写真はきのうの続きの姫路林田・三木家住宅です。
先日ご紹介した福崎三木家と同様の大庄屋住宅で、塀に囲まれた広大な屋敷。
千石規模の農業生産物集積機能を持っていて
米などの検見を行う広大な空間が屋敷地を占めています。
この建物はその奥にある「主屋」。
建物の横架材、梁の機能は、柱の連続を受け、
それらに粘り強さ、連続性を与える力学的機能なのでしょう。
粘り強さという必要機能から、北側傾斜面の「根曲がり」材が、
その柔軟性で評価が高いのだろうと思います。
地震に対しての構造耐久性がより高くなるとされる。
しかしそういった材は、北側傾斜面でしかも一定年数の経過した材で、
となるとなかなかに希少で、さらに建築予定地からなるべく近くで伐採し
建築現場まで運び込む必要がある。現代とは違って輸送コスト割合が大きかった。
また戦国期は常に人為的な火事、戦災での焼失が繰り返され、
こういった材は、大変枯渇していたとされている。
いまでこそ日本は森林が使われずに放置された結果、緑豊かで、
国内資源を使うより海外資源を買う方が安いけれど、戦国から江戸初期には
日本の山林資源は相当枯渇し、見る限りハゲ山状態だったとされる。
バイオマス資源争奪はそれこそ命がけだっただろうと思います。
京都町衆が戦国期に北山に杉を植林して森林資源を復興させたのが
「北山杉」ブランドの創始だという。利休さんはこの植林プロセスで発生する
「間伐材」の有効利用を考えそれを茶室として活用し芸術にまで高めた。
・・・というような条件を考えていくと、この建物のようにふんだんに
こうした材がそろえられ構造をつくっているのは、かなり稀有。
インテリア空間として鑑賞すると、まことに粗放な豪快感が場を支配する。
しかも杉のような針葉樹ではなく、より強度の高い広葉樹種。
ただただ立ち止まって、上を見上げ続けざるを得ない。
「ほ〜、すごいですね〜」であります。
一本一本の材の存在感がすばらしく、土間空間全体が力感豊かに表現される。
後は単純に柱を補強するように土塗り壁を作り、土間を丹念に作れば、
千年でも耐えそうな、豪放な空間が仕上がっていく。
新材の時にはまだ人肌のような白木だったかもしれませんが、
経年するなかで、煙に燻されて黒々と艶がかかっていく。
まさに自然な時間経過が、堂々たる化粧をほどこしていく。
こういった根曲がり材の特性をそれぞれに良く把握して、
それぞれに適材適所を考えて活躍の場を与えているように感じられる
この建物の構造設計者、大工棟梁の目利きが静かに伝わってきます。
やっぱりこういう素材の大迫力には、
人知を越えて自然に繋がっていくような安心感がある。
この空気感に襲われ、いつまでも場を去りがたい気分に浸っておりました。
う〜〜ん、すごい。