アヴァターラ・神のまにまに

精神世界の研究試論です。テーマは、瞑想、冥想、人間の進化、七つの身体。このブログは、いかなる団体とも関係ありません。

道元-3-寝る間を惜しんで坐る

2023-11-07 06:19:05 | ジェイド・タブレット

◎ジェイド・タブレット-05-14

◎青春期の水平の道-13

 

天童如浄も眠る間も惜しんでひたすら只管打坐をすべきことを説いた。

 

〔正法眼蔵随聞記三〕から

「道元の師匠の如浄(中国浙江省の天童山に住す)は、夜は22時頃まで坐禅し、暁には、2時頃より起きて坐禅する。弟子たちもこの如浄長老とともに僧堂の内に坐するのである。彼は一夜もこれをゆるがせにしたことがない。その間に多くの衆僧は、眠りに陥る。如浄長老は、回って行って、眠っている僧を、あるいは拳を持って打ち、あるいは靴を脱いで打つ。なお、眠る時は、照堂に行って鐘を打ち、行者を呼び、ろうそくを灯しなどする。

そして直ぐに説いて言うには、「僧堂の内で眠って何になる。眠るくらいなら、なぜ出家して禅堂に入ったのだ。世間の帝王や役人を見ろ。誰が、たやすく生活できているのか。君は王道を治め、臣下は、忠節を尽くし、また庶民は田を開き、鍬を取っており、誰もたやすく世を過ごしている者などいない。

その世間を逃れて、禅堂に入り、居眠りをして何になる。生死事大、無常迅速(人生の問題は重大だが、死がやって来るのはあっと言う間だ)と、禅家でも教家(教理を主とした宗派)でも言われている。今夜か明朝、死んだり病気になったりするかもしれない。しばらくの間でも、仏法を修行せず、眠りこけて空しく時を過ごすことが、もっとも愚かなことである。

このような様なので、仏法は衰えて行くのである。各地で仏法の盛んな時代には、寺では皆坐禅をひたすらやっていた。昨今各地では、坐禅を勧めないので仏法は段々と衰退していく。

このような理屈でもって坐禅を勧めていたことを目の当たりにした。今の修行者も如浄の風を考えるべきである。」   

この話の、眠りも許さない只管打坐修行の厳しさとは、きっと厳しいだけのもの以外の効果も承知の上でやらせているに相違ない。

 

さらに〔正法眼蔵随聞記三〕から

「またある時、近仕の侍者たちが、如浄(道元の師匠)に言った。「僧堂の中の僧たちは、疲れて眠って、あるいは病気にかかり、消極的な気持ちも起こるかも知れない。これは坐禅の時間が長いからであろう。坐禅の時間を短くしたらどうか。」 

すると如浄は、大いに怒って言うには「それはいけない。道心のない者は、片時の間に、僧堂にいても眠るだろう。道心があり、修行の志がある者は、長ければ長いほど一層喜んで修行するはずだ。

私は若い時に、いろいろ各地の長老のところを回ったが、このようなやり方で、以前は眠る僧を、拳が欠けるかと思われるほど殴ったが、今は年取って力がなくなり、強くも打てないので、良い僧も出て来ない。各地の長老も、ゆるゆるに坐禅をやらせているために、仏法が衰微したのである。だから、ますます打つべきである。」とおっしゃった。」

 

現代では、このようなことをすれば、パワハラだとなじられるだろうが、宋代では当たり前にこれをやってきた。禅の祖師の中にはとにかく棒で殴るのもいる。それは眠らないためにだけとは限らないが。

そして、何をさておき只管打坐に打ち込んで眠らないためには、只管打坐の必要性と効果についての知的理解があれば納得して打ち込めるし、さらに深い深いモチベーションもなければならないと思う。

このことはまた、他宗派や他の冥想法に迷わないということでもある。

一般に他宗派の教学教理を並行して学び修行すれば迷うことの弊害があるものだから、その冥想法専一で修行することを求められる。

ただ、現代においては、どんな冥想でも二重の不確実性があることは承知しておくべきだろう。つまり、ある一定の冥想法では、ある決まった結果が出るのを大前提に考えてはいるが、まずその修行が成就するかどうかは保証できるものではないし、その上、結果がその修行方法で予期された結果になるものではないという二重の不確実性があるということ。

 

以上の話を総合すると、まずは只管打坐の時間が累積すればするほど大悟覚醒に近くなるという法則が隠れているように思われる。だが、今生の只管打坐の累積時間ということに限定すれば、累積すればするほど身心脱落しやすくなるのだろうが、今生で身心脱落できるかどうかはまた別のことであり、同様に年長の僧から先に身心脱落するわけでもないのだろうと思う。

またそうであるせいか、身心脱落の秘訣などというものが出回らない。改めて身心脱落した人の少なさとそのむずかしさが、垣間見える。

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