国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

ロシア極東旅行記:ウラジオストク編

2007年09月07日 | ロシア・北方領土
ウラジオストクで考えたことだが、現在の東アジアは19世紀後半の西欧と比較的似通った面がある。アジア大陸では北側のロシアと南側の中国という二つの超大国が対立し、中国の成長にロシアは大きな脅威を感じている。また、中露と日本の間には緩衝国の朝鮮半島国家、中露間には緩衝国モンゴルが存在する。中国をドイツ帝国、ロシアをフランスに例えるなら、緩衝国の朝鮮半島国家はベネルクス三国に対応することになる。また、モンゴルはルクセンブルグかあるいはスイスに対応することになる。 このような対応関係を考えれば、日本の今後採るべき外交政策も自ずと明らかになる。大英帝国=国際金融資本が欧州大陸の主要国を分裂・対立させて漁夫の利を得ると共に欧州大陸を統一する超大国の出現を防止してきた歴史を日本は学び、実行すべきなのだ。英国外交史を専門とする慶応大学法学部の細谷雄一助教授が若年ながら外務省が関連する雑誌「外交フォーラム」に寄稿するなど、日本の外交政策に関与しているのも納得できる。英国の大学院で地政学を研究している奥山真司氏も、同様の認識を持っていることだろう。 ただし、大英帝国=国際金融資本が自己の利益だけを追求して欧州で悲惨な大戦争や革命による大虐殺を盛大に実行してきたことは日本は見習っては成らないだろう。日本は可能な限り戦争のない平和な東アジアを目指すべきである。また、日本国民の国益だけを追求するのではなく、東アジア全体の利益、あるいは全世界の利益をも追求すべきだ。その点で私は江田島孔明氏の主張する「新日英同盟」には賛成しない。日本に必要なのは大英帝国=国際金融資本の歴史の知恵だけであり、同盟国としての英国ではない。 欧州外交史をそのまま東アジアに当てはめるのは賢明でないと思われる。まず、独仏両国は中世のフランク王国を起源としており、現在は欧州統合によりその起源に戻りつつある。両国は白人・キリスト教・アルファベットという点で共通点が非常に多い。一方の中国とロシアはいずれも中世のモンゴル帝国を起源の一つとしているが、人種も文字も宗教も全く異なっている。人口規模も約10倍の格差がある。独仏のような対等の統合は考えられないという点で、独仏関係と中露関係は大きく異なっている。従って、この均衡が揺らぐとすれば、一方が他方を圧倒し併合するという形式になるはずだ。 . . . 本文を読む
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