このゲームに賭けられたものの大きさを考え、フォルチュナ氏はすっかり沈着さを取り戻していた。マダム・ダルジュレに鋭い一瞥を投げ、彼女がどのような人間か判断した。このような女性の心をつかむためには、最初の一撃で頭がくらくらするようなショックを与えることが必要だ、と考えた。
「あなたに大変不幸な知らせを持って参ったのです、マダム」彼は述べ始めた。「貴女様にとり身近な大切な方が昨夜悲劇的な事故に見舞われ、今朝亡くなられたのです……」
この不吉な出だしもマダム・ダルジュレの心に響いた様子はなかった。
「誰のことを言っておられるのですか?」と彼女は冷ややかに尋ねた。
フォルチュナ氏は殊更に荘厳な様子を見せつけ、重々しい声で答えた。
「貴女の兄上、ド・シャルース伯爵です……」
彼女は立ち上がり、痙攣的に身体中を震わせた。
「レイモンが死んだ、ですって……」彼女は口の中で呟いた。
「遺憾ながら、そうなのでございます、マダム。貴女様が指定なさったオンブールの館に向かおうとしておられたときのことです」
これはフォルチュナ氏の口を衝いて出たまったくの出鱈目だったが、嘘とも言い切れなかった。それに、そう言えば彼が事情をよく知っている人間という印象を与えるという利点もあった。このしたたかな駆け引きがマダム・ダルジュレに気づかれなかったことは確かであった。彼女は椅子にぐったりと腰を下ろした。顔色は蠟よりも白くなっていた。
「どのように死んだのですか?」彼女は尋ねた。
「脳卒中の発作でございました」
「まぁ、なんてこと!」彼女は叫び、このとき真実に思い当たったようであった。「ああ、まぁ、どうしましょう!私の手紙が彼を殺してしまったんだわ!」
ここで彼女の気力が萎え、また目から涙が溢れた。それまでも散々苦しみ、泣き暮れていたというのに……。この光景にフォルチュナ氏が全く心を動かさなかったと言うのは行き過ぎであろう。彼は仕事以外では情にもろい男であった。しかし、かくも迅速に思い通りの結果を得られたという満足感が彼の同情心を鈍らせていた。なんとマダム・ダルジュレはすべてを告白したではないか! これは紛うことなき勝利だった。実はマダム・ダルジュレが何もかも否定し、最初の挨拶の言葉以外何も言ってくれないのではないか、と危惧していたからだ。確かに、彼の懐具合とド・シャルース伯爵の相続との間にはまだ様々な障害が横たわっていることは承知していたが、彼はそれらを乗り越えられるという希望を捨ててはいなかった。このような輝かしい勝利を収めた後とあっては。10.18