4月8日夜、中央区内でれいわ新選組の山本太郎代表と北村イタルさんの話を聞く会が開催された。この日は、午後3か所の街宣を終え、しかも最後の会場では春の豪雨かつ雷鳴まで鳴り響き、春の嵐の夜の集会だった。進行は、会場からの質問に山本代表が答えるという形で進んでいった。
数多く出た質問のなかから、わたくしが関心をもった質疑を中心に紹介する。
1 毎月10万円の特別給付
Q れいわの「コロナ緊急政策」のなかに「10万円を毎月給付」というものがある。周りをみるとコロナの影響を受けていない人、たとえば企業で働いている人が半分はいる。そういう人に10万円給付するのはムダだ。本当に困っている人にいけばよいのではないか。
A 月10万、1.2億人に毎月配ると1年で144兆円になる。その財源は政府による通貨発行(新規国債)で、財政出動は可能というのがれいわの立場だ。
毎月10万円の給付がいらない人もいるだろうが、困っているか困っていないかの線引きをするのにどれだけ時間がかかるかという問題がある。いま必要なのはスピード感ではなく、スピードなのだ。一刻も早く全員に渡るようにしながら、一定期間過ぎたあと、線引きということも考えられる。10万円給付してもらい過ぎている人には税で取ることや線引きによる減額というやり方もある。アメリカはこれまで3回現金給付し今回15万円現金給付だが、線引きがあり、年収800万円くらいから減額するという話になっているようだ。たとえば日本では1000万円以上というような線引きもあるかもしれない。
また、いまは困っていない人も、将来困ることがあるかもしれない。なぜならこの20年間のあいだにGDPは縮小し続けている。GDPはみんなのもうけだが、縮小しているということは、自分のもうけをたくさん減らしている人がいるということだ。ということはあなたの会社が無傷でいられる保証がないということだ。
またこの政策は困っている人にすいぶん優しいと思われるかもしれないが、困っている人の場合、右から左にすぐおカネが流れる、経済にすぐ寄与するということだ。弱い人だけでなく全体的に底上げされる。日本経済が20年以上おカネが回らず痛み続けてきた現状を修復する必要がある、コロナにより需要が失われた部分をしっかり手当てしていく必要がある。そこをやっていけば困っている人だけでなく、困っていない人も、この先も底上げされ、この国の20年以上のデフレという病気に対する処方箋にもなる。
Q 上記に関連し、住所のない人にどのように10万円を支給するかという問題がある。
A 去年行われた給付は住民基本台帳がベースになっていた。すでに住民票を失った人は役所になんのレコードも残っていない。もらえる対象ではなかった。それぞれの自治体、たとえば市役所にいったん住所を置いて10万円を受け取れないかという話をしたが、そういうことはやっていないの一点張りだった。命をつなぐために必要なことが行っていないのが実情だ。
ホームレス状態でなく、生活保護も受けられるようにして、アパートとセットで給付を受けられるようにする。住所が決まれば、ベースは生活保護でも、自分で働こうという意思が生まれてくればそちらに移行し減額していくこともできる。まずは住所を持つ、住まいは権利ということを基本にすることが解決方法ではないか。金融機関と何かしらつながり(口座)がある人は銀行の窓口でも手続きは可能なので、要件をゆるくする必要はあるが、そういう方法もある。
☆この質問に関し、北村イタルさんが上野公園のホームレスと面談した体験談を紹介された。
文京区議の妻と2人で上野公園に行った。目的は2つ。工事や仕事打ち切りで寮を出ることになり、あの時期マンガ喫茶も閉鎖されていたので公園で野宿している人がいると考えたこと。もうひとつは10万円の給付が路上生活から外に出ていくきっかけになる方もいるかもしれないので、ぜひ受け取っていただきたかったからだった。
ていねいにこうやったら10万円受け取れると説明したが、おそらく一人も申請されなかったと思う。なぜかというと、山本代表の話にもあった住所の問題だ。役所は、住基ネットなどで本籍を把握できるので、いったん役所に住所を置いて給付すべきだったといまでも思う。
過去、生活保護にチャレンジした人は多いが、東京の多くの人は申請すると、無料低額宿泊所(無低宿 無低)というとても劣悪な環境に住むことが要求される。3人1部屋、5人1部屋、ご飯もおいしくなく、朝ラジオ体操させられる「修行」のような生活になる。修行を1回入れないと路上生活から脱出できないという不思議なシステムが日本で敷かれている。
路上生活をする人が給付を受け取るには、福祉の枠組みに入らないといけない。「修行」のイヤな体験が頭のなかにこびりついているから、結局10万円をあきらめる。前回の10万円給付には問題があったと思う。
2 デジタル庁
Q 政府はデジタル庁をつくり、改革をすすめようとしているが、どう考えるか。
