◆国民の命を軽視する姿勢を目の当たりにして、こらえ切れなくなった
「原発反対」「子どもを守れ」「地球を守れ」―。
2011年9月19日の「さようなら原発5万人集会」。山本太郎さん(47)は東京・明治公園に設けたステージでマイクを握った。東京電力福島第一原発事故から半年が経過。俳優の仕事を失うリスクを顧みず、反原発の活動に身を投じていた。その歯切れいい訴えに、あふれ返る参加者は大きな拍手や歓声で応えた。
芸能界では「スポンサーは神のような存在」(山本さん)。企業が絡んだ社会問題への発言はタブーだ。山本さんも、政府や東電の原発事故へのお粗末な対応に「恐怖や不信感」を抱きながら、当初は心の底に封じ込めていた。
だが、政府は原発事故について「直ちに健康被害はない」などと繰り返す。国民の命を軽視するような姿勢を目の当たりにして、こらえ切れなくなった。
この年の4月。政府は福島県の子どもたちの年間被ばく線量の基準をゆるく設定しようとした。これに怒った父母らが翌月、文部科学省前に詰め掛けた時、山本さんも駆け付けた。
父母らは方針撤回を求め、文科省職員と押し問答になった。だが、子どもの健康を心配する訴えは聞き入れられなかった。「子どもを守る意識がない国は滅びるしかないじゃないか」。怒りが込み上げ、抗議活動で初めて素顔をさらし、カメラに向かって「福島を守る。これからも一緒に声を上げる」と宣言した。
◆カメラに向かって「福島を守る」 代償は「収入10分の1以下」
代償は大きかった。仕事は激減。テレビコマーシャル1本で年間2000万円ほどの契約に加え、番組の出演料など同世代より稼いでいたはずの収入は「10分の1以下」に落ち込んだ。
空いた時間に、国内外の反原発デモへと足を運んだ。どこでも大歓迎された。各地で対話を重ねるうち「主権者として政治課題にものを申すのは当然のことだと分かった。自分が独りではないという実感も得られた」。芸能界に別れを告げ、活動にのめり込んだ。
そこで、さらに国民不在の政治を感じた。脱原発を望む世論は高まっているのに、原発の活用に固執する政府。太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーへ転換する世界の潮流に乗り遅れていた。
「デモだけで変えるには限界がある。自分が内側に飛び込むしかない」。そう意を決して足を踏み入れた政治の世界。13年に参院議員となり、国会では原発に限らず、貧困や格差といった暮らしに密着した問題を取り上げた。
芸能人から政治家への転身。知名度を生かした成功例は少なくないが、いったん“干された”立場からとなると、どれだけあるだろうか。衆院議員となった今も「自分はデモから生まれた政治家」との思いから、街頭での活動を大切にする。
「新型コロナウイルス禍で、目の前の生活だけで精いっぱいという人は増えているが、政治が暴走しそうな時こそ『自分たちこそが権力者だ』と大々的に声を上げる必要がある。デモは世の中を変えるための手段の一つだ」(我那覇圭)
◇
原発再稼働が間近に迫った2012年6月、首相官邸前は抗議する人の波で埋まった。あれから10年。声を上げた人たちの姿から、その後の社会を振り返った。=おわり
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賛同者は31,816人になりました・賛同メッセージ(抜粋)を公開しました (04/02)
寄せられた切実な声、…声。
国民民主党の「財政金融政策」について(暫定版)
国民民主党の経済政策調査会は昨年12月23日、「財政金融政策に関する考え方」と題する文書を公開しました。以下のレポートは、これに対する松尾匡(薔薇マークキャンペーン代表)の考え方を述べたものです。まだ推敲中ですが、暫定版として公開します。
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国民民主党経済調査会12月23日発表の「財政金融政策に関する考え方」について(暫定)
2022年1月5日
松尾匡(薔薇マークキャンペーン代表)
目次
はじめに
1.「日銀保有国債の一部を永久国債化する」というアイデアについて
2.日銀のETF、REIT解消について
3.「名目賃金上昇率が安定的に「物価上昇率+2%」となるまで積極財政と金融緩和を継続します」とする基準について
4.全般的な財政論認識について
5.高橋財政認識について
6.総括
7.補足——コストプッシュインフレへの対応について
全国の新型コロナウイルスの感染状況を見ると在日米軍基地がある沖縄、山口両県での感染急拡大が目立つ。感染が急拡大している沖縄県では、米海兵隊キャンプ・ハンセン(同県金武町など)でのクラスター(感染者集団)発生を踏まえ「米軍が要因となったのは間違いない」(玉城デニー知事)との不満が出ている。日本政府はコメントを控えているが、米側が全ての在日米軍関係者を対象に入国から24時間以内の検査を始めたのはクラスター発生から2週間後と初動の遅れは明らかで、在日米軍基地内の感染は全国で広がっている。米軍任せの感染症対策の背景にある日米地位協定について、玉城氏は強く見直しを求めている。(山口哲人)
◆行動制限守られず
米国から沖縄県内の基地を通じキャンプ・ハンセンに入った部隊で昨年12月16日、入国後5日目のPCR検査で新型コロナの感染者が判明。同基地では入国後に課される行動制限が十分守られておらず、基地内を自由に移動することができる状態で、200人を超えるクラスターとなった。
米軍関係者が基地外に出て飲食する姿が見られ、複数の飲酒運転も複数発覚。玉城知事は「米軍の感染拡大防止対策と管理体制が不十分。激しい怒りを覚える」と非難した。
基地に出入りする日本人従業員らのオミクロン株感染確認などを受け、林芳正外相は同22日、日本が行っている水際措置と同等の対応を行うようラップ在日米軍司令官に要請。米軍は30日になって日本到着後、24時間以内にPCRや抗原定量検査を実施する運用に改めた。
在日米軍は、日本が33都道府県で緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令中で医療提供体制が逼迫していた昨年9月3日、米国や海外から出国する際の検査を取りやめていた。日本政府はこの方針転換すら把握していなかった。
◆沖縄以外の基地でも急増
全国の米軍基地にも感染が広がる。沖縄県駐留の米海兵隊ではキャンプ・ハンセンの部隊も含め1月4日現在、412人が新型コロナに感染中。海兵隊岩国基地(山口県)など沖縄以外の在日米軍基地でも新規感染者が昨年末以降、多数確認されている。山口県の村岡嗣政知事は同日、「(県内の)感染拡大(の要因)は岩国基地関係者の可能性が高い」と指摘した。
米軍の特権的地位を定めた日米地位協定などを根拠として、在日米軍基地を通じて入国する部隊の検疫は米軍に委ねられている。
玉城知事は2日の記者会見で「十分な感染予防の情報提供もままならない状況をつくり出しているのは、日米地位協定の構造的な問題」と批判。地位協定見直しの必要性を強調した。