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住民主催の光が丘学校跡施設・説明会

2009年11月24日 | 集会報告
9月末から10月初めにかけて、練馬区は9月に策定した光が丘学校跡施設基本計画(素案)の区民向け説明会を3回にわたり開催した。しかし区報でしか広報しなかったせいもあり、参加者は合計でわずか111人に過ぎなかった。同じ光が丘地域で2年前に開催した小学校を8校から4校に統廃合する説明会のときは560人が参加したのと比べ、あまりにも差が大きい。内容も、4校の跡施設のうち2校を民間企業に貸与する、大災害の避難拠点もどうなるかわからないなど、多くの問題をはらんでいる。そこで10月に結成された「光が丘学校跡施設利用を考える会」が区にさらなる説明を求め、11月20日(金)夜、住民主催の区の説明会が実現した。
住民は、説明会のチラシを団地12000戸にポスティングしたり、駅頭で配布した。光が丘区民センター多目的ホールで行われた説明会には、区から企画課長および係長、防災課長、まちづくり推進調整課長、新しい学校づくり担当課長、生涯学習課長が出席し、住民約70人が集まった。

まず素案の説明と事前に提出した31の質問に対する回答があった。やや目新しいことでは、素案の実施スケジュールはすでに遅れており光が丘3小の企業公募は2010年度にずれ込みそうであること、学校跡地で既存企業が進出した例として神戸の「北野工房のまち」と新宿の吉本興業東京本部を挙げたことがある。ただし神戸は観光地、新宿は歌舞伎町のはずれといずれも光が丘のような住宅団地とは立地をまったく異にする。
この日区民意見反映制度や説明会で113人から寄せられた333件の意見に関する「素案に寄せられた意見について」という5pの資料が配布された。教育関連、民間への貸与、地域施設・高齢者・保育園、避難拠点、学校開放事業、病院など7分野15の意見に対する「区の考え方」が示されている。日大光が丘病院について、住民が独自に病院にヒアリングして、病院側は建替えを区と相談したことはないことが判明したが、このプリントで「区として準備を考えている」だけで協議は行っていないことが裏付けられた。また、避難拠点としての利用、学校開放で利用している校庭や体育館の利用を借受け先と協議することが明記された。さらに従来は、民間企業選定後は住民との話し合いを行わないと説明していたが、借受候補者決定後に説明会を行い「区が必要な調整を行った後に、借受者を決定する」としている。この点は一歩前進で評価できる。
また11月8日に行われた春の風公園街団地管理組合主催の説明会で「小学校跡地は校庭にトラックを駐車し体育館で荷物の仕分けができるので配送センターになるのではないか」との質問があり、区が「配送業は利用時間、騒音、照明などの点で住環境に悪影響を及ぼすので入居させない」と回答したことが紹介された。

このあと10人の住民から質問があった。注目すべき質問や意見を紹介する。
Q1 全国600社のアニメ企業のうち100社近くが練馬区にある。区はアニメ企業を誘致したいようだが、いま経営的にたいへんな状況にある。わたしはアニメ関係のNPO法人を運営しているが、現場のアニメーターの労働条件は、働いてもまともに生活できないワーキングプアに近い。現場でとくに求められているのは職場に近くて安い住居だ。区はオフィスを貸すだけでなく安い住居を提供するような支援策を考えているのか。またアニメプロダクションが学校跡地のような広いスペースを借りることは、ほぼ不可能だ。
A プロダクション1社でなくアニメ協議会など団体に声をかけることもありうる。公募に応募する際、支援とセットで申し込むこともありうる。

