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集会報告、読書記録、観劇記録などの「ときどき日記」

「神の国」日本の即位礼

2019年11月01日 | 日記
10月22日(火)は即位の礼で、今年のみ休日になった。国民こぞって「祝え」という趣旨だったのだろうが、死者90人を超す台風19号により祝賀パレードは11月10日に延期になった。
まるで平安時代の装束をまとった天皇夫妻と皇族たち、高御座(たかみくら)より一段低いところに立つ臣・安倍が音頭を取り、衆参議長、最高裁長官ら列席者が「万歳三唱」を叫ぶ。憲法などぶっ飛ばし、「神」となった天皇の即位宣言を讃え喜ぶ「神の国」日本の始まりのような一日だった。天気はときどき小雨でずっと曇っていた。
この日の午後3時過ぎ、新橋から銀座への「天皇即位式反対デモ」が小雨のなか実行された(主催者発表 参加500人 主催:終わりにしよう天皇制!「代替り」に反対するネットワーク=おわてんネット)。5月1日の即位の日も同じく500人も集まり驚いたが、この日も同規模が集まった。

記者会見にて(左から上中さん、金さん、岡田さん、星出さん)
その前日の21日夕方「許すな憲法違反の即位儀式」という緊急記者会見が西早稲田の日本キリスト教会館で開催された(主催:日本キリスト教協議会(NCC)靖国神社問題委員会)。
会見では、カトリックの岡田武夫名誉大司教(前・東京大司教)、プロテスタントの金性済(キム・ソンジェ)NCC総幹事、上中栄・日本福音同盟(JEA)社会委員長からアピールがあった。
まず司会の星出卓也さん(NCC靖国神社問題委員会委員長)から趣旨説明があった。
即位礼で天皇は高御座に上るが、屋根の八角形の屋形(やがた)は日本の国であり、日本の統治者の座に就くことを表し、これは神話の現代的表現で憲法第20条政教分離違反だ。また安倍総理は高御座より一段低い場所で寿詞(よごと)を述べ万歳三唱する。これは憲法の国民主権に反する。さらにキリスト者として2つの点で反対する。ひとつは皇室の伝統が憲法を超えたものになっていることだ。かつて明治憲法のうえに国体があった。また国民主権に反する宗教的儀式を、合憲として堂々と行っているが、政教分離に反する。また信教の自由には「信じない自由」もあるのに制限され守られていない。かつて上智大学の学生が靖国参拝を強要され、内村鑑三が不敬事件で追われた。
そして3団体からそれぞれの声明文が読み上げられ、簡単なコメントがあった。
声明のポイントは下記のような事項だった。
皇室の私的宗教行事である大嘗祭を「宗教色はあるが公的性格をもつ皇室行事である」として、国費を費やし、三権の長が出席する。また国事行為である即位礼にも宗教的伝統を導入した。国は宗教儀式に関与せず、政教分離原則を厳守することを要望する
かつて日本は、天皇の名により戦争と植民地政策を推進した。日本の教会は進んで協力した。わたしたちは、戦時下の教会の罪を悔い改め、その克服を全力で目指す。
なおプロテスタントの2会派は、イエスのみを主とする信仰の告白に立ち続ける、と続く。
記者の質問への回答やコメントの中で「アジア太平洋戦争に際し、戦争に協力し、あるいは協力を飛び越し天皇のために命を捨てなさいと奨励することを言ってしまった教会の指導者がいたことが記録に残っている。過去の過ちを繰り返さぬように」という後悔の言葉、「国家と天皇教が分離していないことが旧植民地に国家として謝罪できない理由」との反省が繰り返されたことが強く印象に残った。
会見のなかで参加者から、メディアはファクトチェックが重要だという話が出た。たとえば、TVのニュースかワイドショーで「平成のときは悠紀田(ゆきでん)主基田(すきでん)に反対デモが押し寄せたが、今回はそういう事態にはなっていない」と報じていた。「しかし実際には抗議デモが実行されたのに、警備が厳重で田から1.5キロのところで止められたため声が聞こえなかっただけだ」とか「代替わりの儀式は古来の伝統というが、実際には大正天皇の即位(1915年)以降なので、この100年に過ぎない」などファクトチェックをしていないというものだ。また「クリスチャンとしては、人間が神になるというのは受け入れられない」という話もあった。わたくしはクリスチャンではないが、生きている人間は神どころか、「象徴」になることにも違和感を覚える。
即位礼の儀式が違憲であるという主要論点はだいたい出そろっていた。キリスト者でないわたくしとしては、現行憲法の国民主権と天皇制は両立しないことの理論化を学習し、深めていきたいと感じた。

1999年の全日空機ハイジャック事件以来20年ぶりに「最高警備本部」が設置され2万6000人体制の警備が敷かれたと報じられたが、千代田区内の道路上で兵庫県警、大阪府警、奈良県警、長崎県警などの腕章を付けた警官をみかけた。おそらく全国から警官が動員されているのだろう。北海道警のパトカーまで見かけた。高江ヘリパッド建設工事のころの沖縄はきっとこんな光景だったのだろう。

