ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

英国諜報員アシェンデン

2019-01-09 18:29:27 | 読書
サマセット・モーム『英国諜報員アシェンデン』




 新潮文庫のスター・クラシックスの1冊。

 帯についているロゴが、あえて古臭く作っているのがいい。

 これを見ていると、ずっとずっと昔に書かれたものが、いまだに読み継がれているのは、驚くべきことなのだと気づかされる。


 モームは、人の描写が素晴らしくて、残りの人生、モームだけを読んで過ごしていたいくらい好きな作家。


 そんなモームのスパイを扱った小説。

 組織の一部となり、全体がわからないまま、与えられた任務だけをこなす。

 だから、そもそもこれはどんな活動なのか不明だし、その後どうなったのかも伝わってこない。

 それが想像力をかきたて、本当のスパイの話を読んでいるような気にもなる。

 はじまりと終わりの欠けた不完全なストーリーのようだが、人物を語る面白さだけで、十分楽しめる。


 何年か過ぎ、再読すると、前回気にもとめなかった細かい描写を見つけ、新しい小説を読んでいるような感覚になるかもしれない。

 まるで、コンテを重ねて徐々に細部が表れる素描を見ているように。(2017)