三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

ノスタルチックなくらしデザイン

2007年12月03日 07時10分27秒 | 住宅取材&ウラ話

写真は内地(北海道や沖縄から本土を呼ぶ言い方)で、
冬場の暖房方式として伝統的だった「いろり火」。
日中の気温が10度前後くらいのレベルであれば、その時間には
これくらいの暖房方式でも、と思える感じはする。

いま、日本の住宅は既存大手ハウスメーカーの後退、
新興ローコストビルダーの激しいつばぜり合い、
そしてその谷間で、工務店による注文住宅の不振、迷いが見られると思います。
基本的には工務店の家づくりは高断熱高気密の性能向上で
地域の中での信頼を勝ち取っていく、という方向だろうと思うのですが、
いわゆるデザイン的に、伝統的なくらしデザインに過度に偏った
そういう方向で建て主さんをナビゲートしよう、という動きもありますね。
極端な事例では、現在建てられるモデルハウスで
古民家と思われるような建て方をしているようなケースもあります。
たとえばこのような写真の雰囲気を、現代のユーザーに勧めているような動き。
もっと、すごいなぁと思えるのは、
最近の住宅雑誌で、若い夫婦と想定されるモデルさんの
暮らし方を描写するような「事例写真」を見せることで、
伝統的シンプルライフを暮らし提案しているようなケースもある。
こういうのって、ほとんど住宅性能なんて顧慮しない、
一種のイメージ戦略だけで、住宅選びさせているようでちょっと疑問。

考えてみれば、大手ハウスメーカーが大きく業績を伸ばした時代っていうのは
日本全国均一なモダンデザインを丸呑みした生活スタイルを
ばらまいてきた流れだったような気もするので、
そういうものへのアンチテーゼとして、伝統的素材や質感を
一方で大いにアピールするという傾向が出てきていたというのも事実。
そういう部分をもっと進めたような動きだと思いますが、
やはりちょっと、やり過ぎのような気がします。

もちろん、こういう風合いの暮らし方の独特の心地よさはあった。
そういうものは強くノスタルジーを揺さぶられるものではあるけれど、
技術も革新され、現代的快適性も体感しているユーザーというものも考えれば、
住宅供給側が、こういうくらしデザインを推奨するというのは
やはり同意できないなぁと思います。
こういう暮らし方に還れ、というのはそれは不可能でしょう。
昔の暮らしように、思いをはせることは悪くはないけれど、
そういった暮らしが持っていた居心地の本質を考えて、
「現代的にくらしデザインする」ことが求められているのだと思います。
やはりそのためには、住宅内部の温熱環境をコントロールできる技術が
地域の工務店には、求められるのではないかと思います。
こういう暮らし方のエッセンスを理解して、なお、現代的快適性を犠牲にしない
そういう家づくり技術をこそ、ユーザーは期待しているのではないでしょうか。
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