【横田一の現場直撃 No.259】◆馬場能登視察 ◆外環道 鹿島住民監視 ◆北陸新幹線延伸 便利になった? 20240318
4月の衆院3補欠選挙(16日告示、28日投開票)を巡り、自民党が東京15区と長崎3区の公認候補擁立に苦慮している。党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた「逆風」により、選挙情勢が極めて厳しいためだ。3補選で事実上の「全敗」となれば、岸田政権にとって大打撃となるのは必至だが、告示まで1カ月を切っても、自民の動きは低調だ。東京15区では候補の公募に向けた作業が停滞、長崎3区でも「不戦敗やむなし」と弱気の声が出る。公認候補を立てた島根1区も、「保守王国」でありながら苦戦との見方が広がる。(中根政人)
◆公募での候補者選びも進まないまま
東京都江東区長選を巡る公選法違反事件で起訴され自民を離党した柿沢未途氏(14日に東京地裁で有罪判決)の辞職に伴う東京15区補選では、自民都連が2月の総務会で候補公募の方針を決めたものの、その後具体的な動きはない。
都連所属の国会議員の一人は「良い候補者がいない。難しい」と漏らす。最近の都内の首長選では、自民が公明党や小池百合子都知事が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」と連携するケースが目立ち、都連の対応に注目が集まる。
◆事情が事情だけに広がらない「主戦論」
長崎3区は、衆院小選挙区の「10増10減」によって、次期衆院選から選挙区が新2区と新3区に分割される。新3区の支部長は、昨年10月の長崎4区補選で当選した金子容三氏が務めているが、補選への出馬予定はない。現3区で当選した議員の任期は最長でも1年半だ。
補選は、裏金事件で略式起訴され、自民を離党した谷川弥一氏(有罪が確定)の辞職に伴って実施されるが、こうした事情もあり、立憲民主党や日本維新の会が公認候補の擁立を決める中で、自民県連の動きは鈍い。
自民の梶山弘志幹事長代行は8日の記者会見で「長崎県連と調整をしている最中だ」と説明したが、与党関係者は「(10増10減で)どのみち選挙区が一つ減る」と、主戦論が広がらない地元の雰囲気を説明する。
◆「安倍派」会長も務めた故・細田博之氏の地盤で
島根1区は、自民が全国有数の強固な地盤を築いてきた地域。現在の小選挙区での選挙となった1996年以降も、故・細田博之前衆院議長が連続当選を続けてきたため、本来なら勝ちが見込めるはずの選挙区だ。ただ、細田氏が清和政策研究会(現安倍派)の会長を務めていたことで、裏金事件への批判が補選の情勢を左右する可能性が高まっている。
細田氏の死去に伴う補選で、自民が擁立する元財務官僚の新人は、立民から出馬予定の元職に比べて知名度が低い。自民の茂木敏充幹事長も、知名度向上が課題と認めた上で「一人でも多くの人に知ってもらう、直接会ってもらうという活動を、島根県連と党本部が連携して進めていく必要がある」と語る。
岸田政権が発足した21年以降、自民は衆院選や22年の参院選で勝利を重ね、23年までに実施された衆参両院の10補選でも「7勝3敗」と堅調な結果を残してきた。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係を巡る問題や、閣僚の「辞任ドミノ」などがあった中でも、選挙に勝利することで政権基盤の不安定化を回避してきた形だが、「政治とカネ」が主な争点となる今回の衆院3補選は、過去の国政選挙と事情が異なる。
共同通信社の最新の世論調査では、岸田内閣の支持率は最低を更新し、20%割れも現実味を帯びる。自民の政党支持率も12年の政権復帰以降で最低にまで落ち込んだ。立民の泉健太代表は党会合で「4月の補選は、裏金政治を一掃する大きな機会だ。国民の怒りを選挙結果として実現したい」と述べるなど、自民への対決姿勢を強めている。
3月1日に本格スタートした、大学生の就職活動。就活生にとって悩みの1つが、複数社から内定をもらった場合の「内定辞退」だ。学生時代の就活を振り返ると、「うちを蹴るなんて」と採用担当者から怒鳴られる経験をした人もいるのではないか。
ところが最近は、内定を辞退した企業から、怒号ではなくむしろ、ある「特典」を受け取る学生もいるのだとか。近年は人手不足が続き、企業にとって内定辞退は手痛いはず。いったいどんな特典なのか。企業の狙いを聞くと、イマドキの採用事情が見えてきた。(加藤豊大)
◆プライオリティ・パスって何?
