ロビンソン本を読む

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この道の先に、いつもの赤毛

2023-10-20 17:14:11 | 読書
 アン・タイラー『この道の先に、いつもの赤毛』



 本の帯を外し、カバーも取る。

 カバーの両端を持って机の上に広げてみると、袖まで含めた横長の一枚の絵が表れる。

 まるで絵本のような温かい絵には、マイカの暮らすアパートと、彼が仕事に使う車が描かれている。

 黄色く染まった街路樹の葉と、建物の赤いレンガのコントラストが美しい。

 ボルティモアはこんな場所なのかと、行ってみたくなる。


 40歳を越えた一人暮らしの男マイカの描写を読むと、著者はこの男を気に入っていないように感じる。

 人付き合いが少なく、決まりきった単調な生活、いつも変わらない服装。

 人生とは、などと考えることはあるだろうかと。

 さらに半地下の住居については、「住んで楽しいこともなさそうだ」と書く。


 しかし、読み進めると、著者はこの男を嫌っているわけではないとわかってくる。

 こんな男だけど、いやこんな男だからこそ、著者アン・タイラーは愛しているに違いない。

 一方、女性に対してはかなり厳しい目を向けている。


 マイカは丁寧に仕事をし、決められた日にゴミをきちんと出す。

 突然現れた家出少年を家に招き、コーヒーを淹れてあげる。

 なんでもない日常と、ちょっと変わった出来事。

 それなりに満足な生活。

 ただ、ぽっかり開いてしまった心の穴は、一人では埋められないのだった。


 装画はカシワイ氏、装丁は田中久子氏。(2023)




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