計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

夏の暑さとキャベツの卸売価格

2018年08月18日 | 経済・金融気象分野

 この夏の猛暑の影響で、野菜の価格が高騰しているようです。そこで、夏の気象条件と夏秋キャベツの価格の傾向について調べてみました。今回、キャベツの入荷数量と単価については、1984~2017年における東京都中央卸売市場入荷分の月別の集計値を使用しました。

 まずは、東京都中央卸売市場に入荷されるキャベツについて、産地別の比率を月別で表してみます。


 この表からは、季節ごとの主な産地が判ります。11~3月(冬キャベツ)は愛知県・千葉県・神奈川県、4~6月(春キャベツ)は千葉県・神奈川県、そして7~10月(夏秋キャベツ)は群馬県・北海道・岩手県が各々主な生産地となっています。

 続いて、キャベツの入荷数量と単価の平均的な月次変動をグラフに表してみます。これは、東京都中央卸売市場におけるキャベツの入荷数量と単価の平均的な動きを表したものです。1984~2017年の各月毎の平均値を求めてグラフ化しました。


 冬(1~4月)は単価が100円/kgと高めで推移しますが、その他の時期は概ね70~90円/kgで推移しています。また、入荷数量は春(3~5月)に18~19千tと一時的に増加しますが、その他の季節は14~16千tで緩やかに変動するようです。但し、これは平均的な動きです。

 もう一つ注目したいのは、数量の極大値が4月なのに対して、単価の極小値は6月に現れていることです。需給均衡の観点からみると、供給(数量)と価格は反比例の関係にある筈です。つまり、4月の数量増加の影響が、6月の価格下落につながっていると見ることができます。数量の増減の変動が2か月後の単価の変動に反映されると考えて良いものか、判断に迷います。

 続いて、夏秋キャベツの生産地の気候について検討しましょう。夏秋キャベツの主な生産地として群馬県に注目します。8~9月のキャベツの入荷量では75~76%のシェアを誇っています。特に嬬恋村がキャベツの主な生産地として有名です。

 さて、キャベツは冷涼な気候を好む一方、耐寒性にも優れています。このため、露地栽培の生育適温は15~20℃と言われています。嬬恋村の気象の変化は田代アメダスで観測されています。月別の平均気温(平年値)をグラフに表してみます。


 平均気温を見ると、6~9月がこの生育気温の範囲内となっています。標高も1230mと高いので、気温は余り上がらず、夏秋キャベツの栽培に適していると考えられます。


 気温に続いて降水量も見てみましょう。太平洋側の地域という事もあり、冬の降水量が少なく、夏から秋にかけての降水量が多い傾向が表れています。

 ここからは、7月の気象条件と8~9月の(卸売)単価の傾向を検討します。

 ここでは、気象条件を「気温と降水量の組合せ」として考えます。さらに、気温を「低温・平常・高温」、降水量を「少雨・平常・多雨」と各々3つのカテゴリーに分類し、3×3の計9種類のパターンに分けて考えます。

 その後、過去34年分のデータを基に、上記9種類のパターンに該当する年の8月または9月の単価の「平均値・最安値・最高値」を算出して、マトリクスの形に表します。

 なお、田代の7月の平年値は「平均気温:18.6℃、降水量:208.7mm」、また今年(2018年)7月の観測値は「平均気温:21.1℃、降水量:221.5mm」でした。


 7月の気温・降水量共に平年並み(平常)であれば、8月の卸売価格(単価・1kg当たり)も43~90円の範囲で変動・平均64円の水準にあると言えます。

 しかし、今年(2018年)は降水量は「平常」の範囲内となる一方、猛暑のため気温は「高温」の範囲内にあります。従って、1kg当たり60~100円の範囲で変動・平均75円の水準と、(平常時に比べて)2割ほど値上がりしやすい傾向にあります。


 同様に9月の単価の傾向も見てみましょう。

 7月の気温・降水量共に平年並み(平常)であれば、9月の卸売価格(単価・1kg当たり)も40~91円の範囲で変動・平均64円の水準にあると言えます。

 しかし、今年(2018年)は降水量は「平常」、気温は「高温」に該当するため、1kg当たり43~95円の範囲で変動・平均77円の水準と、(平常時に比べて)2割ほど値上がりしやすい傾向にあります。


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