A デジタル庁で何をやろうとしているかというと、大きく分けて2つだ。ひとつはみなさんの情報を広い範囲にわたりどんどん集積し民間だけでなく、行政にまでつなげ、民間企業が利活用しやすいように情報を流せるようにしたい、ということ。行政の個人情報は、これに使うということがはっきりしていないとダメ、これに使うからこれ以外のことには使うなという枠組みであるのにそれを取っ払い、個人情報の扱いを全部いっしょにする。
もうひとつは国家による個人の監視に広がっていく。
今後デジタル化は進展する。本来、人びとの人権を守りながらいかに便利なデジタルを活用していくのかということを話し合っていかなければならないし、技術を深めていかなければいけない。しかし企業側の利益に寄っていったり、その技術が使い方によっては監視技術になる。デジタル庁の責任者は官邸で、そのトップは総理なのだから。トップとなる総理のそば、内閣官房幹部のなかには警察の人もいる。デジタル庁と企業の利活用を考えると、スーパーシティ構想も関連してくるだろう。皆さんにとってあまりプラスにはならないかもしれない。
3 憲法改憲
Q 自公の議席が多すぎるこの現状では改憲しないほうがよいと思う。れいわで、あえて改憲するとすれば、どんな項目を変えたいか。
A 2012年の自民党・憲法改正草案はまったくひどいもので、「憲法のことをもう少し勉強してきてもらっていいですか」というレベルのものなので、これを受けつけるわけにはいかない。
ただ一言一句変えてはいけないという代物ではない。民主主義の否定になるからだ。だが、すぐに憲法を改正したいという考え方ではない。憲法改正に必要なことは、自分たちの勢力が2/3に達しというような議会内のルールではなく、この国に生きる人たちが、権力に対し憲法は縛りを入れるものという意識を、子どもから大人まで共有できているか否か、ということだ。議論の積み重ねや、国民的な議論が積みあがっていく長い周知期間や、教育で憲法の重要性がシェアされることが必要になる。
2015年に安保関連法を通されてしまった。これは憲法を飛び越えている。違憲立法だが、成立してしまった。
憲法9条をそのまま読めば自衛隊の存在自体ありえない違憲だ。しかし13条幸福追求権も合わせて考えた場合、自衛隊は合憲だという考え方が今までメインストリームではされてきた。
安保関連法を通されたとき、時の権力者により詐欺的行為で憲法を飛び越え法律が通されつくられる可能性があるということを考えると、やはり憲法を縛らないといけない、と私は思う。であるならば、目の前にある事実上の軍隊をどう縛るのかということを憲法に入れていかないといけないだろう。日本の領土、領海、領空である範囲から出さないという縛りを入れないといけない。完全に専守防衛であるところから出ない、ということを憲法のなかで縛らないといけない。
一方、国内の災害に対し、被災地の復旧が一刻も早く進む復旧作業という部分に大きくスキルを発揮していただける状態にしていく必要があるだろう。
4 次期衆議院選での立憲野党共闘
Q 衆議院選での立憲野党共闘(統一候補)の最低条件として、れいわが消費税5%減税を掲げていることは知っている。それ以外に共闘の条件が何かあるのかどうか。たとえば小選挙区のやり取りや比例代表選挙区での共闘方法について。
A 消費税減税はいっしょにやるなら組む、やらないなら独自にやる。これを2019年から言い続けている。いまの状況をみれば、はっきりいえば消費税廃止しかない。しかしわたしのなかではゴールポストを動かすのはまずいと思うので消費税5%、そこをクリアすればいっしょに闘える。ほかにハードルは設けていない。
野党統一候補で闘う場合、最終的には他党と重複している小選挙区について話し合いにはなると思う。その場合、いろんなパターンがありうる。1年以上各予定候補は活動しているから「ゴメン、降ろせません。以上です」というものから、民間会社の電話調査を入れ一番支持率が高い人にその選挙区を闘ってもらうという方法、野党統一候補という形で受け入れる方法も考えられる。比例代表選挙区のほうでの調整という方法は一番ハードルが高い。しかし本気で政権交代を起こすということなら、比例も含む野党統一を考えないととても政権など取れない。難しい問題ではあるが・・・。
その他、自民党が公約に入れようとするこども庁創設と子どもの権利条約や日本への勧告との関係、話題の『人新世』(斎藤幸平 2020.9 集英社新書)と「成長」という概念、マイナンバーカード、新型コロナワクチン、デジタル利権や低賃金のデジタル土方、などバラエティに富むトピックスについて質疑応答があった。
なお、この日の街宣は、このサイトでみられる。45分から60分のところに山本代表の1人毎月10万円給付の財源などの説明がある。そのなかで、通貨発行の限度や制約・上限、そして所得税の累進性強化、法人税の累進税化なども詳しく説明されている。
また19分40秒から22分の3分間と1時間0分から6分の6分間で北村イタルさんのスピーチを視聴できる。
●アンダーラインの語句にはリンクを貼ってあります。