昨年9月、新潟市東区の無人餃子販売店で、32個入りの冷凍餃子3セットとタレ3セットの計3600円分を盗んだとして、同市東区に住む48歳会社員の男が逮捕されたというニュースがありました。
無人販売店での窃盗事件としては、他にも今年6月には埼玉県で男女2人が無人販売店の餃子を盗んだとして逮捕されています。
更に、茨城県内の無人ラーメン販売所でも男が窃盗犯で逮捕されています。
最近、無人販売店が広がりを見せていますが、代金を支払わずに品物を持ち帰る窃盗犯が増えているようです。
しかし、防犯対策としては、防犯カメラの設置、料金箱も持ち去られないように工夫されているだけであり、それ以外の万引きに対する対策は施されていない店舗が多いということです。
評論家の間では、基本的に「性善説に立って、ある程度の万引きを覚悟して営業しているのではないか」とも言われていますが、無人販売所で代金を払わずに商品を持ち帰ってしまった場合、窃盗罪が成立しますので、軽い気持ちで窃盗行為をしないようにお気を付けください。
ところで、「性善説」「性悪説」の言葉は今から約2300年前の中国で生まれた言葉ですが、今日はこの言葉を主張した孟子と荀子の説を調べました。
「性善説」
性善説とは、広辞苑によると、人間の本性は善であり、仁・義を先天的に具有すると考え、それに基づく道徳による政治を主張した孟子の説。と説明しています。
簡単に言えば、「人は生まれながらにして善である」という思想です。
「孟子の説」
孟子はあらゆる人には善のきざしが生まれつき備わっていると考えました。
その善のきざしとは惻隠(そくいん)、羞悪(しゅうお)、辞譲(じじょう)、是非(ぜひ)の四つの心です。
・惻隠とは・・・他人の苦しみを見過ごせない憐れみの心。
・羞悪とは・・・不正を恥じる心。
・辞譲とは・・・謙譲の心。
・是非とは・・・善悪を分別する心
です。
孟子は人間に備わっているこうした善のきざしを育て発展させていけば、「仁・義・礼・智」という四つの徳を備えた聖人君子になることができると考えました。
孟子が人には生まれながらに善のきざしがあると考えたのは、人の道徳性が天に由来すると考えたからでした。
そして、現実社会にあふれる悪については、孟子は、悪とは人の心の中ではなく人の外に存在し、この影響を受けることで善のきざしが曇り、いろいろな問題が生まれてくると考えました。
・左が孟子で、右が荀子です。
「性悪説」
性悪説とは、広辞苑によれば、荀子(じゅんし)の性説。人間の本性は悪であるとして、礼法による秩序維持を重んじた。孟子の性善説に対立。と説明しています。
簡単に言えば、「人は生まれながらにして悪である」という、性善説とは真逆の思想です。
唱えたのは荀子という儒学者であり思想家で、現在は「諸子百家」という中国思想家の1人として数えられています。
性善説との大きな違いは、生まれたときの人間の本性にあります。
性善説が、生まれながら「いい人」であると唱えたのに対して、性悪説では生まれた時、人は「悪」であると言っているのです。
「荀子の説」
孟子より少し遅れて登場した荀子は、孟子の「性善説」を批判し、人間の天性は悪だ、と言っています。
・人間というのは生まれながらに自分の得になることを好み、だから争いが生まれる。
・人間というのは生まれながらについ他人を憎んでしまうので人を傷つける。
・人間というのは生まれながらに感覚的な満足を求めるから、逸楽にふけるようになる。
このように人はおのれの持って生まれた天性に流されれば、どうしても他者と争うようになる。
だから人為な矯正が必要なのだ、と荀子は考えました。
「性の意味」
ここで言う「性」とは、性別のことではなく人間の本質・本性という意味になります。
つまり、人は、生まれたときにはいい人であるという考え方が、性善説の本来の意味なのです。性別で善悪が変わるわけではありません。
「結論」
性善説と性悪説は思想の問題であり、この問題に関する個人的意見には、「どちらか一方が正しい」ものではありません。
人の心は複雑で様々な面を持っており、敢えて言えば「どちらも正しい」のかも知れません。
しかし、どちらの説であっても、無人販売店の防犯対策はしっかりしておかないと窃盗はなくならないような気がします。