クリスティーナ・スウィーニー=ビアード『男たちを知らない女』
帯の文言を見て、パンデミックの話はもう読まなくてもいいかと思ったのは、あまりに長いコロナ禍に飽きたためだろう。
いま第7波が始まっている。
6つの波を乗り切った体験は、感染症の恐さを薄めてしまった。
この小説の伝染病は、男性の9割を死なせてしまうのに、女性は罹患しない。
カバーイラストの柔らかさと、タイトル文字の繊細な作りは、女性ばかりになった世界を彷彿とさせる。
複数の女性の視点から語られるのは、夫、息子があっけなく亡くなっていく異常な状況。
心の均衡が保てず、深い悲しみから抜け出すことができない人、必死にワクチンの開発をする人、病気に免疫のあるDV夫に死んでほしいと願う人、病気の発生源を調べる人。
ひとつの世界が終わり、少しずつ新しい形へと変わっていく姿を、細かく丁寧に描いていく。
『男たちを知らない女』というタイトルは、新しいタイプの女性を示している。
本当の物語はこれから始まるのだと思いながら読んでいたら、500ページを超えて終わってしまった。
続きがあるのだろうか。
でも原題は『THE END OF MEN』。男がいなくなって終わりなのだ。
男の存在感が薄く、ちょっと寂しい。
装画はmieze、装丁は早川書房デザイン室。(2022)
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