アヴァターラ・神のまにまに

精神世界の研究試論です。テーマは、瞑想、冥想、人間の進化、七つの身体。このブログは、いかなる団体とも関係ありません。

道元-4-身心脱落の前兆

2023-11-08 03:12:31 | ジェイド・タブレット

◎ジェイド・タブレット-05-15

◎青春期の水平の道-14

 

只管打坐は神秘主義は排するのだが、天童如浄は、大サービスで、身心脱落の三種の前兆を道元に教えてくれている。

宝慶記は、道元が師匠の天童如浄の言行を書きおいたもの。

それに身心脱落の前兆とおぼしきものがある。

 

如浄が道元に語るには、

「あなたは、これから先、必ず美しく妙なる香気で、世間に比べるものがない香りをかぐであろう。これは吉兆である。                              

あるいは坐禅している顔の前に、油のしたたり落ちようとするようなものがあるのも吉兆である。

もしくは、いろいろな触覚が起こることもまた吉兆である。

そのようなことが起きても、すぐに頭髪についた火を振り払う如く坐禅に励みなさい。」

 

こんな嬉しがらせてもらえるようなことを老師から言ってもらった後で、それに似たことが起きるとその神秘体験にこだわり、しばしば修行は先には進まなくなるもの。

これらの神秘体験は、身心脱落の発生に先立って必ず起きるものかどうかはわからないが、少なくとも天童如浄の経験や直観ではあることを教えてくれたものだと思う。

けれどもその扱いは、どんな素晴らしいあるいは妙な神秘体験でも、それに一切こだわりを持ってはいけないと戒めているのは流石である。

天童如浄は、魔境とそうでないものの区分を知らないはずがないので、この3例は身心脱落のプロセスにおける正統的な道標の可能性は否定できないが、一方で全く同じ事象の魔境があることもまた否定できないところはある。

 

さて油のようなものは、錬金術書の哲学者の薔薇園第8図で、天から降る露として西洋にも現れている。

直前の哲学者の薔薇園第7図では、墓に横たわった両性具有人から最後の個人が窮極である第8図に向かって上昇する。

直後の哲学者の薔薇園第9図では、既に窮極をきわめた個人が、墓に横たわった両性具有人へ向けて下降、帰還する。

大悟覚醒あるいは究極のサインとして第8図に天の露がしたたり落ちているのだ。

これをもって天童如浄が語る身心脱落の前兆としての油のようなもののしたたりは、戯言ではないことを知る。

 

また天の露は、古いタロット・カード(マルセイユ版)でも意識されている。天の露が登場するのは、大アルカナの最後の方の3枚で、月と太陽と審判である。

初めてタロットを見た時は何で雨が降っているのかと思いきや、天の露の由来を知っていれば、タロット・カードが異次元あるいは究極へのジャンプ台を暗示するツールとして使われていたことが、天の露が配置されていることでわかる。

太陽と月は両性具有のための二つのパーツ。そして審判こそ異次元への脱出シュートである。その次の世界(大アルカナ)は、アートマンの有の表象で、ニルヴァーナの愚者(大アルカナ)へとつながる。

コメント
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