国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

9月18日の米国金利引き下げはドル暴落・米国経済破綻の引き金を引いたか?

2007年09月22日 | 米国
9月18日に米国のFRBは短期金利を5.25%から4.75%に0.5%引き下げた。株式市場ではこの金利引き下げが好感され、ダウ平均株価は300ドル以上という大幅な急騰を示し、その後も史上最高値に迫る高水準で堅調に推移している。しかし、米国の金融危機は全く収まっていないと思われる。米国の最大の貿易相手国であるカナダの通貨カナダドルに対する短期金利引き下げ後の下落がそれを示している。 米国にとってカナダは最も身近な外国である。そして、米国の約十分の一という人口規模・経済規模故に、米国より常に劣位にある国であると米国民は認識してきたと思われる。今回の米ドル下落によって、1米ドルが1カナダドルとほぼ等価値という現象が起きている。これはこの30年間存在しなかった現象であり、世界一の国米国という米国人の常識を打ち砕くことになるかもしれない。 カナダドルやユーロに対する米ドルの下落よりも更に注目すべき事態は、サウジアラビアの金利据え置きである。9月18日の米国の金利引き下げに対して、サウジアラビアは追随しなかった。米ドルに対する固定相場制を採ってきたサウジアラビアが近日中に固定相場制を離脱する可能性が高くなってきたのだ。これは中東全域でのドル離れを引き起こすだろう。 膨大な経常赤字を垂れ流すドルがこれまで国際基軸通貨の地位を保ってきたのは、石油ドル体制に加えて中国とアラブ産油国がドルに対して事実上固定相場を採ってきたこと、日本や中国が膨大な金額の米国国債・米国企業の社債などを買い支えてきたことによると思われる。しかし、イランやベネズエラに代表されるように米ドル以外での石油貿易決済を求める国が増えてきている。中国も膨大な対米貿易黒字を批判され、通貨切り上げを米国議会などから求められている。それに加えてサウジアラビアが米ドルへの固定相場制から離脱する姿勢を見せている。また、米国財務省の統計を見ると、日本や中国の米国国債保有額はこの一年間ほとんど増加していない。唯一イギリスの米国国債保有額だけが一年間で5倍弱と激増しているが、小国イギリスが超大国米国の経常赤字を永久に穴埋めし続けるのは不可能とも考えられる。いずれにしろ米国経済の破綻は避けられないだろう。 . . . 本文を読む
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