すっかり日が短かくなっています。
取材撮影日程なども、夕方4時はほとんどアウト、という季節。
日本は南北に長い国土で、日の長さにも微妙に違いがあると思いますが
見学していた北海道下川町では、
札幌に比較しても、やや日の短さを感じておりました。
しかしその分、日が落ちる時間の情景は美しさが引き立つように思う。
家は、どんな時間もそこに住む人とともにあり
どんな時間にも、そこに住む人の暮らしよう、人となりを表現する。
写真のような夕景、薄暮の瞬間にも、家の中の雰囲気が見えてくる。
北国では、こういう季節の空気感が独特で
希薄な人口密度にまばらに点在する家々の表情こそが
街並みに直結する。
この下川町では年間に新築されるのは4~5棟前後とか。
そのなかで見学した建築家が関与する家づくりプロジェクト
「森とイエ」システムで建てられる住宅が
昨年からの2年間ですでに5棟に上っているという。
お話を聞いていると、ユーザーのみなさんは想像以上に自然に
建築家との家づくりを肯定的にとらえているということを実感します。
もちろん断熱や気密といった基本的な住宅性能については
北海道のこうした建築家たちは基本的な理解があり、
その技術的な確かさは信頼するに足りている。
その上で、やはりその建てられる住宅が、どのような存在感を持って
この地域の景観を形作っていくのかについて
ひとりひとりのユーザーに責任感のようなものが感じられる家が建てられている。
もちろんそれは、個人としての暮らしようを十全に満たした結果として
ごく自然に実現した結果営為なのだけれど、
そこにある社会背的価値観を持った作り手の目が行き届けば、
すばらしい景観ということにも結果するということなのだと思う。
この「森とイエ」プロジェクトでは、外観デザインからインテリアに至るまで
あるデザインコードが建築家とプロデューサーとで定められている。
このような家が地域に増えていくことで
いわば、良いものが自然と良い、という地域の価値観を醸成する可能性がある。
建築家たちの責任も重いと思うし、
またごく普通の建て主さんたちの果たしている役割も大きいと思う。
よく「街並み」ということが語られるけれど、
伝統的な地域景観に繋がったものは、すべてその地域において普遍的であろうと
作り手と住まい手の良心というか、
「その地域で暮らす誰もが納得できる」機能性を最低限満たすことを実現すべく
合理性を持ったデザインに収斂していった結果なのだろうと思う。
それが歳月を経て、風格にまで高まって、
「地域らしい」デザインとして認知されていったのだと思う。
ぜひこの下川でのチャレンジが、大きな広がりになっていくことを願います。