◎はずさない占星術師の危うさ
ローマ帝国の初代皇帝アウグストゥス(紀元前63 - 紀元14、別名オクタヴィアヌス)は、占星術が大好きで信じてもいた。
ある日オクタヴィアヌスは、親友のアグリッパと共に有名占星術師のテオゲネスを訪問。テオゲネスは、先にアグリッパを占い、彼がカエサルの娘と結婚し幸福になると予言した。
これを横で聞いていたオクタヴィアヌスは、アグリッパより運命が劣ることを恐れてなかなか生年月日を明かさなかった。テオゲネスから再三「生年月日がわからないと占えない」と言われ、しぶしぶオクタヴィアヌスは生年月日を明かした。
するとテオゲネスは、惑星と星座の計算が終わるや否やオクタヴィアヌスにひれ伏して、彼を皇帝陛下と呼んだ。
オクタヴィアヌスはすっかりテオゲネスが気に入り、以来腹心として重用した。
二代皇帝ティベリウスは、先代に輪をかけた占星術好きだった。ティベリウスは。占星術にふける時は一人で絶壁の突端に立つ城の塔に閉じこもり、彼と話ができるのは無学文盲の屈強な解放奴隷だけだった。
ティベリウスは疑い深い性格で、自分のプライベートや秘め事を知った占星術師は生かしておけなかった。
ティベリウスが占星術の占断を聞く時は、いつもこの奴隷が占星術師を城に案内し、占断が終わって帰途、この奴隷が崖下の海に占星術師を突き落とすのが常だった。
トラシュロスも有名占星術師の一人だった。ある日ティベリウスに呼ばれて、彼の未来を的確に予言した。ティベリウスは『それでは自分の未来はどうなんだ』と問い返すと、トラシュロスは自分のホロスコープを書いているうちに恐怖を抑えかね、ティベリウスに命乞いをした。幸いこれがティベリウスに受け入れられ、トラシュロスは、ローマの市民権を与えられた唯一の占星術師となった。トラシュロスの子もネロ帝の占星術師として活躍し巨富を得たが、これらは例外であった。
ティベリウスは殺した占星術師も多かったが、国外追放した占星術師も多かった。
逆に当時は、占星術が当たることで死を免れれば、その占星術師が一流の証拠となって、大いに隆盛となった。
このように古代ローマでは、占星術師は危険な職業の代表格だったが、古代中国で敵国敵陣の様子を軍の先頭で霊感占いする霊能力者もまた危険な職業だった。
権門の周辺に存在するスピリチュアル関係者はいつの時代も危うい。また予言をはずしてOKな占いは本来誰も相手にはしないもの。出口王仁三郎のように絶対にはずさない予言者はたまにいるが、そういう人物は求められても語るかどうかは別である。