「大学生の息子からイマドキの就職活動事情について聞きビックリ」
経済ジャーナリストで元衆院議員の井戸まさえさん(58)が、2月末にX(旧ツイッター)に投稿した内容が、話題を呼んだ。3月15日現在で678万回表示され、2.9万件の「いいね」が付く。
「例えば、A社の内定が出たものの、それを蹴って別のB社に就職する場合。昔だったら灰皿を投げられる修羅場シーンだが、今時は『プライオリティ・パス』がもらえる場合もあるらしい」
「プライオリティ・パス」とは何なのか。
井戸さんに聞いてみると、内定を辞退した学生が数年後、自社を受け直したいと思ったとき、一次面接からではなく、いきなり最終面接からスタートできる特典を指しているという。
◆由来はディズニーランド
プライオリティは日本語で「優先度」と訳される。プライオリティ・パスは、東京ディズニーランドで行列に並ばなくても優先的にアトラクションを案内してくれるパスとして知られている。
プライオリティ・パスを持っている人は通常とは別レーンに案内され、待ち時間が大幅に短縮されるという、お馴染みのあの光景だ。
井戸さんは、「いきなり最終面接」という特典内容から、行列をカットできるディズニーランドの優先パスになぞらえて、就活版の「プライオリティ・パス」と名付けたのだという。
就活の業界内でも、このプライオリティ・パスなる言葉は広がりつつある。
◆ソフトな「囲い込み」戦略に
「灰皿を投げられる修羅場シーン」と表現された、内定辞退。実際、多くの学生にとって気が進まないものだ。
「氷河期時代は内定蹴ってメッチャ怒られた」「先輩はカレーを投げつけられました」。井戸さんの投稿には、自身の就活時代を振り返るユーザーのコメントが目立った。
井戸さんによると、実際に今年、ある大学生は、会社に内定辞退を告げたところ、採用担当者から「これからの面接も頑張って。将来3年間だったら、いつでも受けてくれたら最終面接までの選考はスキップしますから」と穏やかな口調で、プライオリティ・パスの特典までもらえたという。
井戸さんによると、実際に今年、ある大学生は、会社に内定辞退を告げたところ、採用担当者から「これからの面接も頑張って。将来3年間だったら、いつでも受けてくれたら最終面接までの選考はスキップしますから」と穏やかな口調で、プライオリティ・パスの特典までもらえたという。
井戸さんは本紙の取材に「これまでの就活では、内定者に対しては他の会社を受けさせないように迫る「オワハラ」など厳しい拘束があった。それに比べて、プライオリティ・パスはソフトで健康的な囲い込み。時代は変わったと感じました」と語る。
◆就活生は歓迎「おいしい特典」
このプライオリティ・パスという特典を、現役就活生たちはどう見ているのか。3月15日、さいたまスーパーアリーナ(さいたま市中央区)で開かれた企業合同説明会「マイナビEXPO」に足を運んだ。
就活生からは、「自分たちにとってはおいしいですね」「令和なんで厳しいよりも緩い方がいい」などと歓迎する声が相次いだ
さいたま市内に暮らす女子大学生(21)は「企業も大変なんだな、と学生ながら思います。とはいえ就活は簡単ではないので気を引き締めたい」と冷静だ。
大阪市の私立大に通う男子大学生(22)は「内定辞退では嫌みを言われることもあると聞いたことがあって、その立場になったら言い出しづらいだろうなと思っていた。こういう制度が広がればいいですね」と語る。
◆人手不足で企業に危機感
企業はなぜ、プライオリティ・パスを発行するのか。
就職情報サイトを運営するリクルートによると、2024年3月卒業予定者向けの大卒求人倍率は1.71倍。大企業と中小企業間で数字の幅はあるが、平均すると就職希望者1人につき1.71件の求人があることになり、学生優位の状況だ。
新型コロナ禍で2021~2023年卒は1.5倍台に落ち込んだが、コロナ「5類移行」後の経済活動の復活や構造的な人手不足を背景に、コロナ禍直前の2020年卒の1.83倍の水準に近づきつつある。
リクルート「就職みらい研究所」の栗田貴祥(たかよし)所長(54)によると、過去にも、学生優位の就活状況が続いた際には、こうしたプライオリティ・パスを出す企業がなかったわけではないという。ただ、「ここ最近は学生を取り合う企業間の競争が特に激しくなった」と指摘する。
これまで定年後も働き続けてきた団塊世代も後期高齢者世代に突入するようになり、シニア層の労働参加率が落ち込むと予想され、「人手不足で業務が回らなくなるのでは」との危機感が高まっているのだという。
「若い就業者を確保するため、新卒時に別の企業に入ってしまっても、その後も採用担当者が連絡を取り続けるなど、企業はあの手この手で就活生との関係作りを続けるようになった。プライオリティ・パスもそうした手段の1つ」と分析する。
◆急増する「第二新卒」に狙い
企業側がソフトな囲い込みにシフトしている背景には、最近の労働市場の変化もうかがえる。
新卒で就職しても3年以内に転職する、いわゆる「第二新卒」と呼ばれる人たちが近年、増加しているのだ。
リクルートが2022年度に実施した調査によると、第二新卒世代とも重なる26歳以下の転職者数は2014年度と比べて3.1倍にまで膨らんでいる。
同じ調査では、「現在の会社でどれだけ働きたいか」との質問に、「定年・引退まで」と答えたのはわずか20.8%だったのに対し、「10年以下の期間」としたのは73.8%にも上った。
これだけ第二新卒が増えていれば、「新卒採用がダメでも関係を続けていれば、いつかまた振り向いてくれるかもしれない」と、企業がプライオリティ・パスでつなぎとめようとするのも無理からぬこと。
栗田所長はこう語る。
「今は新卒時に入社した会社に一生いるというより、転職が当たり前。キャリアアップとして転職をポジティブに捉えるイメージも社会に定着してきた。人材不足解消の手段として、増加する第二新卒を狙いたいとの企業の思いも、プライオリティ・パス発行の背景のひとつにあるでしょう」
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