Q2 光が丘の小中学校建設は、普通の団地内小学校のような出資方式を取っていない。1984年7月31日練馬区長と住宅公団東京支社長とのあいだで締結された「グラントハイツ跡地における学校施設等の整備に要する費用の負担に関する協定書」で、すでに用地を譲渡した光が丘4小と1中の1520戸を除く5471戸が学校施設等協力金60億円を負担することになっている。つまり住民はたんなる関係者ではなく1戸当たり約110万円を拠出した出資者なのではないか。一方、区の自主財源から小中学校建設費は1円も拠出していない。区はこの協定書の存在を知っているのか、また知っているならこの素案に反映しているのか
A 協定書の存在は承知している。学校建設に事業開発者が一定の負担をしたことは知っているが、開発者が団地経営のなかで居住者や国費負担をどのように整理したかまでは知りえない。また区の自主財源からはたしかに支出していないが、都と区のあいだでは財政調整制度があり、都が徴収した区民からの税を23区に配分している。また国庫補助金も使っている。そういう意味で区民共用財産として跡施設の計画を進めている。

Q3 30人学級や35人学級になった場合、教室数は足りるのか。いま出ている都のデータで説明してほしい。
A 今年の教育人口推計は11月末ころ発表される予定だが、08年度の教育人口推計より下振れすると予測している。35人学級なら対応可能だ。いちばんスペースがきつい光1小・2小の統合新校の場合、08年度推計では623人だったが実際には581人だった。また来年の新1年生の就学児健診でも約580人だった。
Q3-2 現在1小は1クラス22-30人だが、統合すると38人になりいっきょに教育環境が悪くなる。35人学級も対応可能というがギリギリなのではないか。他県でやっている30人学級を、将来東京都もやることになったときに「できません」では困る。
A すぐ35人学級や30人学級になるとは考えていない。もしそうなれば、スペースだけでなく、いま1200人の教員をさらに400人増やす必要が出てくる。

質問以外に区に対し多くの要望が出された。
民間企業への貸出しは絶対にやめてほしい
いま生きている住民のために4つの跡施設のうち1つは特養か老健施設にしてほしい
区全体の視点の提案がほとんどで、住民のまちづくりの視点のプランになっていない。地域交流コーナーは2教室分程度のスペースしかないが、せめて1フロア全部を使うくらいに拡大してほしい。
避難拠点の確保は重要なので、区民のための大災害の場合は避難拠点として利用することを、募集要項に条件として入れてほしい
跡施設について「区立小・中学校および区立幼稚園の適正配置基本方針(2005年4月)で「保護者や地域の意見を踏まえて検討する」と説明し、今年4月の区議会企画総務委員会で企画課長は「保護者の方、あるいは卒業生の方々のご意見を伺っていく機会をつく」ると答弁したがやっていない。光が丘の全住民に対しアンケートを出してほしい
住民と区の間で跡施設問題を協議する委員会を設置してほしい

光が丘の小学校に通学する周辺地域の子どもの数は区の統計で増えていること、デイサービスなどの老人施設は本当に改築するより新築のほうが安いのかどうか、公共施設や道路ではなく「学校施設等協力金」を1戸当たり110万円も拠出しているのに、区のペースで一方的に利用方法を変更して決定できるのかなど、まだまだ問題が残っている。
最後に主催者が、区との話し合いを今後もぜひ継続したいと強い要望を表明し、この日の説明会を終了した。

☆11月24日(火)の産経新聞朝刊19面に「企業誘致?高齢者施設? 区と住民、廃校跡地めぐり議論 練馬・光が丘団地」という記事が掲載された。4年前に72歳男性が団地内で孤独死したこと、区内の特養待機待ち高齢者が2500人に上ること、一方、高島平団地では「シニア活動センター(仮称)」、戸山団地では「ほっと安心カフェ」を設けたことなどを紹介している。高島平では当初、区にゆかりの人物の記念館を設置することになっていたが、住民との話し合いの結果、計画変更したそうだ。末尾で高橋紘士・立教大学コミュニティ福祉学部教授が「自治体に必要なのは、介護が必要になっても住み慣れた団地に長く住み続けられる街づくりを仕掛ける工夫だ。住民のアイデアをよく聞き、意見を吸い上げる姿勢が大切だ」とコメントしている。
練馬区も住民の声をよく聞く姿勢を示してほしいものである。
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