長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

愛のかたち、B級のかたち 『スペースバンパイア』

2010年08月10日 02時39分30秒 | ホラー映画関係
 みなさんこんばんは。突然ですが、愛ってなんなんでしょう?
 しょっぱなからこんな切り出し方をするお前の精神構造こそなんなんでしょう?と思われる方もいらっしゃるでしょうが、これは重大な問題だと思います。それこそ人類が初めて文字を発明した時代から、ひょっとしたらもっと前に絵を描くことをおぼえた時代から、無数の偉大なる先人たちが、未来の子孫に伝えるためにさまざまな愛に関する考察を遺してきたと思います。しかし、「愛とは何か」とは「生きるとは何か」ということ。ある人が一生をかけて探し求めたどりついた結論を理解するためには、それを聞く人も自分の一生をひきあいに出して取り組む必要があるはずです。しかし、ある人にとっての答えが自分にとっての答えであるとは限らない……結局、答えなんてないのかもしれない。でもあるのなら見つけてみたい! いやぁ、愛の問題とはなんとむずかしく、そして面白いものなのでしょう。
 今日はちょっと、そのあたりについて考えさせられる出来事がありましたもので、こんなこと話題にしてみました。別に私が失恋したわけじゃないすよ! どうでもいいですか。
 愛するということで最も重要なことは、「相手がいる」ということだと思います。どんなに自分が相手を愛そうとしても、相手のことを考えていない一方的なやり方なのだとしたら、それは拒絶されても当然のものです。つまりそれは愛ではないでしょう。となると、愛とは自分一人だけでは成立しないもの、ということになります。ただし逆に言えば、心さえ通い合っているのであれば、二人のあいだにどんなへだたりがあるのであっても、愛はなんなく成立するはずです。身分、年齢、性別、敵味方、人と動物、人とモノ……なんでもどんと来いのはずです。少なくとも私そうだいはそう信じたい。
 ここに、ある愛のかたちをえがいた超名作映画があります。その名は『スペースバンパイア』(トビー=フーパー監督・1985年アメリカ作品)!!
 スペースバンパイアって……えもいわれぬB級の香りにくらくらしてしまいますが、はっきり言って最高のタイトルセンスです。だってわかりやすいんだもの。どうやらこのタイトルは日本公開向けだけのものらしく、映画の原題は『LIFEFORCE』です。「生きる力」。うーんこっちも直球勝負。でも、スペースバンパイアって考えた日本版の方が好きですね。「この映画はB級です」という情報もタイトルで表現してるから。
 ストーリーはまさにSFの王道。地球に大接近したハレー彗星の探査を命じられたスペースシャトルチームが、彗星とともに移動していた謎の宇宙船を発見します。チームは、宇宙船の中で冬眠状態になっていた地球人の白人そっくりの三人の宇宙人を回収しますが、実はこの宇宙人は、地球人そっくりの姿に化けて地球に降り立ち、ありとあらゆる生物の生命力を奪い取って自分達のエネルギーにしようとする「宇宙の吸血鬼」なのでした……
 素晴らしい。かなりわかりやすいです。でも、だいたい似たような宇宙人の侵略ものSFはいくらでもあるはず。まさにその通りなのですが、『スペースバンパイア』がズ抜けているのは、このカレーライスなみの定番メニューに「愛」という隠し味(全然隠してませんが)を入れているところなんです。宇宙人の侵略に対抗する地球人カップルの愛ではありません。侵略する宇宙人と、侵略される地球人との愛!
 三人の中で美しい女性に変身した宇宙人(演・マチルダ=メイ、基本的に全裸)は、地球の生物全てのエネルギーを吸収しようとしますが、冬眠中の自分を最初に発見したスペースシャトルの乗組員カールセン大佐(演・スティーブ=レイルズバック、外見は普通のおじさん)だけには特別な意思を送り、新たな生命を生み出すための相手として宇宙に連れて行こうとします。正直な話、カールセン大佐がうらやましくなるほど、この宇宙人マチルダさんは堂々たる美人です。通常使われる意味とは違いますが、まごうことなきおっぱい星人です。
 宇宙人側の計画は着々と進み、宇宙人三人組が暴れ回ったイギリスは死の嵐。おまけに生命を奪われた人間は自分もバンパイアになってしまい他の人を襲い出すしまつ。マチルダさんはカールセンに「私たちは出会う運命だった。一緒に宇宙船に行きましょう」と語りかけますが、人類を見捨てることのできなかったカールセンは、とってつけたようにお話の途中で登場した宇宙人退治の聖剣で自分ごとマチルダをつらぬき(これが二人とも全裸になって抱擁している最中になんだから徹底してます)、一人の尊い犠牲によって宇宙人の恐ろしい侵略計画は失敗に終わったのでした。イギリス一国壊滅してますが。
 まぁとにかくすごい力業! 当時最新のSFXもすごいし、やたらかっちょいいヘンリー=マンシーニの主題曲も無駄に荘厳で最高です。
 でも私が注目したいのは、やはりカールセンの裏切りを受けた時のマチルダさんの表情の演技です。その時に美しい顔に浮かんだのは、「なぜ……?」という濃い困惑の色でした。つまり、その星の生命をほとんど奪い取るという鬼の所行をしていながら、マチルダさんはその生命の一つであるはずのカールセンが自分に復讐するかも知れない、という可能性は少しも考えていなかったのです。それだけカールセンを愛していた! 土壇場でこのマチルダさんの愛は受け入れられなかったのか? しかし、マチルダさんと刺しちがえるというカールセンの行為は愛でしょう! マチルダさんの望んだ形とは違いますが、カールセンも運命を共にすることを選択したわけです。愛って、ふしぎ~!
 『スペースバンパイア』は時代を超えた本物の傑作です。B級B級とは言ってきましたが、この雰囲気がこの作品の本質をおとしめることには全然なりません。観たことのない方はぜひとも一回はごらんになってください! B級だからといって敬遠したら大損です、ホントに!
 余談ですが、映画の中でマチルダ=メイふんする宇宙人の名前は出てきません。エンドロールの配役表ではマチルダさんの役名は「Space Girl」でした。スペースガール! 最後の最後まで一本筋の通った名作です。 
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