ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

サンカの民を追って

2019-01-30 18:53:00 | 読書
『サンカの民を追って』





 十代の青年が、無計画の放浪の中で出会った人たちの話。

 小栗風葉、明治41年の小説「世間師」。

 青年がたどり着いた煤けた旅館は、六畳二間に10人近くが雑魚寝する悪臭漂う空間。

 垢で汚れ、じめじめしたぼろ布団にはシラミがたかる。

 しかしそんな宿代さえ払うことができない青年は、日銭を稼ぎながら旅をする男の世話になるのだったが。


 『サンカの民を追って』(河出文庫)に収められた一編。

 サンカ小説を集めた一冊だが、表紙は小説というよりノンフィクションの雰囲気。

 隣にいたのに実態を知らない集団となれば興味がわく。

 何冊か本を読めば、実像らしきものは、なんとなく見えてくるものの、それでもサンカとは一体何だったのか? という疑問は漂い続ける。

 そんな隙間にサンカ小説は入ってくる。


 「世間師」をサンカ小説集に入れることが、ふさわしいのかわからない。でも、ここで読めてよかった。

 カバーデザインは山元伸子氏。(2015)