国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

シリア~北キプロス間航路開設の謎:トルコの外交的大勝利と、シリアが得た見返り

2007年09月25日 | トルコ系民族地域及びモンゴル
トルコ以外に国際的に承認する国が無く国際的に孤立が続いていた北キプロスとシリアとの間の定期航路が開設される。9月22日土曜日にシリアを訪れた北キプロスの使節団は北キプロスのパスポートでシリアに上陸することが出来たという。これは、北キプロス問題で国際的に孤立してきたトルコにとって外交的大勝利に他ならない。トルコ以外に、北キプロスのパスポートを承認する国が初めて出現したのだ。 しかし、シリアにとっては北キプロスとの定期航路開設はほとんどメリットがない。シリアは何故このような、自国にとってメリットがなくトルコにとってのみ大きなメリットのある計画を承認したのだろうか?? 外交交渉がギブアンドテイクであることを考えれば、トルコの悲願である北キプロスからの外国航路開設の見返りとして、シリアはトルコに何か大きな事を頼んでいる筈である。そして、その直前にイスラエルによるシリア空爆が行われている事を考えると、シリアは「イスラエルにトルコ領空を経由した特殊部隊潜入と核物質奪取を行わせ、自国の核武装を納得させる」という計画への協力をトルコに依頼したのではないかと想像される。 トルコとしては、米軍によるイラク北部クルド人地帯の半独立国化のために自国内のクルド人の反乱を押さえ込むのに苦労しており、イスラエルとシリアのもめ事に関わるのはリスクはあっても利益は全くない。しかも、それは隣国であるシリアやイランの核武装を意味するかもしれないのだ。トルコはシリアからの依頼に対して、大きな見返りを要求するのは当然とも考えられる。それがこの「シリアと北キプロスの間の航路開設」だったのではないかと想像する。 ただ、トルコのこの外交的快挙に対してEUが敗北を認めてトルコに譲歩することは考え難いようにも思われる。キプロスは依然として北キプロスとの統合を拒否しており、EUも本音では北キプロスのトルコ人をEU市民として認める意図はないと思われるからだ。つまり、トルコは「北キプロスの地位向上」をめぐる外交的戦闘には勝利したが、それはトルコの戦略的目標であるはずの「トルコのEU加盟、北キプロスのEU加盟」には繋がらないとも想像される。トルコ政府は一体どの様な考えでこの「航路開設」を実行したのだろうか?謎は深まるばかりである。 . . . 本文を読む
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