つくり直すのが普通だ。労政審の段階からやり直すべきだ」と皮肉った。
誰も望んでいない制度という批判もあった。ヒアリングした労働者はたった12人、それも会社の人事担当者同席でヒアリングをしたという。さらに2015年4月の(前身の)法案提出までにヒアリングしたのは1人だけで、こんなものに立法事実はない、と福島みずほ議員が議員会館前集会でよく訴えていた。労働者ばかりでなく、経営側やコンサルタントからみても、導入を望む機関はほとんどないという。
なによりも、就業時間や残業という概念がない就業スタイルなので、過労死が増えることは必然であり、就業時間の把握すらできないため、「過労死」の検証すらできなくなる
安倍首相は、面会を望み官邸前に座り込みを行った「全国過労死を考える家族の会」の人との面談にも応じなかった。応じないどころか、まるで無視しそもそも返事もなかった。

檀上でアピールする寺西笑子さん(左端)
全国過労死を考える家族の会・寺西笑子代表
(22日)午前中に衆議院厚生労働委員会で参考人陳述を行ってきた。
「高プロ」を絶対に許してはならないという強い思いで、5月16日に安倍首相に面談申し入れのファックスを送信した。期日は本日(5月22日)にしていたが、いまもってなんの返答もない。電通の高橋まつりさんのご遺族には会ったのに、わたしたちには会わない。
大切な家族を過労死でなくし、一番過労死をなくしたいと思っているのがわたしたち家族の会のメンバーだ。国民の命を守る法律をつくるのが国会なのに、逆に命を奪ってよいという法律をいまつくろうとしている
今日いろんな議員から質問を受けたが、議員のなかにはわかっている議員もいるが、わかっていない議員もいる。今日は経団連や経営者などが法律に賛成する意見を述べた。その意見を聞いてもわたしたちはなぜこの法案を出してきたのか、ますますわからない状態だ。しかし、働く人の命を奪う法律は絶対につくらないでほしい。まして強行採決という暴挙は許してはならない。明日も家族の会は官邸前座り込みを行う。過労死のない社会をともに築くよう、応援をお願いしたい。

昨年2月に安倍首相と官邸で面談できた電通・高橋まつりさんの母も6月の採決の瞬間を見届けたあと、「残念という気持ちと絶望。命より大事な仕事はない。今回の結果は非常に残念です」と語った(東京新聞6/30 28面より)

高プロへの反対はもちろんだが、違う視点からの反対もあった。上限規制そのものもこの法案では不十分というものだ。罰則付き残業時間規制の導入は大きいが、しかし、この法案では、繁忙期は単月で100時間未満、年720時間まで、と過労死ラインの残業を法律で認めることになった。これは逆に後退である。

浅倉むつ子・早大教授
2015年から「かえせ、生活時間プロジェクト」という活動を行っている。長時間労働は、生活時間そのものの確保を奪っているという発想でいる。だから「高プロ」導入には断固反対だ。いくら専門職、高給取りであろうが、人間であり生活者だ。
1日の労働時間規制が基本であり、労働時間の上限を過労死基準にするのでは効果はない。基準に合わせた労使協定を増やすことにしかならない。わたしたちは、時間外労働は時間で返せ、時間で清算しろと主張している。
長時間労働は、自分の命と生命を脅かすだけでなく、家族のための活動、社会的活動、地域のための活動を他人任せにすることだ。また長時間働く文化をつくることは、長時間働けない人、たとえば妊娠している人、障がいのある人、育児・介護をする人を排除することになる
わたしたちはこれを機会に、まやかしの働き方改革でなく、本当の意味で労働時間を問い直す議論を巻き起こしていきたい。

浅倉さんがおっしゃるように、たしかに「いくら専門職、高給取りであっても、人間であり生活者だ」。また長時間労働は家族のための活動、社会的活動を損ない、障がい者や育児者・介護者を排除する結果をもたらす。
逆にいえば、人間にとって「労働」とは何かを考えるよい機会でもあったはずなのだが、与党の「多数決採決の強行」でチャンスは消滅した。

「働かせ方改革」のほか、TPP11も6月29日に成立し来年早々に発効の見通しともいわれる。日本の農業・畜産業は壊滅するかもしれない。7月22日(日)の閉会までに与党はIR法案や来年の参議院選挙「改革」など重要法案を「多数決」で成立させようとしている。安倍本人は11日から18日までヨーロッパ、中東に外遊するにもかかわらずである。

キャンドルを手に「真実は沈まない」を合唱(2018年6月5日、日比谷野音でのオスプレイ飛ばすな!首都圏行動)
振り返ると、第一次安倍政権のときに教育基本法「改正」(2006年)が強行された。
2012年12月の第二次安倍政権発足後、大きいものでは特定秘密保護法(2013年)、「戦争法」(平和安全法制  2015年)、「共謀罪」(テロ等準備罪 2017年)が次々につくられ、原発再稼働、沖縄の辺野古埋立、武器輸出解禁、(憲法改正でなく)閣議決定による集団的自衛権容認を実行するなどムチャクチャと「暴走」が6年近く続いている。またNHK、内閣法制局、日銀などの首脳のすげ替えで次々に「組織」を乗っ取り、意のままに動かすように変えた。あげくのはてに森友・加計事件のような「エコ贔屓」・ファミリー政治が露見するまでになった。さらにウソを隠ぺいするため、存在する公文書を「ない」と言い張り、証拠を隠すため公文書の「ねつ造」を行わせ、国会で「ウソ」の証言までさせる。財務次官がセクハラで辞任、文科省局長が不正入試の「収賄」で逮捕される社会に急転換しつある。
黒田・日銀総裁の「異次元の金融緩和」にならっていえば「日本政治史上、異次元の政治家」だ。
若者たちが、官邸に向かって「ウソつくな! 本当のこと言え!」とシュプレヒコールする情けない現状、まず安倍が退陣することから始めなければ、何も始まらない。
  光は闇に負けない 真(まこと)はウソに負けない 
  真実は沈まない けしてあきらめない

      (キャンドル革命のテーマソング「真実は沈まない」の日本語バージョン)
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