ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

パリの小鳥売り

2019-01-07 22:23:12 | 読書
ロベール・ブラジヤック『パリの小鳥売り』





 表紙のイラストが醸し出す、ちょっと古くてお洒落な雰囲気は、1930年代のパリが舞台の小説とわかると、納得する。

 でも読んでみると、思っていたようなお洒落な街は描かれてはいない。

 むしろ貧しい人の姿が目立つ、煤けたイメージ。

 小鳥売りとは、天秤棒で鳥かごをかついで公園にやってくる老人のこと。

 彼が知り合う、女子大生や、食料品店の女店主、スラムに住む少年らのことが語られていく。

 温かい空気が大半をしめるのだが、ときどき冷たくなることもあって、共感させるのを拒んでいるようだ。

 その中で、恋がかなわなかった男子大学生の思いは、真っすぐにぶつかってくる。

 寂しさと、パリの風景とのコントラストが美しい。


 装画は牛尾篤氏、装丁は矢萩多聞氏。(2019)


コメント
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