安全保障で迫られる乏しい3択のリセットが日本の起点に
柳澤協二(元内閣官房副長官補)
柳澤協二氏(C)日刊ゲンダイ
元号が変わったからといって、何かがリセットされるわけではない。世界は日本の都合で動いているわけではない。意味があるとすれば、天皇の代替わりに象徴される世代交代によって、経験に裏打ちされた国民意識が変化することだ。昭和は戦争と戦後復興を通じて、戦争はごめんだ、みんなで働いて豊かになるという国民意識を育んだ。平成は、戦争世代の退場と、働いても豊かになれない世代を生み出した。戦争への拒絶感が薄れ、社会が分断される時代となった。戦争の要因は、富と名誉と恐怖といわれている。富の不公正、人間の尊厳という名誉の喪失が、他者を排除し争いを生み出すもとになっている。トランプ大統領が掲げるアメリカ第一主義のように、富も名誉も自国で独占し、武力で恐怖を与えて強制する戦争要因のデパートのような政治がまかり通る時代である。
日本の周囲を見れば、中国の台頭によってアメリカの優位が揺らいでいる。日中で見れば、中国は、政治・経済・軍事で今や完全に日本を凌駕している。日本の中に、中国への警戒感が生まれるのは当然だ。だが、事の本質は、米中覇権の行方だ。昭和の時代には、最強のアメリカについていればよかった。日本の課題は、アメリカと折り合いをつけることだった。平成の時代には、米中の争いが明らかとなったが、その決着の行方が分からなかった。今や中国がアメリカに比肩する日はそう遠くない。その中国に対抗するには、アメリカに頼らざるを得ない。だが、アメリカは、日本を無視して折り合いをつけてしまうかもしれない。そこで、日本は、見捨てられる恐怖と巻き込まれる恐怖という同盟のジレンマにさらされる中で、アメリカ製の武器を買い、安保法によってアメリカとの軍事的一体化に舵を切っている。力に頼る安全保障では、際限のない軍拡競争と、アメリカ追随以外の選択肢はない。アメリカとの折り合いをつける発想はなく、まして中国との折り合いをつける余地もない。平成の時代には、勝利の展望がない対テロ戦争への協力のためインド洋やイラクへの自衛隊派遣が延々続く中で、「同盟疲れ」といわれるアパシーが出てきた。令和の時代にも、やがて「抑止力疲れ」という状況が生まれてくるだろう。それはひとえに、問題解決の展望が描けない中でがむしゃらに軍拡を進めることから生まれる現象だ。安全保障とは、国民共有の国家像を実現するためのレシピに他ならない。変わりゆく世界の中で、アメリカにつくか、中国に降るか、核を持った大国になるかという、乏しい3択をリセットし、核を持たず、アメリカとも中国とも折り合いをつける生き方を考え出したときに、令和は新たな日本の起点となるだろう。
安倍9条改憲NO!3000万人署名
こつこつ全戸訪問
改憲派の人も創価学会員も協力
新潟・糸魚川
新潟県で、安倍政権による9条改憲に反対する「3000万人署名」の推進組織が各自治体や地域につくられ、世論と共同を広げています。糸魚川市では約2年間、地域の全戸訪問を継続して実施。署名数は、戦争法(安保法制)廃止を求める「2000万人署名」で集めた5600人を100人近く上回りました。対話を積み重ねて目標達成へ向けて奮闘しています。(前田智也)
署名に取り組むのは地域の労働組合や平和団体などでつくる「憲法を守る糸魚川共同センター」(糸魚川憲法センター)。毎月9がつく日に「スタンディング」行動などを欠かさず行い、週末を中心に全戸訪問署名に取り組んでいます。
中心になっているのは、同センターに参加する糸魚川地区労働組合総連合(糸魚川地区労連)の人たちです。
地域を回って回収の日時を書いた署名用紙をポストに投かん。翌日に一軒ずつ訪問して署名を回収します。1回の行動で回れるのは20から30軒ほど。平均して、20人分の署名が集まるといいます。
糸魚川地区労連議長を務める山下勝さんは、「本気で改憲を止めるためには、これまで以上に署名をお願いする対象を広げようと考えました」と語ります。同地域で全戸署名を取り組んだのは、約50年前の原水爆禁止署名以来だといいます。
訪ねると、「創価学会員ですが、協力します」「改憲派ですが、安倍政権での改憲は許さないというみなさんの活動に賛同します」との反応が返ってきています。
こんなに頑張れる署名ない
街を歩くと政治への怒りの声が聞こえてくる
新潟県糸魚川市で安倍9条改憲阻止の「3000万人署名」に取り組む人たちが、世論と共同の広がりを語ります。
