ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

男たちを知らない女

2022-07-18 10:28:54 | 読書
 クリスティーナ・スウィーニー=ビアード『男たちを知らない女』



 帯の文言を見て、パンデミックの話はもう読まなくてもいいかと思ったのは、あまりに長いコロナ禍に飽きたためだろう。

 いま第7波が始まっている。

 6つの波を乗り切った体験は、感染症の恐さを薄めてしまった。

 
 この小説の伝染病は、男性の9割を死なせてしまうのに、女性は罹患しない。

 カバーイラストの柔らかさと、タイトル文字の繊細な作りは、女性ばかりになった世界を彷彿とさせる。


 複数の女性の視点から語られるのは、夫、息子があっけなく亡くなっていく異常な状況。

 心の均衡が保てず、深い悲しみから抜け出すことができない人、必死にワクチンの開発をする人、病気に免疫のあるDV夫に死んでほしいと願う人、病気の発生源を調べる人。

 ひとつの世界が終わり、少しずつ新しい形へと変わっていく姿を、細かく丁寧に描いていく。


 『男たちを知らない女』というタイトルは、新しいタイプの女性を示している。
 
 本当の物語はこれから始まるのだと思いながら読んでいたら、500ページを超えて終わってしまった。

 続きがあるのだろうか。

 でも原題は『THE END OF MEN』。男がいなくなって終わりなのだ。

 男の存在感が薄く、ちょっと寂しい。


 装画はmieze、装丁は早川書房デザイン室。(2022)



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