シャルロッテ・リンク『誘拐犯』
どうしてケイトは美人ではないのか。
スコットランド・ヤードの巡査部長ケイト。
男たちの興味を引かない女性。
どうして著者は、ケイトの外見に華を与えなかったのか。
前作『裏切り』で、本人も気づいていない刑事としての隠れた才能の片鱗を見せたケイト。
今作では、少しは逞しくなった姿で登場するのかと期待すると、相変わらず自信がなさそうだ。
彼女は、亡き父の家を処分するため一時的に地元に戻ってきた。
そのとき泊まった宿の娘が行方不明になり、ケイトは母親に捜査を頼まれる。
管轄外の捜査にケイトは渋るが、記者と身分を偽って独自に調べ始める。
地元スカボローでは、以前にも少女の失踪事件があったばかりだった。
女性を外見でしか判断しない男ばかりが登場するなか、ケイトに恋人ができる。
ナイスガイのように描かれているけれど、なんとなく胡散臭い感じがつきまとってしまうのは、この小説がミステリーだからだろう。
登場人物はすべて疑わしい。
ケイトが美人だったら、簡単に恋人ができる展開に違和感は生じず、ナイスガイはぼくにあらぬ疑いはかけられずにすんだかもしれない。
事件は意外な展開になりながら、やっぱりそうかという部分も。
装丁は東京創元社装幀室。(2023)
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