キリスト教会館に行く途中、牛込柳町の交差点を通過し、ひとつ思い出した。1980年前後この近くに住んでいた時期があり、ある平日夜9時か10時ごろ通りかかると警備体制が敷かれており、先導の白バイに続き黒塗りの大型車がまったくスピードを落とさず交差点を右折し走り去っていったのだ。美智子が手を振っていたような気がする。

翌22日「天皇即位式反対デモ」があったが、その前に1時間のミニ集会が新橋で開催された(主催:おわてんネット)
こちらは女性が多かったこともあり、天皇制と産む性である女性の問題、「侵略戦争や朝鮮半島の歴史に向き合わなかったことで、結果として踏みつけている多くの人がいる」という「差別の構造」問題が比較的多かった。
またキャンプ座間の前で2006年からデモを続けている方、死刑反対の立場から金子文子など天皇制を論じた方、愛知トリエンナーレ「表現の不自由展・その後」の再開を求める運動をした愛知県民の方、大分で九州電力に対するスタンディングを続け3000日を超えたという方など、さまざまな立場から天皇制反対の熱く深い思いが語られた。
ウヨクに「そんなにいやなら日本から出ていけ」とよくいわれるが、「(そんな日本なら)日本こそわたしから出ていけ、と言いたい」とアピールした方や、5月の即位の日の一般参賀のとき皇居敷地内で天皇制反対のビラ配りをした女性が喝采を浴びていた。
進行のKさんの柔らかい口調のおかげもあり、いつものような独特の緊張感が和らぎなごやかな雰囲気の1時間の集会になった。
そしてデモが始まった。

「天皇いらない、いますぐ辞めろ、終わりにしよう天皇制」
「憲法違反の皇室神道、儀式の強制は憲法違反、祝いの強要は憲法違反」
「女性差別の天皇制、民族差別の天皇制、差別の中心天皇制」
「歴史偽造の天皇制、ウソで固めた天皇制
 戒厳体制やめさせよう」
「自由な表現つらぬこう、今こそ実現 民主主義」
と、反天皇制のシュプレヒコールが外堀通りにこだました。わたしの感じでは、いつもの反天皇制デモほどウヨク、とくに街宣ウヨクが多くなく、機動隊もいつもほど高圧的ではないようで「平和」な行進だった。
ところが、途中でデモの列がストップした。わたくしは列の前のほうで側面用の黒幕を掲げ歩いていたので見ていないが、後ろのほうの列で、なんと逮捕者が2回合計3人も出たというのだ。3回ほどストップしたため、ゆっくり歩いて1時間のコースが1時間半近くかかった。

築地警察前での抗議行動
シュプレヒコールは「弾圧やめろ、仲間を返せ」に変わった。
いったんデモのゴール地点・銀座一丁目の首都高北側の小公園で解散し、すぐカンパ袋が回り救援資金を集めた。その後1キロほど先の築地警察に向かった。逮捕された3人は分散留置され、1人はここだった。機動隊が前面を固めるなか、抗議の声や「インターナショナル」「真実は沈まない」などの歌を歌い、締めはこの日2回目のおっちんずの「天皇制はいらないよ」で、サビのリフレインがいつまでも続いた。

☆上野の国立博物館で「正倉院の世界」展をみた。「ご即位記念特別展」という冠タイトルは気に入らないが、たしかに8世紀・唐の「螺鈿紫檀五絃琵琶」の螺鈿や玳瑁(たいまい)は美しかった。奈良時代というか、向こうがいう「日本の伝統」の中核は、想像以上に東アジアやシルクロードなどとの国際交流を重視していたことがよくわかった(もちろん高校・日本史で学んでいるのだが)。
平成館で「天皇と宮中儀礼」という展示をしていた。1760年代の悠紀主基屏風(
ゆきすきびょうぶ 土佐光貞)、1916年の高御座図(森田亀太郎)などが展示され、即位礼のパネルには高御座の東にやや小型の皇后の御帳台(みちょうだい)が設営され、高御座には鳳凰、御帳台には(らん)という鶏に似た想像上の中国の鳥が載っているそうだ。
次の宮中儀礼は11月14日、天皇が天皇家の先祖の神・アマテラスとともに食事をするまさに「神話の世界」の皇室宗教儀式、大嘗祭が行われる。

勾留理由開示公判の東京地裁前「なかまをかえせ」祭り
☆逮捕された3人のうち1人は25日に釈放されたが、湾岸署と大井署に留置された2人は勾留が認められ、30日に勾留理由開示公判があった。このサイトの10月27日付け第二声明をごらんいただきたい。
やはり天皇制反対運動への「弾圧」の季節が再び来たのかもしれない。最近起こった名古屋市と政府共同の「表現の不自由展・その後」の抑圧(それに続く三重県伊勢市の作品「展示不可」問題」)、KAWASAKIしんゆり映画祭での「主戦場」上映中止への川崎市の圧力などと考え合わせると、行政機関のアベ政権への過剰な「忖度」や日本社会が向かいつつある方向がリアルにみえる気がする。

☆アンダーラインの語句にはリンクを貼ってあります。
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