多面体F

集会報告、読書記録、観劇記録などの「ときどき日記」

花柳寿南海舞踊の会

2009年10月30日 | 観劇など
10月21日(水)夜、チケットをいただいいたので国立劇場小劇場で「花柳寿南海舞踊の會」をみた。先生の踊りを見るのは、昨秋の「花柳寿南海と花柳翫一の會」以来のことだ。
わたくしは日本舞踊だけでなく、バレー、モダンバレーなども含め舞踊にはまったくの素人である。だから見どころもわかっていない。おそらく仕草がサイン示していて、それを手がかりにストーリーを理解できるのではないかと思うのだが、わたしには残念ながらわからない。

演目は3つ。1曲目は「一中 姫が瀧四季の山めぐり」、パンフレットには「古本『都鶯梅宿』『都一曲二十六段』に記載されている山姥物の一つ。十一世都一中が昭和25年襲名35周年記念演奏会で復曲した」との解説がある。
舞台には、あかね雲が3つ浮かびバックに、金屏風が5双立てかけられている。
幕が開くと花柳先生は右手に杖を持ち片足をついている。ただ立って止まっているだけでもポーズが決まっている。
「花を誘いてめぐる山 まして我が名を夕月の・・・」のところで、首を傾げたり、少し左右に振るだけで、その動きが美しい。パントマイムをさらに美しくしたような動きである。両手を上に上げると、小柄なはずの先生がとても大きく見える。
「春は梢に色々の花咲く山にと山めぐり」で、杖をパタンと床に落とす。
「めぐりめぐりて山姫の・・・」で今度は扇を下に落とす。そして「いざ立ち寄り手水汲まん」で、ひざまずきふたたび扇を拾い上げる。たしか先生は膝が悪いはずなのだが、動きはとてもスムースだ。
古典芸能、あるいは芸能一般と同じように、型通りといえばそのとおりなのだが、先生の場合、型に「はまる」のでなく型を自ら「作り出す」クリエイティブな動きに見える。
2曲目「長唄 松の調」(作詞・馬場あき子、作曲・今藤政太郎)は振り付けが華やかな作品だった。
緑、黄緑、黄色の着物に薄ものをまとった人が2人ずつ3組登場する。
「面白や、宇多の渚ははるばると、千代の松には千代の鶴群・・・」とおめでたい歌詞である。
片足を上げたり、手をひらひらさせたり、2人で手を握りグルリと回転したり、片手を「あれっ」と言っているような形で口元にもっていきのけぞったり、いわゆる日舞のイメージそのままだった。動きが早まると、6人よりもっと多くの人がいるように感じる。
鼓と三味線の音楽もめでたい。舞台裏では鉦(カネ)まで鳴っている。列の端で終始クルクル楽器を回し暖めていた笙が最後のほうで登場し、音楽は、さらに華やかさを増した。
最後は「長唄 冬山姥
山姥ものの最古曲で「四季の変化物のうち冬の部で山姥と金太郎の所作を見せるもの」と解説にある。
出の太鼓が高まり、やがて低く消えていく。バックには氷の山のような銀の屏風が4双、舞台には柴のような薪が2束置かれている。花柳先生は扇をかざし、杖をつきよろめきながら登場する。片方の肩に枯れ草色の薄物をかぶっている。
「足曳の山高うして海近く、峰の梢は雪折れのすはやかげろふ夕月の、影も朧に山姥が・・・」
文楽の人形のように(といってもわたくしは見たことがないが)カクカク、ニューッという感じで体が動く。重量感と安定感を感じさせる。
山姥は子どもを取って喰う妖怪という伝説も多いが、多産で子育ての民話も残っている。この山姥は足柄山の金太郎の母である。金太郎とは、そう、足柄山でまさかりをかつぎ腹掛けをかけ、熊と相撲を取り、源頼光の四天王になったあの坂田金時のことである。
「心つくして育てし我が子、数へて見ればいくとせか(略)我が子と共に力業、夫の菩提や我が子のためにのみ、よし足引の山姥を慕ふ我が子を呼小鳥」と歌詞が続く。扇を投げ、薄物の布を振り回す。顔に元気がみなぎり、胸を張っているようにみえる。

(き)が入り幕が下りると、カーテンコールなど何もなく客はすぐ席を立つ。
あっさりしているが、すがすがしく心は満ち足りていた。

パンフに、「楽しい、良い踊りを踊りたいと、ゴールの無い摩訶不思議な芸の道を、こつこつと歩んでまいります」とある。人間国宝になっても85歳になっても、いわゆる「名人」の心境はこういうものなのかと感心する。

☆前回も同じことを思ったが、観客は意外に男性が多い。それも中高年の夫婦だけでなく男性グループ客や若い人もいる。だいたい男性2対女性8くらいの割合だろうか。女性は和服の人が多く、劇場全体が華やかな感じがする。そうすると不思議なことに男性も品のいい人が多く見える。気のせいだと思うが・・・。
赤提灯のみやげもの売り場があった。のどあめ350円、足袋ソックス500円、お三輪や祭りのイラスト入り便せん450円、来年の干支である寅の人形・大小さまざま350~1600円
まだ8時過ぎだったので皇居側歩道に出ると、多くのランナーが走っていた。
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