電気工事関係の仕事をしている60代の関澤久夫さんは、「全戸署名は手間がかかりますが、確実に対話が広がります。『まだ回収に来ないのか』と連絡が来ることもあり、そうした声に背中も押されて続けています」と語ります。
「こんなに頑張って集めている署名は、自分の中でこれまでありません」と話す大縫加津志(おおぬい・かつし)さんは、50代の建設労働者です。
「戦争への危機感と、国民の意見を聞かずに強引に政治を進める安倍政権への怒りがあるからです」。地域署名と個人で集めた数を合わせると、200人分を超えています。
自民が強い地盤
人口4万3000人の糸魚川市は、歴史的にも自民党の支持が強い地域です。そのなかで糸魚川憲法センターは、署名目標を7000人と決めて粘り強く取り組んできました。現在、およそ5700人まできています。
5月3日には、糸魚川駅前など市内5カ所で街頭宣伝(リレートーク)を行い、署名を呼びかけます。
糸魚川地区労連議長の山下勝さんは話します。「地域を歩くと、自民党や公明党の支持者からでも安倍政権への怒りが聞こえてくるんです。改憲をストップさせるため、これからも頑張っていきます」
- 安倍9条改憲NO!3000万人署名/こつこつ全戸訪問/改憲派の人も創価学会員も協力/新潟・糸魚川
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- きょう 憲法記念日/都内で改憲阻止へ集会 志位氏参加
- 安倍政権と天皇代替わり/主権者国民のたたかいでこそ政治は変えられる/編集センター長 藤田健
- 2019年憲法記念日/改憲阻み、守り生かす決意の日
天皇制:毎日新聞「現在の象徴天皇制でよい」と答えた人が74%」、共同通信社、即位された天皇陛下に82・5%が「親しみを感じる」。新天皇お言葉「国民に寄り添いながら、憲法にのっとり責務を果たす」
A:事実関係
(1)毎日新聞(5月2日オンライン)「象徴天皇制「支持」74%」
日本国憲法は3日、1947年の施行から72年を迎える。毎日新聞が憲法記念日を前に4月13、14日に実施した全国世論調査で、今の憲法第1章に定められた象徴天皇制についてどう思うかを尋ねたところ、「現在の象徴天皇制でよい」と答えた人が74%と多数を占めた。「天皇制は廃止すべきだ」は7%、「天皇を現在よりも、もっと権威と力のあるものにすべきだ」は4%で、いずれも少数にとどまった。
自民党は野党時代の2012年にまとめた憲法改正草案で天皇を「日本国の元首」と位置づけたが、国民主権との整合性などの観点から、与野党に慎重意見が強い。今回の調査では、自民支持層の81%が「現在の象徴天皇制でよい」と回答し、支持政党がない無党派層でも75%と高かった。現行憲法に基づく象徴天皇制が国民に広く定着している様子がうかがえる。
(2)共同通信社が1、2両日実施した全国緊急電話世論調査によると、即位された天皇陛下に82・5%が「親しみを感じる」と回答した。「親しみを感じない」は11・3%にとどまった。
Bお言葉全文
日本国憲法及び皇室典範特例法の定めるところにより、ここに皇位を継承しました。
この身に負った重責を思うと粛然たる思いがします。
顧みれば、上皇陛下には御即位より、30年以上の長きにわたり、世界の平和と国民の幸せを願われ、いかなる時も国民と苦楽を共にされながら、その強い御(み)心を御自身のお姿でお示しになりつつ、一つ一つのお務めに真摯に取り組んでこられました。上皇陛下がお示しになった象徴としてのお姿に心からの敬意と感謝を申し上げます。
ここに、皇位を継承するに当たり、上皇陛下のこれまでの歩みに深く思いを致し、また、歴代の天皇のなさりようを心にとどめ、自己の研鑽に励むとともに、常に国民を思い、国民に寄り添いながら、憲法にのっとり、日本国及び日本国民統合の象徴としての責務を果たすことを誓い、国民の幸せと国の一層の発展、そして世界の平和を切に希望します。
C:評価
・「象徴天皇制「支持」74%は極めて高い数字である。
・いかなる制度であれ、それを実施する人がどう対応するかによって評価は変わる。
かかる高評価は全天皇の言動に負うところが大きい。
・新天皇は「常に国民を思い、国民に寄り添いながら、憲法にのっとり、日本国及び日本国民統合の象徴としての責務を果たすことを誓い、国民の幸せと国の一層の発展、そして世界の平和を切に希望します」旨述べられた。