フランシス・ハーディング『嘘の木』
荒ぶる海を外輪船が進む。
近づいてくる島を見て、14歳の少女は追放された者が住むところだと思う。
寡黙で厳しい牧師の父、物おじしない美しい母、幼い弟と伯父の5人は、ロンドンから追われるようにして島に移住する。
博物学者でもある父は、ロンドンでスキャンダルに見舞われたのだが、少女に詳しいことは知らされない。
彼女は好奇心旺盛で知識欲が強いが、時代は19世紀。
女は男より劣るとされていて、娘が男のように賢いことはないと面と向かって父に言われ、少女はショックを受ける。
経験したことのない味わいの物語だ。
嘘を聞くと成長する「嘘の木」という秘密の存在が、ファンタジーの要素を含んでいながら、どうしてか嘘のように思えない。
賢い少女は、物を知らない振りをしながら、嘘の木を使って父の死の謎を解明しようと奔走する。
少女の成長物語でもある。
装画は牧野千穂氏、装丁は大野リサ氏。(2022)
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