ポール・オースター『インヴィジブル』
カバーの写真は、よく見ると不思議だ。
多重露光のように、いくつかの像が重なって見える。
室内の鏡に映る像と、ガラス越しに見える室外の光景と、室内に置かれた物とが、一緒くたになっているのだ。
どれが実像で、どれが虚像なのか。そんなふうに見える。
小説も似たような構成。
実像だと思って読んでいたら、シェード越しの室外だったり、鏡に映ったものだったり。
そもそも、室内だと思っていた場所が、実は荒涼とした野原だった。そのくらい、足元がおぼつかない感覚を味わう。
そんな仕掛けも含め、この本を読む時間は楽しい。
勝手な感じ方だが、登場する人物が、いつもポール・オースター自身のように思えてしまう。
悩み、戸惑い、決断する、そのすべてが著者が過去に経験してきたことだと。
作り物ではない、そんな肌に密着する感覚に共感するのだろう。
デザインは新潮社装幀室。(2019)
カバーの写真は、よく見ると不思議だ。
多重露光のように、いくつかの像が重なって見える。
室内の鏡に映る像と、ガラス越しに見える室外の光景と、室内に置かれた物とが、一緒くたになっているのだ。
どれが実像で、どれが虚像なのか。そんなふうに見える。
小説も似たような構成。
実像だと思って読んでいたら、シェード越しの室外だったり、鏡に映ったものだったり。
そもそも、室内だと思っていた場所が、実は荒涼とした野原だった。そのくらい、足元がおぼつかない感覚を味わう。
そんな仕掛けも含め、この本を読む時間は楽しい。
勝手な感じ方だが、登場する人物が、いつもポール・オースター自身のように思えてしまう。
悩み、戸惑い、決断する、そのすべてが著者が過去に経験してきたことだと。
作り物ではない、そんな肌に密着する感覚に共感するのだろう。
デザインは新潮社装幀室。(2019)